施設は15時で閉店して俺達はまた客間に集まりソファに座っている。
ソファにはファイネン公爵、奥様のナタリア様と娘のエリザ様。
俺達側は俺、アリッサさん、オルガさん、ノエルさんだ。
「とてもいいお湯だった」
「こんな凄い施設は王都にもございません」
ファイネン公爵が言えば、奥様のナタリア様も褒めてくれる。
「特にお茶が美味しかったです。果物も甘くて美味しくて、夢のようです」
10歳のエリザ様も大喜びだ。
「実はエリアス君。君に頼みがあるのだが…」
「頼みですか、なんでしょうか?」
なにか、悪い予感しかしない。
「娘のエリザをもらってくれないか?」
「どうぞ、よろしくお願いいたします」
エリザ様も頭を下げる。
オルガさんを見ると、嫌な顔をしている。
「前なら嫁は(夜の件があるから)4~5人と思っていたけど、今はノエルがいるから(体力があるから)いまのままで良いわ」
オルガさんが今のままで良いと言う。
「そ、そんな…」
エリザ様、いいやもうエリザちゃんでいいや。
エリザちゃんが哀しそうな顔をする。
ノエルさんも複雑そうだ。
しかしエリザちゃんも負けてはいない。
「エリアス様は下は9歳(奴隷のアディちゃん)から、上は40代半ば(アバンス商会のオルエッタさん)までの幅持ちだと伺いました」
エリザちゃん、なんてことを言うのですか?
「エリアス君の嫁になるのは大変なことですよ。親にも言えないことが出来るかもしれません。それがあなたに守れますか?」
「もちろんです!守りますアリッサお姉さま!!」
アリッサさんはエリザちゃんに、お姉さまと言われ嬉しそうな顔をしている。
「わかりました!この私がエリザお嬢様の、いいえエリザの面倒をみましょう!」
「アリッサお姉さま~!!」
「おぁ、それはめでたい。さっそく帰って用意をせねば」
ファイネン公爵は、とても嬉しそうだ。
もしかしたら今後も俺の意思とは関係なく、こんな感じで嫁が増えていくのか?
それをはたしてハーレムと呼ぶのだろうか?
そして後日また嫁入り道具を持ってやってくると言う。
結婚し一緒に住むのは成人の15歳になってからのはずだが…。
なんでも新しくできた制度で今回は『お試し』期間?という名目らしい。
貴族は恋愛期間が無い。
だから事前に、旨くやって行けるのか暮らして試すのだと言う。
なんだそれは?
しかし俺達は貴族ではないので、侍女を付けるなら1人にしてほしい事を頼んだ。
すると幼い頃からエリザちゃんを、面倒をみている侍女が居ると言う。
一緒に来ていた侍女のネリーさんを紹介された。
アレン領に来るのは、その人にするようだ。
ファイネン公爵家族は、今夜は宿屋に泊り明日発つと言う。
仕方が無いから結納金代わりに魔道具を送ることにした。
明日、旅発つ時に寄ってもらうように話した。
ファイネン公爵達が帰った後、アリッサさんになぜ嫁に貰う事のしたのか聞いた。
いくら女神ゼクシーの神託が降りても、権力者は取り入ろうとするだろう。
それなら2大公爵家のファイネン公爵の娘なら露払いになるだろうと。
これでもう誰も、俺にまとわりつかないだろうと。
翌朝、ファイネン公爵家族がウォルド領に帰る前に寄ってくれた。
結納代わりとして冷蔵庫230Lを3台、照明魔道具を4台、魔道コンロを3台送った。
そして運送にはアバンス商会で始めたばかりの、『黒猫の宅配便』を使い運んでもらう事にした。
後日、ファイネン公爵は自宅に届いた結納品の魔道具と、王都で同じものを見て驚くことになる。
その値段は合わせると数十億になったからだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ジリヤ国、クリストフ ・ディ・サバイア国王は悔しさのあまり爪を噛んだ。
なんと『修繕と破壊魔法』を使うエリアスという青年は、女神ゼクシー様の愛し子様だったと言うではないか?!
王都からアレン領は遠すぎる。
道は愛し子様により広くなり、舗装された。
だがそれでもすぐに行くことはできない。
それにファイネン公爵の娘と婚約したと言うではないか?!
なんと素早いのだ。
『何人と言えども干渉、束縛することかなわず。勝手御免とする!』という、神託が降りた以上は我々はこちらから関わり合うことが出来ない。
私にも孫娘はいる。
だがそれをエリアスという青年に、勧めれば干渉したことになる。
しかし以前よりの知り合いなら別だ。
面識があるもの同士なら干渉したことにはならない。
なんという抜け目なさだ。
この国の人々のほとんどがシャルエル教の信徒だ。
その愛し子様なら、何かがあれば人々は彼について行く事だろう。
彼が動乱を望めば、この世界は彼の物になるかもしれない。
周りにいる人々が、彼を祭り上げるような人でないことを祈るのみだ。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!