エピローグというか、今回のオチ。
はっきり言えば、謎だらけの急展開が続いてしまって僕自身、考えることを放棄して流されるまま動いていたわけだけども。
傍から見れば無鉄砲だと言われる行動が目立ったかもしれないし、実際姉さんや虹羽さんにもそう評価されている。
『神楽坂みなとは、情熱的で自身の行動理念に迷いをもたず突き進む問題児ではあるが、火急時の判断力や決断力には優れており、さらに適応力も高い。助言を欠かさなければ問題なく成長する見込みあり』
と、評価シートには書かれたらしい。
あくまで、らしいだ。この評価内容を教えてくれた姉さんが、やんわり優しく言った節があったので、多分書面ではもっと厳しく書かれているのだろう。
そんなこんなでとりあえず僕は、姉さんのいる「黒橡の方舟」に所属することになった。
どちらかといえば監視が主な目的なため、メンバーかと言われたら微妙。
「幽霊部員な感じでいていいからね~」とは、虹羽さんの言。
特に仕事をするわけでもなく、これからはまた高校に通えばいいとなったわけ……なんだが。
「一か月の不登校。神楽坂、留年決定な」
復帰したて、学校に登校するなり職員室に呼び出し。
担任からさらっと放たれた宣告に、僕は頭を抱えた。
もともと不良行為で目立っていて、そこに追い打ちで一か月近い不登校。
理由を話そうにも病院に行ってたわけではないので、不登校を言い訳できる書類や証明がないのだ。
進級に必要な日数が足りなくなったとのことで、情状酌量の余地なしで死の宣告。
ここで弁明をしておくが、不良と言っても僕は友達や先生から煙たがられてるわけではない。
どちらかというと単位が足りなくなったというお話。
ちょっとテストの日に登校しなかったり、課題をためてまとめて提出することが多いぐらいだ。
いじめをしたり、他校の生徒と戦争したり、酒やたばこに手を出してるようなヤンキータイプのワルではない。
だから、担任からくらわされた留年宣告自体に不服はなかった。
ただ、僕は高校の学費を姉さんに払ってもらっているから、留年となったら、もう一年分の学費が必要になるわけだ。
意を決し、せめて留年分の学費は自分で払おうと考え、ネットで奨学金の書類をそろえて姉さんに直談判しにいったら――
「あ、じゃあ私の母校に編入したらいいわ」
と、あっさり言われた。
姉さんの母校は通信制高校で、編入も可能だし学業も全日制ほど詰め込まれていない。
課題さえこなせば卒業時の評価も高くなるため、受験勉強さえ自分で頑張ればいい大学に入るのも可能らしい。
そうなってからは、トントン拍子だった。
姉さんは母校にすぐ電話して僕を紹介し、編入が決まったのは数週間後。
引っ越しをするわけでもないので、元居た高校の友達とは軽い挨拶だけして、僕は転校。
実際、転校で助かったことも多い。
なんせ今の僕は、左胸に蛇のうろこがこびりついているのだ。
もし体育の授業で着替えたり、プールになんか入ろうものなら即ばれる。
普通の体育の授業がない通信制は、僕にとってまさに楽園に等しかった。
といった感じで、学業面についての心配はなくなった。
あやうく高校二年生をもう一度やり直すところだったが、問題なく終えられそうだ。
ここらでリアルの話は終了。
そして後日談は、異形側にうつる。
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