朝になり俺は1階の居間に降りて行った。
「おはよ!」
オルガさんが先に起きていた。
「アリッサさんは?」
オルガさんに聞かれた。
「まだ今日は起きないそうです」
「そ、そうだろうな、やっぱりアリッサでも無理だったか…」
何が無理だったのだろうか?
俺は首を傾げた。
「今日はゆっくり寝かせてあげようよ」
オルガさんにそう言われ、俺は頷いた。
昨夜アリッサさんはあんなに元気だったのに、いったいどうしたのだろう?
「さあ、今日は2人で朝食を食べに行こう」
「そうですね、オルガさん」
俺達は屋敷を出て『なごみ亭』に向かった。
「いらっしゃいませ~!!」
今朝も『なごみ亭』の看板娘、アンナちゃんに迎えられる。
「エリアスお兄ちゃん。オルガおねえちゃん、いらっしゃい!!」
「おはよう、アンナちゃん。2人前頼むね!」
「かしこまりました~」
そう言うとアンナちゃんは、厨房に向ってオーダーを伝える。
「おとうさん、2人前追加ね!」
「あいよ~」
奥からビルさんの声が聞こえた。
今日は醤油ダレの唐揚げだった。
お皿に千切りにしたキャベツと、唐揚げがのっている。
そしてキャベツには、ソースをたっぷりかけて食べるのが美味しい。
肉は貴重だから量はないけど、キャベツがその分あるからこれでお腹が膨れる。
そして他のお客も食事の量に、満足しているようだ。
でも俺には足りないと思う物がある。
それは卵だ。
しかし養鶏していないから卵が手に入らない。
森で鳥を捕まえて養鶏場をやるのも良いが、俺達だけでは手が足りなくなる。
自分達だけで食べる分くらいなら、森に行けばラプタという卵を産む鳥がいる。
試しに何匹か捕まえてみるか。
そして生で野菜を食べるなら、やっぱりあれが欲しい。
でも卵が無い。
どうすれば?
俺は【スキル】世界の予備知識で調べた。
目の前に検索画面が現れ、パソコンのように調べ物が出来る便利なスキルだ。
おぉ、これは?!
これなら作れる!!
「オルガさん」
「なんだい、エリアス」
「市場に行くのを付き合ってもらえませんか?」
「いいよ、お前とならどこでもいくさ」
「また、そんな事を言って。大げさですよ」
俺達は立ち上がり『なごみ亭』を出て、そのまま市場に向かった。
「なにを買うんだい、エリアス?」
「大豆です」
「大豆?何に使うのさ」
「まあ、見ていてください」
俺はどうせ買うならと店先に行き、大袋に5つ50kgくらいの大豆を買った。
ついでに小麦、大麦、小豆も買った。
「そんなにどうするのさ」
オルガさんは呆れた顔をしている。
そして屋敷に戻って来た。
するとアリッサさんが起きて来ていた。
「アリッサさん、大丈夫ですか?」
「もう大丈夫よ、心配しないで。ちょっと話があるのオルガさん、いいかしら?」
「なんだい、私に話しだなんて」
2人は3階に上がって行った。
俺は仕方なく1階の厨房に向った。
私はオルガを部屋に招いた。
「どういう事よ、オルガさん。いいえ今日からオルガと呼ぶわ」
「それなら私もアリッサと呼ばせてもらうわ。何の事かしら?」
「しらばっくれないでよ、夜のことよ、よ・る・の・こ・と!!」
「昨夜はお楽しみでしたね。それを聞いてほしいのかな?」
「そうじゃなくてエリアス君のことよ。聞いてないわよ、あんなに…」
「あんなに?なんなのかな?」
「あっ、それは…、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ」
「なに?はっきり言ってくれないと、わからないんだけど?」
「そっ、それは…」
モジ、モジ、モジ、
「な~にかな?」
「た、体力が持たない…」
「はい?」
「体力が持たないわ」
「あっ、やっぱり、あの疾風のアリッサでも駄目だったんだ」
「知っていたの?」
「もちろんよ。で?なにが言いたいのかしら?」
「そう言われても。新しい仲間を探して分散させるしかないわね」
「そうね、口が堅くてエリアス君を愛してくれる人をね」
「そんな人が居るかしら?」
「逆に候補が多くて困りそうだけどね」
アリッサさん達は話があるみたいだ。
俺は厨房の中に入り、市場で買った大豆をストレージから出す。
そして水に浸す。
それから適度なところで磨り潰し、水を加えて煮つめ汁を濾《こ》す作業をする。
これで『豆乳』が出来上がった。
ボールに豆乳、植物油、酢が無いのでレモン汁、そして塩を少し入れた。
後はそれを混ぜるだけだ。
泡立て器を創りかき混ぜるのも良いが、効率を考えて蓋付きの入物を創った。
その中に材料を入れ、何回かシェイクすればよく混ざる。
これなら泡立て器と違い、手が疲れないだろう。
そして出来上がった!!
何かって??
『マヨネーズ』さ。
この世界では鳥を養鶏していないため、卵は手に入りずらい。
鳥を飼い個人で使う分くらいならいいが、食堂で使うとなると量が必要となる。
そのため手に入りやすい大豆にして、豆乳マヨネーズにしたんだ。
豆乳にも卵と同じ成分が含まれており、マヨネーズが作れる。
豆乳特有のクセもほとんどなく使いやすい。
卵を使わないのでカロリーもオフに!
何度が分量を調節し『マヨネーズ』が完成した!!
オルガさん達が降りて来た。
話が終わったみたいだ。
「出かけますよ、2人共」
「どこにいくの?」
「『なごみ亭』です」
そして俺達3人は『なごみ亭』にやって来た。
「すみませ~ん」
「あれ?どうしたのエリアス君」
奥さんのサリーさんが出て来た。
「実はビルさんに、見て頂きたいのもがありまして」
「なにかしら?ちょっと待ってってね」
そうサリーさんは言うと、厨房からビルさんを呼んできてくれた。
「なんだい、俺に用があるのかい」
「新しい調味料を開発しようと思いまして」
「「「 調味料を開発?? 」」」
ビルさん達やオルガさんが驚いている。
「味元、ソース、醤油という調味料はできました。でもまだ足りません」
「そうかな、それだけでも調理の幅が広がったが…」
「ビルさん、現状に満足せずに次を目指しましょう」
「次だって?」
「厨房をお借りしても良いでしょうか?」
「もちろんだ」
俺達は厨房の中に入った。
レタス、きゅうり、人参、キャベツを適当な大きさに切り皿に盛る。
そしてマヨネーズを生野菜かける。
「なんだい、それは?」
「新しい調味料マヨネーズです。ビルさん」
「「「 マヨネーズ?! 」」」
「さあ、みなさんで食べてみてください」
「どれ、どれ」
アンナちゃん、サリーさん、ビルさん。
アリッサさん、オルガさんがフォークで野菜を取る。
〈〈〈〈〈 美味しい~!! 〉〉〉〉〉
みんなの声が揃った。
「こんなに生野菜が美味しいなんて」
「肉にかけても美味しいですよ」
生野菜をサイドメニューとして、店にも出すことを提案した。
「さっそく今日から店に出してみよう。卸してくれるよなエリアス君」
「もちろんですよ、ビルさん」
こうしてマヨネーズの納入が決まった。
数年後、アレン領はマヨネーズ、カレーの香辛料、醤油(蒲焼)タレ。
そしてカツや、から揚げなどの揚げ物料理で賑わう豊かな街になった。
それぞれの店で料理は工夫され、たくさんの品数になっていく。
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