【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

想像した事を実現できる創生魔法。現代知識を使い生産チートを目指します。
ジェルミ
ジェルミ

第64話 帰宅時間とお迎え

公開日時: 2021年12月30日(木) 17:30
文字数:3,579

 俺とオルガさんは商業ギルドに納品と、ボタンの特許を申請した。

 まさか魔道具の卸値が、家のローンも一括で完済できる金額だったなんて。

 アバンス商会に売る金額は、その倍になりそうで考えただけでも凄いことだ。


 明日から王都に行くので、食材やポーションを買っておく。

 なにが必要になるかわからないからね。


 今日の食事は何を作ろうかな?

 あぁ、そうだ!!

 俺は小麦粉の柔らかいパンと、オートミールの硬いパンを買った。

 この世界は小麦粉は少し高級で、お金のある人は小麦粉の柔らかいパンを。

 無い人は硬いオートミールのパンを購入して食べている。


「おい、エリアス。そんな硬いパンを買ってどうするんだ?」

「まあ、見ていてください。美味しいものを作りますから」

 俺はそう言って笑い、他にもサラダ油や露店でオーク肉を買い込んだ。

 


 そう言えばアリッサさんは、何時まで仕事なんだろう?

 この世界は時間が曖昧だから、8時間労働ではないのかも?


「オルガさん」

「なんだい?エリアス」

「どこかに勤めた場合、労働は1日何時間ぐらいですか?」

「う~ん、そうだな。農民なら陽が昇ってから、暗くなるまでだと思うけど」


「やっぱり、そうなんだ」

「でも、どこかに勤めれば8時間くらいだな」


「勤め人は違うのですね」

「もちろんさ。アリッサさんは6時くらいに屋敷を出て行ったから、15時には仕事が終わるかもな」

「そうですか。では丁度帰り道だから、冒険者ギルドに寄って聞いて帰ろうかな」

「そうだな。寄って行こうか」




 俺達は冒険者ギルドに寄ることにした。

 ギルドのアコーディオンドアを開け中に入る。

 時間は昼前で、冒険者は一人もいなかった。


「あれ?エリアス君、どうしたの?」

 受付に居たコルネールさんが声を掛けてくれた。


「アリッサさんに用事がありまして…」

「まあ、ちょっと待っててね。聞いてくるから」

 あれ、聞いてくるから?

 普通は呼んでくるから、ではないの。



 コルネールさんはそう言うと、二階の階段を上がって行った。


 しばらく待っていると、コルネールさんは二階から降りて来た。

「エリアス君、良いわよ。ギルド長が会いたいって」

 ギルド長が会いたい?

 どう言うことだろう?

 俺はアリッサさんに会いに来ただけなのに。


「一度、会っておくのもいいさ」

 オルガさんは会ったことがあるらしい。

 そう言うので会う事にした。




 俺達はコルネールさんに案内され二階に上がる。

 トン、トン、

 コルネールさんがドアを叩く。


「どうぞ、入ってくれたまえ」

「失礼します」


 コルネールさんがドアを開けてくれ、俺とオルガさんは部屋の中に入る。


 イッ!

 部屋に入った途端、嫌な感じがした。


 中に入ると魔物がいた!!

 オーガだ!!なぜこんなところに?!


 俺は両手を上げストレージの中で、黒作大刀くろづくりのたちの柄を握り上から下に振り下ろす。

 黒作大刀くろづくりのたち緋緋色金ヒヒイロカネを鋼に混ぜて作った全長1.5m近く、重量は20kgはあるトゥ・ハンデッド・ソードの大剣だ。

 重さと勢いで相手を断ち切る。


〈〈〈〈〈 ガァギィ~~~ン!! 〉〉〉〉〉


 なんと、オーガに俺の剣戟が防がれた。

 最近のオーガはこんな大剣を持っいるのか?

 オーガロードか?!


 だが剣は引けない。

 引いたらやられる。


 このまま剣を打ち合ったままの体勢なら考えがある。

 アスケルの森でストレージに貯めた魔素を魔力に変換!!

 剣に纏わせウオーターカッターで相手の剣のごと叩き切る!!

 

〈〈〈〈〈 ズゥ~~~ン!! 〉〉〉〉〉


 俺の体を中心に魔力が大きく膨らみ広がって建物がきしむ。


「…るかった、俺が悪かったから…」

 なんと、オーガが何か言っている!!

 そういえば俺には【スキル】異世界言語がある。

 だから魔物の言葉もわかるのか?

 最近、冒険なんてしてないから、すっかりスキルなんて忘れていたけど。


 こいつを倒せばいくらで、売れるのだろう?

 でもなぜ、冒険者ギルドにオーガが?!




 

「…リアス君、エリアス君、しっかりして!!」

 声がする方角を見るとアリッサさんがいた。

 あれ、どうしたんだろう?

「ギルマスがエリアス君に、ちょっかいを掛けたのが悪いんですよ」

「あぁ、だから謝っているだろう」



 な、なんだと!!

 この国ではオーガは人の部類に属するのか?!

 わからないものだ。


「エリアス君だね、その前にその剣を引いてくれないか」

 俺はそう言われ剣をストレージに収納した。


 あっ、という感じの、少し驚いた顔をした。

「まあ、かけてくれ」

 俺とオルガさんはソファーに座った。


「驚かせて悪かったね、私がここの冒険者ギルド長のパウルだ」

 そう言って自己紹介をする。

「それから私はオーガではなく人間だから。どの国でもオーガに人権は無いから」

 な、なんとオーガ似の人が居るなんてそんな…。

「オーガ似と言われてもな、彼はいつもこんな感じなのかね」

「まあ、大体そうですね。ギルド長」

 アリッサさんは、ギルド長の横に座り話している。


 騒ぎが収まったのを見届け、コルネールさんがドアを閉めた。

 そして階段を下りていく足音が聞こえた。


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 アリッサが冒険者ギルドを辞めたいと言い出した。

 そんな時だ、エリアス君という少年がアリッサを訪ねて来ているという。


 それなら一度、会っておこうと思った。


 実際に会ってみると、アリッサが気に入る訳が分かった。

 黒髪、黒い瞳の美形の少年。

 エルフは美形が多い、そして奇麗なものが好きだ。

 それは人に対しても同じで、だからこそ面食いなんだ。


 それにこの少年は私の鑑定眼を弾いた。

 部屋に入ってきた時に鑑定したが見事弾かれた。

 と、言う事は彼も鑑定を持っており、私よりレベルが上だと言う事になる。

 私よりはるかに若いこの少年がだ。


 そして私に鑑定され彼は攻撃されたと思ったのか、即座に反応し私に攻撃を仕掛けてきたのだ。

 私も50歳を過ぎ若い頃には劣るが、体は鍛えている。

 これでも元Aランクだ。

 いつでも対応できるように容量は小さいが、マジック・バッグを持っている。

 その中に仕舞ってあった、ミスリルソードを咄嗟に出し彼の剣戟を防いだ。


 彼は私をオーガと言うが、今でもオーガ程度なら私は負けることは無い。

 その私が彼の剣戟に押された。

 彼の技もなにもない、ただの力任せの剣戟にだ。


 そして彼は勝負が付かないと思ったのか、魔法攻撃に移った。

 しかもとてつもない魔力を溜め、放出しようとしていた。

 このギルド全体の建物が、揺れるくらいの地震のような魔力が集まっている。


 ふと見るとコルネールが、恍惚とした顔をしてエリアス君を見ていた。

 ラミア族は、魔力が好物だからな。


 アリッサが止めてくれなかったら今頃は…。

 私だけではなくこのギルド周辺ごと、跡形も無く吹き飛んでいたかもしれない。





「エリアス君、私を訪ねて来たと聞いたけど、どうしたの?」

「いや~帰りの時間を聞くのを忘れたから。何時に仕事が終わるのかと思って…」

「そ、それだけ?」

「えぇ、そうです」

「まあ、エリアス君たら」

 アリッサさんは両手を頬に当て、クネクネしている。

「今日は15時は終わるわ」

「そうですか。これからは3人での生活になるので、食事は経済的に外食ではなく俺が作ろうと思いまして」

「エリアス君が作ってくれるの。それはこれからが楽しみだわ」

「楽しみにしていてくださいね」


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 私はギルドマスターとして、考えなければいけない。


 アリッサとエリアス君は見つめ合い、ニコニコしている。

 帰宅時間を聞きに来ただけだと?

 普通は職場に、そんなことを聞きに来ない!!


 それを見ているオルガも何も言わない。

 いくら虎猫族が一夫多妻制だからといっても、ここまで寛容になれるのか?

 オルガはまるで手のかかる弟を見守る、優しい姉の様な目をしている。

 

 だが彼は危険だ。

 誰かが側にいて舵を取ってあげないと、世界の敵にもなりかねない。


「いいや、もう帰っていいぞアリッサ」

「えっ?!いいんですか?ギルマス」

「あぁ、だがちょっと残ってくれ。話がある」

「分かりました。2人共、飲食コーナーで待っていてくれる?」


 そう言われエリアス君とオルガは部屋を出ていった。


「アリッサ、この冒険者ギルドを辞める話だが…」

「はい」

「それはできんが、これからエリアス君の側に居ればいい」

「どう言うことでしょうか?」

「今までのようにギルドには出社せず、エリアス君の側で彼を守る専属のエージェントになれば良いのさ」


「そ、それでは彼の側にずっといて良いと…」

「そうだ、そして何かあれば都度、ギルドに報告は必要になるがな」

「わかりました、ありがとうございます」

「人の命はエルフより短い。彼が嫌になるまで側に居ればいい」

「嫌になることは、無いと思います」

「ではある意味、エリアス君のところに永久就職するようなものだな」

「まあ、永久就職だなんて…」


 アリッサは頬を染め、恥ずかしがっている。

 そんなに彼が良いのか。

 酸いも甘いも知っているアリッサを夢中にさせる少年。

 君はこれから、どこに進むのだろう。

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