【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

想像した事を実現できる創生魔法。現代知識を使い生産チートを目指します。
ジェルミ
ジェルミ

第41話 解体依頼

公開日時: 2021年11月27日(土) 07:02
文字数:2,629

 朝になった。

 俺とオルガさんは『なごみ亭』で、宿泊最後の朝食を食べ宿屋を後にした。


「エリアスお兄ちゃん、また来てね~」

 宿屋の一人娘アンナちゃんが、忙しい時間の中で見送ってくれた。


「オルガさん、これから冒険者ギルドに行こうと思います」

「ワイルドボアを売りに行くのかい?」

「えぇ、そうです」

「ふぅ~ん。それなら行こうか」

 オルガさんは腑に落ちない返事だったけど、冒険者ギルドに向かう事にした。





 朝の早い時間なので、人が多く混んでいた。

 いつも遅い時間に来るから、こんなに混んでいるのを見るのは初めてだった。

 アリッサさんはまだ、出勤前のようだった。


「オルガ姐さん、お久しぶりです!」

 声を掛けられたので、後ろを振り向くとそこに獣人の女の人が居た。


「やあ、エメリナ。ほんと、久しぶりね」

「いったい、どうしていたんですか?ここのところ、見かけなかったので」

「しばらく、依頼は受けていなくてね」

「どうしたのですか…。オルガ姐さん、その少年は誰でしょうか?」


 エメリナと呼ばれた獣人の女の人は、その時初めて俺に気づいたようだった。


「あぁ、これはエリアスよ。私のパートナーよ」

 オルガさんは恥ずかしそうに下を向き、俺に尻尾をペシッ、ペシッ叩きつける。


「えっ、こんな華奢な人族の少年と、チームパートナーになったのですか?」

「いや~、チームパートナーというか、人生のパートナーと…ゴニョ、ゴニョ」


「なにを言っているんですか、オルガ姐さん。それにこのエリアスとか言う少年から、姐さんの匂いがたくさんします。それはいったいどう言うことですか?!」

「どう言うて言われも。一緒に暮らしていればね。エメリナ、わかってよ」

 更にオルガさんは俺に尻尾をペシッ、ペシッ叩きつけてくる。


「一緒に暮らしている、て。どういう事ですか?!私と言う者がありながら…」

「オルガさん、この方はどなたですか?」

「あぁ、この子は雉虎猫族のエメリナだ。彼女達のDランクパーティ『餓狼猫のミーニャ』が冒険者になった時に、しばらく面倒を見ていたんだ。それから特にエメリナには懐かれてしまって」


『餓狼猫のミーニャ』て、なんだ?

 狼なのか猫なのか?


 それにしてもエメリナさんは、女性が自分より強い女性に憧れる、てやつか…。

 エメリナさんの後ろを見ると他に2人、女性の仲間がいる。

 耳が頭の上にあるから獣人だよね?

 

「まあ、懐かれたなんてひどい…。オルガ姐さんの凛々しさに憧れているのに」


「悪かったな、エメリナ。じゃあ、これで」

「待ってください、オルガ姐さん」

「なんだい?」

「今日は依頼を受けに来たのでしょうか?」

「違うよ、今日はエリアスと狩った魔物を売りに来たのさ」

「討伐部位ではなく魔物をですか?」

「あぁ、そうだ。じゃあな」

 そう言って俺達は買取窓口に向かった。


 彼女達は不思議に思ったのだろう。

 魔物を売りに来た、と言いながら俺達が手ぶらだから。

 だから討伐部位だと思ったのだろう。



 買取窓口の解体場にはアンセルさんが居た。

「こんにちは!アンセルさん」

「おぉ、お前は確かエリアスか?」

「覚えていてくれたんですね。ありがとうございます」

「今日も解体込みの買取かい」

「えぇ、そうです」

「で、物は何だい?」

「ワイルドボアです」


「「「 ワイルドボア?! 」」」

 後で驚く声が聞こえた。


 後ろを振り返るとパーティ『餓狼猫のミーニャ』の3人が付いて来ていた。


「どんな魔物を狩ったのか興味があったのよ。でも2人でワイルドボアなんて」

 なんでだ?

 ワイルドボアて、イノシシですけど??


「こっちで出してくれ」

 アンセルさんは前回ストレージから出したのを、覚えていてくれたのだろう。

 解体場に案内してくれた。

「ここだ!」

 そう言われ指示された場所に体長1m、全長2mはあるワイルドボアを出す。


〈〈〈〈〈 ドンッ!! 〉〉〉〉〉


 地響きがしたような大きな音だった。


「 「 「  す、凄いわ!! 」」」

『餓狼猫のミーニャ』の3人が驚いている。


「ほう、今回は手際が良いな。首の頸動脈を一刀か、他に傷も無い」

「オルガさんが倒したんです」

「おお、さすが獅星龍のオルガだな。血抜きもできてるから、肉は高く売れるぞ。しかも鮮度がいい。まるでさっき倒したばかりの様だぜ」

「まあ、色々ありまして。それからお願いがあります」

「お願いだと?なんだ、言ってみろ」

「俺も解体を覚えたいので、解体をしているところを見てみたいのですが」

「良いぜ、見ても構わないさ」

「なんだ、エリアス。解体なら私も出来たのに」

「オルガさんも、できたのですか?」


「むしろある程度、レベルが上がると魔物を倒してもそのまま持ち帰れないから、素材を解体して持ち帰るのさ。逆に出来ないやつはいないかな」

「そうだったんですね、恥ずかしい。それからアンセルさん、今は忙しいですか?」

「いいや、これから冒険者が外に出て、素材を持って帰ってくる夕方までは暇さ」

「では他の方にも手伝って頂いて、同時に他の解体を見たいのですが?」

「同時に見たいだと?他に何があるんだ?」


〈〈 ドンッ!! 〉〉〈〈 ドンッ!! 〉〉〈〈 ドンッ!! 〉〉

〈〈 ドンッ!! 〉〉〈〈 ドンッ!! 〉〉



 俺はそう言われストレージからビッグベア1匹、シルバーウルフが5匹。

 キラービー(蜂)8匹、キラーアント(蟻)6匹、センチピード(ムカデ)5匹を出した。


『餓狼猫のミーニャ』の3人は、口を大きく開け固まっている。


「おい、これは?しかし倒し方が極端に差があるな」

「えぇ、奇麗に首の頸動脈を切って倒しているのがオルガさん。そしてあちこちに傷があるのが俺です」

「しかしキラービー、キラーアント、センチピードは甲殻が固く、剣では倒せない。それをうまく甲殻の間を縫って叩き切っている。いったい、どうすればこんな風に。まるで誰かが抑えている間に、切ったような倒し方だ」

「さ、さすがオルガ姐さんだわ。凄い!!」

 エメリナさんが、倒した魔物を見て興奮している。


「悪いがエリアス。この時間帯は暇だから、解体の部署は人が出勤していないんだ。忙しくなるのが午後からだから、午前は人が少ないんだ」

「エリアス、私が後でやるからワイルドボアだけ、頼んではどうかな?さすがに私もワイルドボアは、1人でやるには大きすぎるからな」

「分かりました」

 そう言って俺はストレージに、ワイルドボア以外の魔物を一瞬で収納した。


 それを見ていた『餓狼猫のミーニャ』の3人は、驚いた顔で更にため息をつく。

 そして俺を見る目が、なぜかさっきまでと違う事に気づいた。

 どうしたんだろう?

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