私の名は冒険者ギルド長パウル。
若い頃はパーティーを組み冒険者をやっていた。
魔法も使えたがどちらかというと、剣の方がむいており剣士になった。
そして35歳の時、Sランクになった。
それからは魔物討伐や護衛依頼をこなす日々だった。
そんなある日、前のギルド長が引退した。
そして実績があった私が次のギルドマスターになった。
年齢的にもキツイものがあり、引退を考えていた時だった。
パーティーは解散、私はギルド長になった。
150年前、ドラゴンが街を襲った。
街を襲ったドラゴン相手に、騎士団は勇敢に戦った。
だがドラゴン相手では歯が立たなかった。
そんな時だった。
異種族と人族からは、敬遠されていた種族が力を貸してくれた。
どこからか現れ勇敢にドラゴンと戦い追い払ってくれた。
そして5人は、この領の英雄となった。
その内の巨人族と天使族は、戦いの中で命を落とした。
生き残ったのはラミア族、森妖精、小人族。
気まぐれな小人族は、戦いの後に姿を消した。
ラミア族、森妖精は、その当時できたばかりの冒険者ギルドの庇護下に入った。
人族は人口が大きく、どの土地でも一大勢力だ。
異種族と言われる彼らは、能力が高いほど寿命が長く繁殖力が弱い。
だから数には負けてしまう。
そして見た目が人族の容姿から、離れている種族ほど人の中では生きずらい。
そして人族に容姿近いものは、国の庇護下に入り生活を守られる。
その代償として要人警護や、諜報活動をするエージェントになる。
どの国でも国を統括するため、影で色んな組織が暗躍している。
この領で言えばギルドと言われる冒険者、商業、鍛冶、建築、魔術師、錬金術師などがそうだ。
考えてみれば分かることだ。
国全土に広がり小さな村にもギルドは必ず存在する。
そんな大きな組織を一団体が行えるわけがない。
彼らは人々に仕事を与え管理し、暴動など起きない様に情報収集を行う。
街の噂話などを集め人の動きや、国に仇なす者をいち早く見つけるのが仕事だ。
彼らは能力が高く寿命も長いからその分、長く役に立ってくれている。
どの国も同じような組合を作り、同じように人々を裏から管理している。
受付のアリッサは、そのドラゴン大戦で生き残つた5英雄の一人だった。
風魔法が得意で、動きが早く疾風のアリッサと字がつくほどだった。
〇月▢日
そんなある日、受付のアリッサが面白い少年が居ると楽しそうに話をしていた。
アリッサは面食いだから、美少年かな?
数日経ち、その少年が他のパーティーと協力してトロールを倒したと言う。
それは嬉しそうだった。
どうせ倒したのは他のパーティーだろう。
その少年もいい経験になったと思う。
そして今度は冒険者を助けるために、バグベアを単独で立ち向かい倒したと言う。
しかも助けたのは獅星龍のオルガで、少年はFランクだという。
どこかで剣術でも習っていたのかもしれない。
しかしあまりにも軽はずみだ。
見ず知らずの他人のために、バグベアに立ち向かうとは。
しかもバグベアが収納できるマジック・バッグを持っていると言っていた。
それが本当なら、それだけで一財産築ける。
運び屋として十分、生活できるはずだ。
同時にそれを狙う者も出てくるだろう。
〇月△日
今度はなんだ?
なに、ジャムをもらっただと?!
しかもその後、イチジクを皿に山盛りもらい、挙句の果てに『季節ごとに森の果物は違うから、その都度たくさん採ってきます』と言ってくれたんです、だと。
その少年はエルフキラーなのか?
本来、森の住人である森妖精には果物は森の恵み宝物なのだ。
その宝物を山盛りにして差し出すとは。
金貨を目の前に山積みにして差し出されたら、女はどう思うか?
それと同じことをしたと言う。
プロポーズをしているのと同じだぞ!!
しかしアリッサがエルフとは知らないはず。
では無意識にやっているのか?
だとしたら天然のたらしだ。
砂糖や果物は高級品だ。
町娘でもそこまでされたら、堕ちるぞ!!
〇月◇日
アリッサが私のところにやって来て頼みがあると言う。
エリアスというあの少年を、エージェントとして側で警護したいと言い出した。
彼は『創生魔法』と言う、自分の望んだものが創れるスキルを持っていると。
裏路地にあった潰れかけの屋敷が、一晩で豪邸に変ったという。
信じられない話だ。
そしてその屋敷の中は、見たことも無い魔道具だらけだという。
材料さえあれば自分の望んだものが作れる、それが彼のスキル『創生魔法』だと。
それだけではなく光魔法を含めた5属性の魔法を使えるという。
加えて大容量のマジック・バッグを持っている。
私は頭を抱えた。
彼は100年、いいや場合によると今後現れることのない逸材かもしれない。
すぐに不干渉条例を発令した。
国に属する組織や貴族に対しては、これで彼を守れる。
だが問題はそれを知らない一般の人々から保護することだ。
アリッサをエリアス少年の、エージェントに任命した。
しかし今日アリッサは、とんでもないことを言ってきた。
冒険者ギルドを辞めたいと。
なぜなのか聞くと昨日、屋敷のお披露目会があったようだ。
数日前にはなかった3階建ての建物ができ数々の魔道具。
温泉設備や斬新な遊具の数々。
温泉施設と考えたら、何日でも居たい夢の宿だと。
そしてお金を出せば魔道具が買える展示即売会会場だと。
そして彼は世間から、離れた暮らしをしていたらしく常識に疎い。
秘密にすることも無く、隠すことを知らない。
だからとても危うく、危険だと。
明日からAランクのオルガと彼は、護衛と運送の仕事を受け王都に向うという。
その彼らについて行きたいと。
だが、さすがにそれは許されない。
トン、トン、
その時、書斎のドアが叩かれた。
「誰だ?」
「コルネールです」
受付のコルネールか。
「入れ」
「失礼します」
「どうした、コルネール。今アリッサと話をしているのだが急用か?」
「それが受付にアリッサを訪ねて、エリアス君とオルガさんが来ています」
「まあ、エリアス君達が。どうしたのかしら?」
「エリアス少年が来ているのか?」
「はい、そうです」
コルネールもギルドのエージェントだ。
当然、エリアス君のことも知っている。
だから話の途中なのに、わざわざ知らせに来たのだ。
「ここへ通せ。話をしてみたい」
「ここにですか?」
「あぁ、そうだ」
「わかりました、そう伝え案内します」
エリアス君というのは、どういう少年なのかこの目で確かめようではないか。
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