【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

想像した事を実現できる創生魔法。現代知識を使い生産チートを目指します。
ジェルミ
ジェルミ

第69話 祝福

公開日時: 2022年2月27日(日) 19:12
文字数:3,358

「ゼクシーかあさん。そろそろ俺は行きますね」

「また来てねエリアス。かあさんは待っているわ」

「えぇ、王都から戻ったらまた来ます」


 あぁ~エリアスは行ってしまったわ。

 なんだか寂しいものね。


 女神になってから数万年。

 良縁にも恵まれず独り身だった。


 後輩の女神に合コンに誘われても、しょせん私は数合わせ。

 数千年の若い女神の方が人気があって、私なんか相手にされない。

 しかも最近はその『数合わせ』にも、呼ばれなくなった。


 このまま風化していくのかしら?

 

 そんな時だった。

 現世とあの世の狭間はざまに壮年の男性がやって来た。


 異世界『エニワン』の新しい風になればと転移を誘った。

 彼は承諾し、私に名前を付けてほしいと願った。


 そんなことを言われるのは初めてだった。

 私はその壮年の男性に、エリアス・ドラード・セルベルトと名付けた。


 名を与えると言うことは、力を与えること。

 そんな事も忘れて私は彼は名を与え、私の息子になった。


 黒髪、黒い瞳の美形の少年。

 彼は15歳に若返り人の心を引きつける、雰囲気を持つ少年になっていた。


 そんな彼が明日から王都に行くという。


 エリアスには将来は安定した職に就いてほしい。

 だから結婚も私が気に入った、女性の中からと思っていたのに…。


 いきなり嫁2人の姑になるなんて。

 子どもが一人暮らしを始め一人で、できるようになると強い寂しさを感じる。

 これが母なのね…。


 ゼクシーは忘れていた。

 ついさっきまでエリアスの事なんて、記憶の隅にしかなかったことを。

 一人劇場はさらに続く…。


 でも不安だわ。

 彼のやることはこの世界の活性化を、極端に進めそうな気がする。

 それに周りからも狙われるかもしれない。


 誰かが守ってあげないと。

 実際にエリアスが強いのか、弱いのかさえ分からない。

 そんな変なステータスだから。


 でも私は女神だから、天界から彼を見守る事しかできない。

 彼が殺されるようなことがあっても、私には干渉することは出来ないわ。


 そうだわ!!

 それならエリアスの側に居る、この2人の女に守ってもらえばいいのよ。

 エリアスを守れるように、2人に祝福を授けてと。




 森妖精エルフは知力が高く、風魔法も得意のようだから…。

 2割ほど『知力』と『魔力』を上げて。

 彼女はエリアスの盾ね。



 それから虎猫族のこの女ね。

 な、なんと言うことなの?!

 こ、この女は転移して、右も左も分からないエリアスの…。

 エ、エリアスちゃんのチェリーを奪うなんて!!

 オルガという女は、どこの馬の、いいえ猫の骨よ!!


 で、でも落ち着いて…。

 そうだわ、虎猫族の女は戦力になる。

 仕方がない。

 2割ほど『筋力』と『攻撃力』を上げてあげようかしら。

 彼女はエリアスのほこと。

 

 それからもう1つこの女には、加護をあげることにするわ。

 ・・・。


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


「さあ、行きましょうか」

 俺はお祈りが終わり立ち上がった。


「随分、祈っていたのねエリアス君」

「そうですかアリッサさん」

「まあ、そんなに長いほどでもないがな」

 オルガさんに聞くと、2人よりは少し長いくらいだったらしい。

 やはり天界での時間の流れは、下界とは違うのか。

 あれだけ長く居たのに。



 こんな広い空間で、一人は余りにも寂しいだろう。

 これからは頻繁に参拝に来よう。

 かあさんも寂しそうだったし。

 聞くと自分の創生した世界だから、24時間女神は対応しないといけない。

 だから休みもないと言う。


 母さんが言うには、天界は求人募集を出しても中々女神が集まらない。

 最近の若い女神は、お金は欲しいくせに努力はしない。

 キツく言うとハラスメント行為だと言われ、こちらが悪くなるそうだ。


 仕事は辛くて大変なのは当たり前。

 なぜって好きで働いていないから。

 生活のため、収入を得るために働いているのに。

 無理なく無難な範囲で仕事を選ぶ、これが今の若い子よ!とかあさんは言ってた。


 次世代の女神も育ってはいるが、数千年の女神ではまだ任せられないそうだ。

 どれだけ奥が深いんだ、女神仕事は。


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 俺達3人は教会を出て集合場所の、冒険者ギルドに向って歩く。

 するとギルドにはもうDランクパーティー『赤い翼』の4人が居た。


「やあエリアス。久しぶりだな」

「ご無沙汰しております、アドレーさん」

 剣士のアドレーさん。

 重騎士で片手剣と大きな盾を持ったジェイ さん。

 斥候役のシーフで、ショートソードを持ったランダルさん。

 紅一点の弓を持ったエリノルさんの、22~26歳の4人組パーティーだ。


 ちなみにリーダーのアドレーさんと、エリノルさんはデキている。

「な、なにを言っているんだ?エリアス」

「そ、そうよ、エリアス君たら、もう~」

 あれ?

 どうしたんだろう?

 み、みんな俺の思考が読める超能力があるのか?


「4人共、お久しぶりですね」

 知り合いだったのか?

 あれ?オルガさんが敬語を使っている。

 どうしたんだ?

 明日は雨か…。

 やめてくれ、これから王都に行くのに…。


「当たり前だろう。同じ冒険者でもみんな私より年上なんだから」

 そんなもんですか。

 しかしなぜ、俺の心の声と会話ができるんだ?


「口にでてるぞ、エリアス」

 そうですか、オルガさん…。


「それにしても。なんでアリッサさんまでここにいるの?」

 エリノルさんは不思議そうに聞く。

「それは…」


「みなさん、お早うございます」

 アリッサさんが答えようとした時だ。

 アバンス商会のアイザックさんがギルドに入って来た。


「本日はみなさん、よろしくお願いいたします」

 アイザックさんは受付をして、『赤い翼』と初対面なので挨拶を交わした。


「どうしてアリッサ様が、レザーアーマーを着てここにいるのでしょうか?」

「私も同行しようと思いまして」

「同行ですか?」

「えぇ、護衛も致します。それに料金は頂きません」

「なぜでしょうか?」

「エリアス君の側に居たいからです」


「「 きゃ~!! 」」

 ギルドの受付の女性たちが騒ぐ。


「アリッサは昨日からエリアス君と暮らし始めたの。1日で離れ離れは寂しいよね」

 受付のコルネールさんが一言余計な事を…。


「あの誰に誘われても、なびかなかったアリッサさんが…」

「俺もファンだったのに」

「あんな若い男が良いのか…」

 残っていた男の冒険者達が騒ぐ!!



「アリッサさんは、エリアス君と…そう…離れたくないよね」

 『赤い翼』のエリノルさんが、一人納得している。

「アリッサ様まで同行して頂けるとはこれは心強い。多少ならお支払い出来ますので、よろしくお願いいたします」

 アイザックさんが挨拶をする。


 アリッサさんも冒険者登録をしており、さっそく受付で護衛の追加登録をする。

「それではまず、私の店に寄ってください」

 アイザックさんに言われギルドの外に出る。

 するとお披露目会の時に居た、影の薄いお供2人が待っていた。

 これからアバンス商会に寄り、王都で売る商品を俺のストレージに収納するんだ。



 俺達はアバンス商会まで歩いた。

 アバンス商会はギルドの近くにあるから、それほど歩かなくて良いから助かる。



「エリアス様、荷物はこちらにあります」

 俺は倉庫らしいところに案内される。


「王都まで運ぶ荷物は、ここです」

「穀物ですか?」

「えぇ、そうです。この領から王都で売れるものなど、穀物くらいしかありません」

「アレン領は特産品はないのでしょうか?」

「特産品ですか」

「このアレン領のみで生産されたり、収穫される物品のことです」

「今のところそんな品はありません。そんな品があればいいのですが…」


 この領だけでも人気が出るものがあれば、それだけでやって行けるかもしれない。

 王都から戻ったら、何か考えてみようかな。


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


『女神ゼクシー』の祝福を受けた2人は…。


『名前:アリッサ』

 種族:森妖精エルフ

 年齢:250歳

 性別:女

【加護】

 女神ゼクシーの祝福

 『知力』、『魔力』2割UP



『名前:オルガ 』

 種族:虎猫族

 年齢:17歳

 性別:女

【加護】

 女神ゼクシーの祝福

 筋力』、『攻撃力』2割UP

 マル秘の祝福(-5


「痛い!!」

 これ以降、オルガは時々、物の角に足の小指をぶつけるようになった。

 可愛い息子を取られた、母のささやかな嫌がらせだった。


 祝福が必ずしも、いいものとは限らない。

 早く子離れしよう!


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 読んで頂いてありがとうございます。

 物語はまったり、のんびりと進みます。

 まだ出発してないし…。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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