【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

想像した事を実現できる創生魔法。現代知識を使い生産チートを目指します。
ジェルミ
ジェルミ

第59話 追々とカレーの肉野菜炒め

公開日時: 2021年12月25日(土) 15:10
文字数:2,450

 朝が来た。

 この世界の人は、夜は灯りの油代が高く節約のため早寝をする。

 そして日の出と共に起きる。


 しかし今朝は寝るのが遅かったからか、みんなまだ起きてこなかった。

 朝食はどうするんだろう?

 このまま別れてもいいが食事くらい出さないと失礼かな?


 ストレージの中を捜したけど、食事の貯蓄はあるが大したものは無い。

 あぁ、そうだ。

 良いものがあった。

 以前、アスケルの森で採って来た香辛料があるのを見つけた。


 幾つか採った香辛料の内クミン、コリアンダー、ターメリックを使うことにした。

 この3つのスパイスは香辛料の匂いは強いが、あまり辛くないのだ。


『創生魔法』でハンドル式の製粉機を創り、ゴリゴリ粉末にしていく。

 そして用意するのはワイルドボアの薄切り肉、玉ねぎ、ニンジン、キャベツ、もやし、サラダ油だ。





 さあ、eaエリアス15分クッキングの始まりだよ~!!


 タラッタ、タタタ、♬タラッタ、タタタ、タタタ、タタタタッタンタタ♫


 今日はいつもより12分長いよ。


 まずはワイルドボアの肉を4cmの長さに切ろう!

 玉ねぎは繊維に沿って薄切り、ニンジンは短冊切り、キャベツは4~5cm真っ角、もやしは根を取り除こう!!


 フライパンにサラダ油を熱したら肉を炒めます。

 豚肉の色が変わったらニンジン、キャベツを加えて炒め、もやしを加えます。

 野菜がしんなりとしてきたら、カレー粉を加え炒め合わせま~す!!


 さあ、これで『カレーの肉野菜炒め』のできあがり~!!

 次回は『オークカレー』だよ、お楽しみに~!!

 



「「 おはようございます!! 」」

 俺はドキッとして後ろを振り向く。

 周りを見るとレストランの厨房に、みんなが起きだし集まっていた。


「エリアス、朝からなに一人芝居をしているのかな?それにこの良い匂いはなに?」

 オルガさんは、鼻をヒクヒクさせている。


「こ、これはカレーと言う香辛料です。みなさんの朝食を作っていたのです」

「まあ、エリアス君て料理もできるのね。凄いわ。それにこの食をそそる匂いはたまらないわ!!」

 アリッサさんも感心している。



「エリアス様、パジャマとタオルケットをお返しいたします。またカゴに入れておけばいいでしょうか?」

 アバンス商会のアイザックさんが聞いてくる。

 いつも思うがなんて腰の低い人なんだ。

 俺みたいな子供相手に敬語を使ってくれる。

 とても好感が持てる人だ。


「そうですね。あぁ、もし良ければお土産に持って帰りますか?」

「えっ?!頂けるのですか?」

「えぇ、どうぞ」

 洗うのが面倒なので、とは言えないしな。


「もらえるの、エリアス君?」

 3人娘が聞いてくる。

「どうぞ、お持ちください」

「嬉しい!!」

「生地が柔らかくて、欲しかったのよ~」

 それぞれ、嬉しそうに折りたたんでいる。


 アリッサさんが、ふう~と何かため息をついたのが聞こえた。

 昨日からどうしたんだろう?

 疲れているのかな?



 俺達は食堂に移動し、みんなにはテーブルに座ってもらった。

 俺は各自の前に置かれた皿に1人ずつ、『カレーの肉野菜炒め』を盛っていった。


「さあ、みなさん。朝食を食べましょう」

 そして各自、手を合わせ食事を始める。


「美味しい~!!」

「な、なんという味なんだ?!」

「こんなに美味しいものは、初めてだ!!」

「こ、この香辛料はどうやって手に入れたのですか、エリアス様?」

 アバンス商会のアイザックさんが食いついてくる。

「アスケルの森に行けば、いくらでもありますよ」


「あぁ、またアスケルの森ですか…」

 アイザックさんは、絶望的な顔をしていた。


「『オークカレー』と言うのは?」

 まだ聞いてくる。そんなに気に入ったのかな?


「スープ状のカレーに、肉や野菜を入れて作ったものです」

「ほう、それは美味しそうですな。それはいつでしょうか?」

「はい?」

「『次回は』とさっき、おっしゃっていたので…」

「そ、それは追々おいおいです…」

「追々ですか…」

「はい、」

 なんて便利なんだ、日本人の相手を傷つけずに断る曖昧トークは。





 アバンス商会アイザックは思った。

 エリアス様は時々、『追々おいおい』と言う言葉を使われる。

 いったいどう言う意味なのだろう?

 エリアス様の国の方言なのか?


 エリアスのスキル【異世界言語】も、日本人独特の曖昧な言葉は訳せない。

 例えば『前向きに検討します』=断りたいけど、断われないからさも、気がある振りをしてその場を体良く繕う事とは訳せない。

 だから『追々おいおい』も『徐々に』とは訳されず、『オイオイ』とそのまま伝わるのであった。


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 そして事態はそれだけではなかった。

 エリアスは『カレーの肉野菜炒め』の匂いが、厨房にこもらない様に換気扇を回して調理をしていた。

 その日の朝は風が少し強く、カレーの匂いは広い範囲に漂っていた。


 この世界の人達の食事は、厨房用品が高価で外食が殆どだ。

 朝の仕事に行く前の朝食の時間、どこからか食をそそる美味しそうな匂いが漂う。

 人々はその匂いに釣られ、匂いの出所を探して歩く。

 そしてたどり着いたのが立派なお屋敷の前だった。


 屋敷の塀の周りには、たくさんの人々が詰めかけていた。


 ここは、どこの貴族様のお屋敷だ?

 いいや、ここは古い屋敷があったはずだ。

 貴族様でもこんな豪華な屋敷には住めないよ。

 もしかしたら新しいレストランか?

 そんなはずは無いと思うが…。

 裏路地で立地条件が悪すぎるぞ。

 今は仕込みの時間なのでは?

 それに看板が無い。

 でも、さっき商人風の人達が出て来たぞ。

 きっと会員制の高い店なんだよ。

 でもレストランなら、一度でいいから食べてみたいな…。

 そうだな、どんなに高くても一生に一度で良いから食べてみたいものだ…。


 その日、繁華街の路地裏に、会員制の高級レストランが出来たと噂が駆け巡った。

 その店の前を通るだけで、嗅いだことのない食をそそる良い匂いがすると。

 どんな料理なのか見てみたいと…。



 将来、アレン領が多彩なカレー料理の発祥の地になるとは誰も思わなかった。

 その食欲をそそる匂いは街中に溢れ、旅人の評判になり食文化の花が開いた。

 アレン領はカレー料理を求める人々で賑わい、活気にあふれた。

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