【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

想像した事を実現できる創生魔法。現代知識を使い生産チートを目指します。
ジェルミ
ジェルミ

第113話 試される

公開日時: 2022年11月10日(木) 15:10
文字数:2,155

「はい、わかっております」

 ん?何の話だ。


「君はエージェントだ。人族の中で身の保証をする代わりに、国のために働くのが条件のはずだ」

 ドゥメルグ公爵にエージェントと言われた途端に、アリッサさんが嫌な顔をした。

 ノエルさんも複雑そうな顔をしている。

 なぜ、この男はアリッサさんを悲しませる?


「王都に行った際に、君はエリアス君のことを報告する義務があったはずだ」

「はい、そうです」

「なぜ、報告しなかったのだね?」

「そ、それは…。彼を…」

「彼をなんだね?」

「彼を、愛してしまったからです」

「ほう、異種族の君が人族を愛したというのかね?」

「は、はい。恥ずかしながら」

「エルフの君から見たら人族のエリアス君など、ひ孫よりも歳が…「言わないで!!」

 アリッサさんが大きな声で遮《さえぎ》る。


「好きな男の前では嘘をついていたいと言うことか」

 以前、鑑定で見たから、アリッサさんは250歳というのは知ってますけど。

 いくつになっても女性は歳を気にするものなんだね。

 でもドゥメルグ公爵の言い方は、何かアリッサさんを見下した感じがする。


「アリッサさんをどうするのですか?」

「それはこれから考えることになる。罰を与えないと、示しがつかないからね」

「どうして、そこまで…」

「それは勿論、エリアス君を取り込みたいからさ。新しい事業を起こし博学で大容量のマジック・バッグを持っている。他の国に行かれないようにしたいのさ」

「俺は物ではありません!!」

「分かっている。でも一つ間違えば、君は他の国に行っていたかもしれない。そう考えれば彼女は大罪を犯したことになる」


「それで俺をどうしたいと?」

「まずは君を保護したい。国の保護下に置きしかるべき地位にする。そして大容量のマジック・バッグで運搬に役立ってもらう。またはエリアス君の能力が先天性で遺伝するものなら、こちらで選んだ女性と結婚してもらい子を成してもらおう」


「それは困ります。俺にはすでに妻が3人おりますから」

「そうか。では別れてもらおう。ここにいる人族の女性とエルフ。思い出した、女性でAランクの冒険者と言えばただ一人、獅星龍のオルガだね。だが彼女も獣人だ」


「それがなにか?」

「この世界は人族が一番だ。これから君は高い身分の地位を得ることになる。それが異種族や、言っては悪いがこんな貧相《ひんそ》な女性では釣り合わない。だから女性はこちらで用意するから、好きな女性を選んで一緒になるといい」

 好きな女性を選んで一緒になる?

 何を馬鹿なことを言っているんだ?


 アリッサさんは自分の種族を馬鹿にされ、ノエルさんは容姿を馬鹿にされた。

 2人はとても悲しそうな顔をしている。

 そしてここに居ないオルガさんのことも見下すことを言った。


 なんだ、この男は?

 貴族の本質はこういう事なのか?

 気に入らなかった。


〈〈〈〈〈 ズゥ~~ン!! 〉〉〉〉〉


 俺を中心にして、何かが周りに広がった。

 するとドゥメルグ公爵、アルマンさん、アリッサさん、ノエルさんが、うずくまってしまった。

 どういうことだ?


「駄目、エリアス君!!」

 アリッサさんが俺を止める。

 

「落ち着いてエリアス君。魔力の放出を抑えて」

 魔力放出?

「私はまだいいけど魔力抵抗が低いノエルさんなどが、いきなり浴びたら心臓が止まってしまうわ」

 そんなことが出来るようになったんだ?


「ドゥメルグ公爵。今後のことですがお時間を頂けませんか?」

「君の返答次第ではアリッサの処遇が…」

 そのことを盾にして、俺を引き込むつもりか。

 彼女のことを大事に思うなら、別れて君は貴族になるんだ。

 そうすればアリッサさんの処遇は、なかったことのしよう、という筋書きか。

 何かの物語か?


「アリッサさんは俺の大切な妻です。誰にも従うことはさせません!!」

「わ、わかった。しばらく猶予を与えよう。だがあまり時間はないからね」

 俺の剣幕に押されたのか、ドゥメルグ公爵がたじろぐ。


 そして俺達は公爵家を後にした。

 俺はアリッサさん、ノエルさんを連れ、そのまま帰りにあるところに寄った。


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 

「失敗だったなアルマン」

「そうですね、公爵様。すっかり、嫌われてしまいましたね」


「相手は成人したばかりの青年だ。金と女で何とかなると思ったが…」

「奥様のアリッサ様の件を不問にする代わりに、別れを勧めても駄目でしたね」

「あぁ、年上の女に誑《たぶら》かされて、いるのかと思ったが違うようだ」


「元々、我々がエージェントと呼ばれるハイレベルの種族に勝てる訳がございません。よって体罰や制裁も加えることは出来ないということになります」

「エリアス君もさすがに、そこまでは分からなかったようだな」


「そうですね、侯爵様。エージェントは人族の世界で生活する場を保証するという、契約で我々に従っているだけですから。拘束できる訳がありません。それに試しに公爵様が奥様方のことを悪く言ったら、憤慨されておりました。人種の偏見もなくお金や女性では動かない、堅実なタイプとお見受け致します」

「人柄を探るようにと王都から指示が出ていたので、やむを得ず色々と甘い事や嫌がりそうなことを言って試してみたが…」

「真面目ないい青年でしたね」


「あぁ、それに私の【鑑定】を弾き、あれほどの魔力を持っているとは」

「嫌な役回りでしたね、公爵様」


 その言葉にドゥメルグ公爵は頷いた。

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