俺は教会を後にした。
すると10歳くらいの子供達が何人が遊んでいた。
そう言えばこの子達は、大人になったらはどうなるのだろう。
それともここに、ずっといられるのかな?
そんなことをふと考える。
これからどうしようか。
この世界に来てから、最近はオルガさんと一緒のことが多かった。
だから1人だとなんだか不安だ。
そう言えばさっきから、誰かにつけられているような気がする。
俺に何の様だろう?
それを確かめるために、わざと路地に入った。
しばらくすると、20代前半の冒険者の男達が前から3人、後から2人現れた.。
リーダーらしい男が話を始める。
「えへへへへ、今日はついてるぜ。いつもは獅星龍のオルガと一緒だからな」
「俺に何の様だ?」
「お前の持っているマジック・バッグを渡せ!そうすれば命は取らないでやる」
犯罪者が顔を見られ、そのまま目撃者を残して消えるとは思えない。
特にこの世界では。
「それは無理だな」
「それじゃあ、力ずくでそのポーチをもらうぜ!!かかれ!」
そう言うと男達は襲ってきた。
やれやれ、と俺は思う。
俺の【スキル】沈着冷静が働き始める。
このスキルのおかげで俺は、物事を落ち着いて対応できる。
そして【スキル】高速思考。
この能力で一瞬でたくさんのことを考えられる。
特に戦略を練る時には、大いに役立つ。
ただ情報量が多くなりすぎて、独り言が多くなる。
そして頭が疲れて、眠気が襲うのが難点だ。
俺は壁際に一歩下がった。
ストレージからダミー用の、スモールシールドを出し左手に装備した。
「ヤァ!!」
俺はストレージを全身に纏った。
振り下ろされるロングソードを、左手のスモールシールドで受ける。
そして右足で相手の脚を蹴る。
バギッ!!
「ギャ~!!」
相手の男が崩れ落ちる。
「怯むな、相手は1人だ、かかれ!!」
4人の男達が切りかかってくる。
俺はそれをかわしスモールシールドで剣を受け、蹴りで相手の脚を砕く。
ただそれだけ。
ボギッ!!
ギャ~!!
バギッ!!
いてぇ~!!
ゴギッ!!
ひぃ~!!
襲ってきた5人の内4人の男達は、地面でのたうち回る。
段々と通りの人達が気付き始める。
残ったリーダーらしい男が慌てている。
「こ、こんな話はきいてねえ!Eランクのくせに…」
そう男は言うと俺に背を向け逃げようとする。
俺はストレージから、5cmくらいの鉱物の塊を出し逃げていく男の脚に投げる。
ゴギッ!!
「い、いて~!!」
最後の男も倒れる。
「凄いぞ、あんちゃん」
この騒ぎを途中から見ていた、通りの人が集まりはしゃぎだす。
この世界には娯楽がない。
こんな事でも第三者から見たら、人のことは娯楽なのかもしれない。
「どけ、どけ、どけ!」
騒ぎを聞きつけた、警備の騎士団員がやってきた。
事情を話しそれを見ていた人達の証言もあり、俺に非はなく解放される。
男達5人は冒険者で、ギルドに報告後に収容所送りになるらしい。
だが脚を折った男5人を運ぶ術がない。
仕方が無いのでストレージ内の『創生魔法』でリヤカーを創った。
そしてそれを出すと、見ていた人から歓声が上がった。
騎士団の人達は男達をリヤカーに乗せ詰め所に連れて行くそうだ。
リヤカーは騎士団に寄付することにした。
両側の木材にエリアス商会のロゴの焼印を入れておいた。
円の下部にエリアス商会の文字と、左右を向く女性の横顔が描かれ下側でクロスした麦の穂が左右から上部に大きく伸びているロゴだ。
俺も念のため、冒険者ギルドに顔を出し報告をした。
そして一度屋敷に戻ることにした。
歩いているとオルガさん達の呼ぶ声が聞こえた。
振り帰るとオルガさんとアリッサさんだった。
「探したぞ、エリアス」
「そうよエリアス君。朝起きたら居ないし」
2人にそう言われると、俺が悪い様な気がするが…。
夜更かしして、朝起きなかったのは誰だよ?
「冒険者ギルドに行ったら、エリアス君が襲われたって聞いて…」
「エリアスが大容量のマジック・バッグを持っているのは有名になったからな。いつかはそんな奴が出てくるとは思っていたんだ」
「これでエリアス君も強いと分かったから、しばらく手を出す人はいないでしょう」
「今度から1人で出かけるんじゃないぞ、エリアス。わかったな?」
俺は子供か?
「どこに行くつもりだったのだ?」
オルガさんが聞いてくる。
「一旦、屋敷に戻ろうと思ったけど。2人が居るならアバンス商会の、アイザックさんのところに行こうと思うんだ」
「そう言えば王都から戻った時に、暇な時に寄る様に誘われていたな」
「えぇ、そうです」
「なら行きましょうか?3人でね」
俺達はアバンス商会に向って歩いている。
するとむふふのアリッサさんが、右腕を組んできた。
今度は筋肉質のオルガさんが、左腕を組んできた。
そして左腕がゴリゴリで、右腕はふんわりだ。
この前も、こんなことがあったような?
「おかあさん、またあのお兄ちゃん達だよ」
「本当ね」
「この前もお兄ちゃんが2人のお姉ちゃんに、腕を掴まれ連行されて行ったでしょ」
「えぇ、そうね。今日はこんな朝早くからなのね。若いて凄いわ」
「若いと、どうなるの?」
「一度、大人の階段を登ったら更に登り詰めていくのよ。今夜、私も主人に…」
女の子はキョトンとした顔をしている。
「お母さんもお父さんと今夜、登るの?」
その階段はどれだけ高いのだろうと、子供心に女の子は思った。
俺達3人は街中を歩いている。
街の慢性化した妻帯者の、妄想ネタになっているとは知らずに…。
そしてその晩、たくさんの家庭の夫婦が階段を登って行った。
食文化が発展し街が賑わうその少し前。
エリアス達は街の人口増加のきっかけになる、細やかな手助けをしたのだった。
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