人工英雄

~自ら作る英雄譚〜
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一章4   『期待と不安』

公開日時: 2020年9月1日(火) 19:50
文字数:1,128

リクが来てからは何もかもが円滑に回った。

まるで最初からこうなることが分かっていたように。


「じゃ、そろそろ行きますか」


アンネットさんの家に住み込みで働かせてもらって約一か月が経とうとしていた時。その日は唐突にやって来た。


「やっとベルダに行けるの?」


そうリクに聞く。

もし、もう少しリクが言うのが遅かったら自分から申し出ていただろう。

一日でも早く冒険をしたかったくてたまらなかったから。


「うん。本当はもう少し早めに行けたんだけど、やっぱりお金は余裕があった方がいいからな」


実際この一か月リクは情報収集にと近くにある村へ行っていた。

僕はというとひたすら働いていた。

他の村を見てみたかったものの、リクとの取引を守るには一日中働かないといけないので、他の村を見ることは出来なかった。

一度は村も行ったことがあったのでギリギリ我慢できた。

もし、村に一度も行けてなかったら一日無理やりでも休暇をもらっていただろう。


「まず、これからのことを説明する」


リクが説明してくれたことを大まかにまとめると。


一、ここからベルダまでは50キロほどあるので朝早くに起きてから出発する。

(馬車も使えるのだがリクがケチって断固拒否した。)

二、ベルダに着いたら冒険者ギルドに行き、ギルドのメンバーカードを発行してもらう。

三、メンバーカードに自分のステイタスが刻まれているので確認する。

四、クランに所属する。


リクが言うにはベルダには迷宮というものがあり、そこには怪物モンスターがいるらしい。

英雄譚によく出てくる悪役の存在だ。


昔は迷宮以外にも怪物モンスターはいたそうだが、怪物モンスターは迷宮の中でしか繁殖できないという特性を生かし、迷宮の入り口をクランが管理しているため今は迷宮の中にしかいない。

迷宮はベルダと合わせて二か所あり、東に位置するのがベルダ。西に位置するのがイスタというらしい。


今の現在地はベルダから見て南東の位置にある。

よって近くに位置するベルダに行くことにした。


元々はベルダも普通の小さい町程度だったが、いまでは世界中の冒険者が集まり大都市になった。


今の冒険者の仕事はもちろん迷宮攻略だ。

怪物モンスターを倒すと魔石が手に入る。

魔石は生活の中で必需品といっても過言ではない代物で、大きさが大きいものほどギルドで高く換金してもらえる。


アンネットさんの家にもあった光も魔石を使っていた。

ベルダの街でも多くのものに使われている。


「ということだから明日は五時起きな!」

「うん。分かった」


今日はここまでにして寝ることにした。

外はミカド村とは違い点々と灯りがある。

何故かそれだけで安心できてしまう。

そういう環境に感謝しながら目を閉じる。


明日のことを考えると期待と不安で一睡も出来なかった。

だが、リクが一緒にいるの大丈夫だろうと思っていた。


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