人工英雄

~自ら作る英雄譚〜
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一章3   『二人で一緒に(偽)』

公開日時: 2020年9月1日(火) 19:49
文字数:1,195

「……ということだ。しょうがないだろう?」


リクが話してくれたことを簡潔にまとめてみると。


リクの父親は村長だ。

当然今の席を一人息子のリクに継がせたいと思っている。


でも、リクも僕と一緒で外の世界に出たがっていた。

しかしそのことを僕と同じように両親に相談するとどうなるか?


その結果は目に見えている。

反対されることはもちろんほかの子供たちが書物も見れなくなってしまうかもしれない。

そんなことにならないよう綿密に計画を立てていたらしい。


しかしそんなときに僕が村を出ると言い出したので、どうにかして一緒に行こうと考え、思いついたのが荷物の中に隠れておくことだったということだ。


「あと二日分しかなかったから危なかったよ!」


リクは荷物の中に食料も入れていたのだろう。


「それならさっさと出てきて自分で歩けばよかったじゃないか」


リクはとぼけた顔をしている。

こういう時は絶対に何が何でも話をそらす。

昔からそうだ。


「まぁまぁそんなことより、なんか怖い顔してるけど」


一生懸命両親を説得して村を出たのに。

リクは僕に外まで運ばせといて。

なんかムカッとする。

でも今は気になっていることの方が勝っている。


「それより、今ごろ、村のみんなが心配してるんじゃないか?」


そう聞いてみるとリクはあっさりと答えた。


「俺、崖から落ちて自殺したことになってるから。しっかり遺書も書いてきたよ!」

「は?」


リクの言っていることが全く理解できない。


いつもリクは自分たちが想像もできない凄い考え方を持っている。

だが、この考え方には全く凄いとも思えない。

何か意味があるのだろうか。


リクのことを心配しているとリクはニヤニヤしながら。


「そんなに心配そうな顔すんなって。そんなことよりさ」


リクは両親に心配をかけても平気なのだろうか。

想像しただけでも胸が強く締め付けられるような痛みを感じる。


「俺も外の世界は初めてだけど常識範囲の知識ならある。アルが行きたいであろう大都市ベルダがどこにあるのかも知ってる」

「大都市の場所知ってるの? どこにあ――」


ベルダがどこにあるのか聞こうとしたとき口を抑えられた。

都市の名前も知らなかったので、まだアンネットさんにも聞けていない。


「まぁそんなにがっつくなって」


リクはにんまりと笑いながら。


「俺と取引しないか? 知識の面は俺が全部受け持とう。その代わりと言ったらなんだが、俺は情報収集に一日を費やす。だから、俺たちがベルダについて俺が冒険者になるまで養ってもらいたい」


そんなに悪い判断ではないと思った。

お金もぎり二人分の食事代ぐらいは貰えている。

リクが言うことなら信用もできる。


「うん! いいよ」


僕は快くその取引を受けた。


「よし! 取引成立。これから二人で一緒に【英雄】目指して頑張ろう!」

「おーーー!」


今思えばこの時の僕は浮かれていたのかもしれない。

僕にとって唯一苦手な知識面でミカド村の中で最も優秀なリクが一緒にいたんだから。

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