夕方になり俺は、アリッサさんとオルガさんに呼ばれた。
商業ギルドのノエルさんを、迎えに行く時間になったからだ。
3人で商人ギルドに向かう。
中に入るとノエルさんが、ギルドの人に挨拶をしていた。
帰るだけなのに大げさだな?
ノエルさんは振り向き俺に気づく。
「エリアス様、お待たせいたしました」
そう言った。
俺は今来たところですけど…。
アリッサさんとオルガさんは頷いている。
俺達はノエルさんと一緒に商業ギルドを出た。
「私の泊っている宿屋はあそこです」
そう言われみんなで宿屋に入ってい良く。
この国は賃貸で家を借りるより、宿屋に寝泊まりした方が安く食事も付いてくる。
自炊しなくても良いので、宿屋暮らしの人が多い。
「この部屋です」
そう言われ俺達は中に入る。
「荷造りはしておいたので…」
ノエルさんに言われ部屋の中を見ると、風呂敷の様な布の中に服が入っていた。
「エリアス君、頼むわ」
アリッサさんに言われ、俺は首を傾げた。
うん?
「その荷物をエリアス君のマジック・バッグで収納してほしいの」
あぁ、そう言うことか。
ノエルさんはストレージのことは知らないからね。
俺は言われた通り荷物をストレージに収納した。
「さあ、行こうか」
オルガさんが言い、みんな後に続く。
ノエルさんは宿の人と別れを惜しんでいる。
あれ?
これからノエルさんは、どこに行くのかな?
アリッサさんを先頭に4人で歩いている。
このままいくと、俺達の屋敷だけど…。
あぁ、やっぱりそうだ。
本館の中に入り俺達の部屋がある三階に上がる。
「私達はエリアス君の両側の部屋だけど、ノエルさんはどうする?」
「では私はエリアス様の向かいの部屋で…」
二階、三階は各七部屋ある。
階段がある関係で三部屋ある向かい側が四部屋だ。
俺は三部屋の真中に住んでおり、その両側がアリッサさんとオルガさんの部屋だ。
では四部屋側の向かいの部屋がノエルさんか。
でもどうしてだ?
あっ!わかったアパート経営だ。
部屋は余っている。
それを利用して、人に貸そうと言う事か。
なんだ、みんなも言ってくれればいいのに。
「エリアス、ノエルさんにも家具のセットを出してあげてくれないか」
オルガさんに言われ、ストレージの中で『創生魔法』で言われた物を創った。
ベッド、テーブル、椅子4つ、タンス、三面鏡ドレッサーと椅子のセットだ。
ノエルさんは三面鏡を見て、とても嬉しそうに眼を輝かせていた。
そして俺はストレージに仕舞っていた、ノエルさんの荷物を出した。
「明日は寝具を買ってこないとな。まあ、今日は良いけど」
なんてことを言うんだオルガさん。
寝具の無いベッドで、ノエルさんに寝ろと言うのか。
「今夜はノエルさんの歓迎会ね。なごみ亭に美味しいものを、食べに行きましょう」
アリッサさんがそう言う。
そして4人で『なごみ亭』に向った。
「こんばんは!」
「あら、いらっしゃい!!」
サリーさんが迎えてくれる。
「4人前でお願いします」
「わかったわ。空いている席に座ってね」
席に座って待っているとこの店の看板娘、10歳のアンナちゃんがサリーさんと一緒に食事を持ってやってきた。
「お待たせ、エリアスお兄ちゃん」
「ありがとう、アンナちゃん」
「ねえ、エリアスお兄ちゃん。その女の人はだあれ?」
「あぁ、ノエルさんだよ」
「そういうことを言っている訳ではないのよ?!」
「では、どう言う?」
「また女の人が増えたの?て聞いているのよ」
「いや、そう言う訳では…」
「じゃあ、どう言うことよ。エリアスお兄ちゃんは体力馬鹿なの?奥さんが2人も居てまだ足りないの?そんな無駄な体力があるなら、他のことに使いなさい!!お父さんなんてお母さん1人で、へた…」
モゴ、モゴ、モゴ、
見るとお母さんのサリーさんが、鬼の形相でアンナちゃんの口を手で塞いでいる。
「アンナ、何言っているのかな?ちょっと、こちらに来なさい」
ズル、ズル、ズル、
そう言うと奥にアンナちゃんを引きずって行った。
「かわいい子ね」
ノエルさんが笑っている。
「おませさんなんですよ」
「人気があるのね、エリアス様は」
「そんなことはないですよ」
俺達は夕食を済ませ屋敷に戻った。
「美味しかったわねオルガ」
「そうね、アリッサ。エリアスの調味料を使って、料理のレシピも教えているもの」
「さすがアンテナショップね」
「アンテナショップとは、なんでしょうか、オルガ様」
「なんだっけ?エリアス」
「俺が代わりに説明します。口で美味しいと言っても伝わりません。特に調味料や料理はそうなります。そこで試しに販売してもらい、お客の反応を見ることです」
「それはいい考えです、エリアス様」
ノエルさんは感心している。
そこからみんなで他愛の無い話をした。
「それでは、そろそろお風呂に入りましょうか」
「そうねアリッサ。エリアスみんなで入ろうか?」
「な、なにを言っているのですかオルガさん。ノエルさんも居るのですよ?」
「いいじゃないか。別館はこの時間、お客がいないんだから」
「いえ、そういう問題では…」
「あぁ、そうか。エリアスは後でじっくり楽しみたいタイプか」
な、何を言っているのかな?
オルガさん?
俺達は入浴を楽しみ部屋の前まで戻って来た。
「それじゃあ、お休み~」
「おやすみなさい。エリアス君、ノエルさんに優しくね。お手柔らかに」
そう言ってオルガさんとアリッサさんは、自分の部屋に入って行った。
優しくて。
するとノエルさんは、自分の胸辺りで両手をモジモジしている。
「こ、今夜からよろしくお願いします」
こ、こう言うことか!
寝具が無くても、良いと言うのは。
そして今夜は俺と…。
頭一つ背が低いノエルさんを、俺は抱きしめた。
この世界に転生してきて3ヵ月。
現実味がまるでなくて、ゲームの世界に居るようだった。
だから無茶もできた。
でもこれは紛《まぎ》れもない現実だ。
そしてこの人達とこれから俺は生きて行こう。
それには目標をもとう。
この世界で俺にしかできない大きな目標を…。
と、日記に書いておこう。
つけてないけど。
🐈ミャオ~~~~~~~~ン!!
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