【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

想像した事を実現できる創生魔法。現代知識を使い生産チートを目指します。
ジェルミ
ジェルミ

第66話 転移者

公開日時: 2022年1月1日(土) 17:30
文字数:2,902

 キャベツを千切りにしてソースをかける。

 オルガさんとアリッサさんが、それを食べている。


「生で野菜を食べるなんて初めだ」

「そうね、でもソースをかけると美味しいし、カツの油っぽさを消してくれるわ」

「生で野菜を食べるようになれば、調理の手間もはぶけてお店も助かるな」

「まだ他にもあるんでしょう?エリアス君」

「えぇ、まあ。それは追々おいおいにと言うことで」

 すると2人は黙ってしまった。

 どうしたんだろう?




 オルガとアリッサは思った。

 またエリアスが、『オイオイ』と言っている。

 この前から言い始めているが、どう言うことだろう?

 きっと、『徐々に』と言う事だと思うけど。

 それを指摘すると例えば地方から出てきた人が、標準語だと思って使っていた地元の言葉は実は方言や訛りだった、と本人に指摘するようなものだから黙っておこう。

 いつかわかるだろうから、と2人はそう思った。


「これでカレーがあれば、なおいいのにな」

「カレーて?今朝の肉野菜炒めのこと?」


「あの味のスープです。そのスープをカツに掛けて食べると、美味しいんです」

「なんだか、美味しそうだな」


「でも今朝、カレーは肉野菜炒めで食べましたよね?」

「でもスープなら違うだろ?」


「オルガさんも好きですね。アリッサさんもそれでいいですか?」

「えぇ、良いわよ」


「でもすぐには作れませんよ。今はカツだけ食べましょう」

「そうなんだ」


「オルガさん、そんなことを言われても。夜は別のカレースープを作りますから」

「わかったよ。では今はカツを食べようか」


「ねえ、エリアス君。私はあなたに、聞きたいことがたくさんあるのよ」

「なんですか、アリッサさん」


「3人でアスケルの森に行った時のことだけど、あれは身体強化を使っていたの?」

「身体強化ですか?そんなスキルはありません」


「では素の状態であれなの?」

「えぇ、この世界に来た時は、体が馴染んでいなかったようで。でも最近は…」


「この世界?」

「馴染む?」

 し、しまった。つい気を許してしまった。

 俺が転移者だと分かったら、きっともうここにはいられない。

 それでは、あまりにも寂しい。


「…………………………………。」


 沈黙が訪れる。

「なあエリアス。私はお前の半身だと思っている。だからお前がなに者であろうと構わない」

 オルガさんが口を開く。


「私もよ、エリアス君。私はあなたの側に居ると決めたの」

 アリッサさんも、優しい言葉をかけてくれる。

 なんて良い人達なんだ。


 本当のことを話してここに居られなくなったら、それはそれで仕方がない。

 そう、俺は思う事にした。



「実は、俺は転移者なんだ」


「「 転移者?! 」」


「どういうこと?」

 アリッサさんが聞いてくる。



「この世界は背中合わせで、似たような世界がたくさんあるんだ」

 そう言うと俺は話し始めた。

 他の世界で35歳で病気で亡くなり、時の狭間はざまで女神ゼクシーに会った。

 そしてこの世界に転移を勧められたこと。

 エリアス・ドラード・セルベルトは、その時に女神ゼクシーに付けてもらった名前だと言うこと。

 そして創生魔法、鑑定、異世界言語、ストレージ、生活魔法のスキルをもらった。

 精神年齢も、徐々に15歳になるようにしてもらったことを話した。


「凄いわエリアス君!!女神ゼクシーに会ったうえに加護をもらたなんて。女神ゼクシーは世の女性の憧れなのよ。スタイルが良くて、とても綺麗で…」

 それは違います。

 実際は緑の長い髪をポニーテールに束ねた、スレンダーなメガネ女子です。

 信仰を集めるために、盛っていると聞きましたよ。


「エリアスは生前は35歳か、年上だったのか。道理で出会った頃は、落ち着いていると思ったものだ」

「では今はどうなんですか?オルガさん」

「そうだな、段々と子供になってきているな。きっと精神年齢も15歳になるように願ったからだろうね」

「子供て、酷いな」

「仕方がないだろう。人格は経験を積んでできるものだ。エリアスの場合は、経験が無く、単に若返っただけなのかもしれない」

 そうかもしれない。

 俺の居た世界なら15歳はまだ、親の庇護下にあるからだ。


「では、生い立ちは嘘なんだな」

「えぇ、すみません。俺にはこの世界に、知り合いや家族は誰もいません」

「そ、そうか。それも辛いな。家族も居ないなんて」

 気まずい空気が流れた…。



「ではエリアス君に聞くけど。アスケルの森に行った時に、岩を切り取ったように見えたけど」

 さすがアリッサさん、この空気を替えてくれた。

「あれは時空間魔法です」

「時空間魔法?!」


「時空間魔法は空間を切取り、時間を止めたり進めたりすることができます」

「そんな、ことができるの?」


「えぇ、そのスキルで空間に穴を開け、物を無制限で収納しています」

「無制限で?!」


「スキルなのでマジック・バッグとは違い、制限が無いんです。だからダミーとしてポーチを下げることにしています」

「ではワイルドボアを止めたのは?」


「あれもストレージの能力です。ストレージは生きたものを収納できません。それを利用して腕をストレージで覆い、衝撃を収納する盾代わりにしているのです」

「そんな馬鹿な…?!」


「その世界に来た時は制御が出来なくて、部分的だったけど今は全体を覆えます」

「魔物をエリアス君が止めている間にオルガさんが倒すのね。それならどんな魔物と対峙しても怖くないわね」


「でも防御、一点張りですけど」

「まだ質問はあるわ。今もそうだけど森の中にいる間中、エリアス君の周りには魔力が溢れている。まるで魔力が集まっているようだけど、どうして?」


「それは森の魔素を収納しているからです」

「「 魔素を収納?! 」」

 アリッサさんとオルガさんが同時にハモった。

 

「何を言っているの、エリアス君?!」

 アリッサさんが詰め寄ってくる。


「俺が居た世界と違い、この世界は魔法があります。それは空気の中に魔素が含まれ、生まれた時からそれを吸い生きてきたからです」

「どう言うことかしら?」


「生まれた時から魔素を吸い育つから、魔力が蓄積して魔法が使えるようになるのだと思います。だから街に住む人よりも、森に住む種族の方が魔法を使える人が多いはずです」

「そうかもしれないわ。では人族の魔力が低下しているのも、それが原因かもしれないわね」


「えぇ、なぜか街寄りになると魔素が少なくなり、森の奥に行けば行くほど魔素が多くなり、巨大な魔物が多くなります」

「では森の奥は魔素が多いから巨大化して強くなるということね」


「そう言えるかもしれません、アリッサさん」

「人族も森で生活をすれば、魔法を使える子供が出来ると言うことね。これは凄い発見だわ。貴族がこのことを知ったら、どう思うでしょう」



 貴族は魔法を使えることで庶民と差別化を図っている。

 だが年々、魔法を使える者が減ってきているのが問題だった。

 森に入り定期的に魔素を吸収するだけでも違うのではないか。

 アリッサはこの仮説がとても気になった。


「それでエリアス君。魔素を収納してどうするのかしら?」

「もちろん決まっています。魔力に変換するのです」

「「 魔力に変換する?! 」」


 アリッサさんとオルガさんが、また同時にハモった。

 目を見開き口を大きく開け、間抜けな顔をしていた。


 せっかくの美人が台無しですよ。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート