私はアリッサ。
冒険者ギルドの受付をしており、エリアス君を陰から守るエージェント。
エリアス君は無防備すぎる。
この屋敷のことを商業ギルドの2人に簡単に話している。
私はエリアス君と商業ギルドの2人の話を止めさせた。
そしてアレックさんとノエルさんを、少し離れたところに呼び出した。
その後をオルガさんも着いてくる。
「アレックさん、これはいったいどう言うことでしょうか?」
「何のことでしょう、アリッサさん」
「エリアス君には不干渉《ふかんしょう》条例が出ていますよね?」
や、やはり知っていたか。
私は商業ギルド、ギルマスのアレックだ。
エリアス君には干渉してはならないと国から通達が出ている。
国が総力を挙げて守る対象人物だからだ。
そして対象人物には24時間、影から専用の組織が身の回りを守ると聞く。
やはり冒険者ギルドが、関わっていたか。
表向きは仕事の無い人に仕事を与える組織だ。
だが実情は国が管理しており、荒くれ物や人の動きを管理するためにある組織だと言う人も居る。
その証拠に冒険者ギルドは、各国ごとに組織が違う。
その中でも目を引くのが目の前にいる女性、疾風《しっぷう》のアリッサ。
150年くらい前に実際に起こった、ドラゴン大戦の五代英雄の生き残りの1人。
その内2人は戦いの中で亡くなり、生き残ったのはエルフ族のアリッサ。
その他にラミア族とホビット族が居たと言う。
今では子供でも知っている有名な英雄談だ。
この世界には色んな種族が居る。
人型に近い種族は人の中で暮らしていける。
だが容姿が違う者は亜種と嫌われ蔑まれる。
その者の多くは街では暮らせず、森の中で暮らしていると言う。
そしてまれに力のある種族は国に雇われ組織に入る。
冒険者ギルドが、その1つだ。
受付のアリッサさんは、私が小さい時から知っている。
そして50年前と容姿が変わらない。
冒険者ギルドに長く登録している人は気づくだろう。
だがそんな奴はいない。
気づいたとしても、『あの人は変らないな』くらいのものだ。
冒険者では長くやっていけず、しばらくするとみんな辞めるからだ。
だから誰も気にしない。
だがギルドマスタークラスになれば違う。
他のギルドを含め何かの時に備え、亜種と呼ばれる人達を極秘裏に雇っている。
今回、この屋敷に来たことではっきりわかった。
エリアス君のこの屋敷は、今までの常識が覆るほどのものだ。
疾風《しっぷう》のアリッサが側で守るだけの価値はある男なのだと分かった。
そしてAランクの獅星龍のオルガも付いている。
なんと彼は強運なんだ。
そしてこれからは商業ギルドも彼と密にしないといけない。
なぜなら彼の能力は商売に繋がる物が多いからだ。
彼に干渉してはいけない。
だが彼から言ってくる分には構わない。
アバンス商会のように、冒険者として関わりを持つのもいい手だ。
彼は無垢すぎる。
エリアス君は冒険者であると同時に、商業ギルドにも加入している。
それから我々の入る余地はあるはずだ。
「分かって頂けましたか、アレックさん」
「わかりました、アリッサさん。今回のことは反省しております。そうだなノエル」
「はい、すみません」
「以後、気を付けてくださいね」
商業ギルドのアレックさんと話が終わり、私達は広間に戻った。
するとエリアス君はいない?!
「ねえ、エリアス君はどうしたの?」
私はそこにいたDランクパーティ『餓狼猫のミーニャ』のエメリナさんに聞いた。
「アリッサさん。エリアス君ならコルネールさんが、ウォ?ウォシュレットの使い方を教えてほしいと言って2人でトイレに行ったわ」
ここへ来た時にウォシュレットの素晴らしさをつい、語ってしまったからかしら?
「でも、随分出て来ないわ。どうしたのかしら?」
「?!」
私は嫌な予感がした。
コルネールは以前から、エリアス君から美味しそうな魔力がすると言っていた。
彼女の能力は呪術師。
相手を自分の意のままに操ることができる。
慌てて私はオルガさんと2人でトイレに向かう。
ここのトイレは比較的、中でゆっくりできるように作りが大きめだった。
私は思い切ってトイレのドアを開けた!!
そこには白目を向いたコルネールを抱きかかえ、途方に暮れるエリアス君が居た。
私は思わずエリアス君を責めてしまった。
「「 なにをしているのエリアス(君)?! 」」
オルガさんと同時に聞いていた。
きっとコルネールが誘ったのだろう。
分かっている。
だが胸にモヤモヤが…。
そしてエリアス君の、いたたまれない様な顔が目から離れない。
私は物凄い顔をしていたに違いないから。
「なにがあったんだエリアス?!」
オルガさんが聞いてくる。
俺は正直に話した。
コルネールさんがウォシュレットを見てみたいと言われ、使い方を説明するため2人でトイレに入ったこと。
そしてイキナリ両肩を壁に押さえられkissをされたこと。
なぜか逆らえなかったこと。
いつの間にか俺も夢中になり、こちらからも反応てしまったことを話した。
「やっぱりね、こらコルネール、起きなさい!!」
アリッサさんはコルネールさんの肩を揺する。
「うぅ~~ん」
コルネールさんが目を覚ました。
「いったい、どうしたのコルネール?」
「ア、アリッサ。エリアス君て凄いの、もう受け入れ切れなくて…」
「エリアス君、ごめんね。見たでしょう?コルネールはラミア族なの」
「え、ええ、見ました…」
「彼女はエリアス君の魔力が美味しそうだから、少しもらおうとしたのね」
「魔力ですか?」
「そうよ、魔力を食べる種族もいるの。そして呪術師だから、普段は幻術で下半身は分からない様にしているの。そして魔法であなたを、思い通りにしようとしたのね。でも許してあげて」
「わ、わかりました」
「ほら、あなたからも謝って」
「ご、ごめんなさいエリアス君。あたたの魔力が美味しそうで…。でもエリアス君の魔力は多すぎて、少しのつもりがたくさんもらってしまって…」
「そんなに魔力量があったの?」
「えぇ、そうよ。アリッサより遥かに多そうだわ」
「そんなに?!」
何百年もかけて鍛えて来た私より魔力量が多いなんて…。
「エリアス君、このことは秘密にしてあげてね。亜種族と言われている人達は多くて、秘密にしないと人の中では生きていけないのよ。どうかお願い」
「はい、わかりました」
「私もこの場を借りて言うわ。今日から一緒に住むんだから。私は森妖精なの」
「そ、そうですか」
アリッサさん、知ってます。
「エリアス君より、少し年上なの」
いえ、それは違います。
「あれ?驚かないのエリアス君は?!」
「はい、俺はそんな偏見はありませんから」
「嬉しいわ、エリアス君。今夜からよろしく頼むわね」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」
「まあ、なんて素敵な子なの!!私も良いわよ」
コルネールさんが騒ぎ出す。
「なにを言っているの、あなたは!!」
「だってエリアス君はあの時、私に下半身を巻きつかれ、ウロコでゴリゴリしたら、我を忘れて…エリアス君は…、エリアス君は」
「 コルネール、あなたは!! 」
アリッサさんが大きな声を出す。
そしてオルガさんはそのやり取りを、笑いながら見ているだけだった。
「な、なに?どうなったの?」
「押さないでよ、シュゼット」
トイレの前ではDランクパーティ『餓狼猫のミーニャ』の3人が
ドアに耳を付けて聞き入っている。
そして後ろには商業ギルドのアレックとノエル。
アバンス商会のアイザックと従者2人が立っていた。
「しかしエリアス様は強者ですな。一緒に暮らしているオルガさんと、今日から暮らすアリッサさんの目を盗んで他の女性に…」
「それにエリアス君のは…。コルネールさんでは受け入れきれないとは…、コホン」
アレックとアイザックはそんな話をして、従者2人は「羨ましい」と言っている。
商業ギルドのノエルは顔を赤らめ、『餓狼猫のミーニャ』の3人は空きがあると喜んでいる。
気を付けろ!構内トイレは、声が外に響きやすいところだ。
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