【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

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ジェルミ
ジェルミ

第118話 アレン領主トバイアス公爵の憂鬱

公開日時: 2022年11月19日(土) 15:10
文字数:2,167

 やってしまった、出遅れた。


 私はアレンの領主、トバイアス・ビクトワール・ドゥメルグ公爵だ。

 焦っていた。

 先日、神託が降りエリアスという青年が、女神ゼクシーの『愛し子』様だと分かったのだ。

 エリアス青年はエリアス・ドラード・セルベルトという、ラストネームとミドルネームを持っていたのだ。


 そして300年ぶりにシャルエル教に、女神ゼクシーの神託が降りた。

 教会の中だけの話だったが、神託が降りた信徒が多く噂はすぐに広がった。


〈〈〈〈〈 神託を授ける!エリアス・ドラード・セルベルトは我が可愛い息子である。何人と言えども干渉、束縛することかなわず。勝手御免とする!これを破りしものには神罰が下るであろう! 〉〉〉〉〉

 これが神託の内容だ。



 これでは手出しができない。

 私には10歳と13歳の娘が二人いるが、すでに他家と婚約が決まっている。

 早まった。



 そして『愛し子』様なら立場は国王より上となる。

 こちらがお伺いを立てる立場になってしまったのだ。

 もう気軽に呼び出せない。

 

 私もこの街アレンの領主。

 挨拶に行かねばなるまい。

 先日の態度を謝らなければならん。


 するとエリアス青年から訪ねて来てくれた。

 先日のことを詫び、許してもらえた。

 

 なんと彼はアスケルの森を開拓したいと言う。

 それが出来れば凄いことになる。


 高位の魔物のおかげで開拓はされていないが、大量の資源が眠ってるはずだ。

『愛し子』様なら魔物など、大したことはないと言うのか?


 アスケルの森はこのアレン領があるジリヤ国と、北東のシェイラ国、南東のラードルフ国の3国に縦にまたがるほどの広さを有する。

 その面積だけみればジリヤ国より広い。


 すでにウォルド領のファイネン公爵は、自国の家紋が入ったメダルをエリアス君に渡していた。

 なんと目ざといのだろう。

 確かファイネン公爵には、10歳くらいの娘が居たはずだ。

 目ざとい彼のことだから…。


 先を読む力のある者だけが生き残れる。

 それが世の中と言う物だ。


 なんとかこの国に居てもらえるような足枷を私も考えねば…。


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 俺達3人は屋敷に戻って来た。

 オルガさんはいったい、何のために付いてきたのだろう?


 アルバンさん達の家に入ると、6人の孤児達は楽しそうに仕事をしていた。

 アルシアさんとアディちゃんと、仲良くなれたようだ。


 でもこの世界ではお風呂に入る施設や習慣がない。

 だから頃合いを見て孤児達に、温泉施設で体を洗ってくるように話した。

 よく見ると孤児達の服は継ぎはぎだらけだ。


 調味料や食べ物に関係ある物を、扱っているから綺麗にしてもらわないと。

 アルシアさんに話して、孤児達6人と服を買いに行かせた。


 服を買って戻ってくると、孤児達はとても喜んでいた。

 それから温泉に入り体も綺麗になった。


 その後は『なごみ亭』で昼ご飯だ。

 5cm真角に木を切り、そこにエリアス商会のロゴの焼印を押して渡してある。

 食券の代わりだ。

 温泉施設『ラウンド・アップ』で働いている人達には全員渡してある。

 月末になると『なごみ亭』の人が、木の食券を請求書代わりに持ってくる。

 俺はその分を払えば良いから楽だ。


 孤児達にも渡し、お昼をこれから毎日食べるように伝えた。

 すると信じられないような顔をして喜んでくれた.

 育ち盛りは食べないと駄目だからね。


 それから数日が経ち孤児達はどんどん仕事を覚えて行った。

 醤油タレやマヨネーズを毎日たくさん作れるようになった。


 孤児達のことはアルバンさんにまかせている。

 給料を聞くと6人分で1日6,000円渡しているそうだ。

 俺が驚いていると、えっ!高かったでしょうか?と俺に聞いてくる。

 逆にあまりにも安くて、驚いただけだけど。


 どうやら聞くと、成人前の子供を雇うところは少ない。

 それに雇っても、とても安いとか。

 

 毎日、施設でお風呂に入りお昼を食べている。

 それで6人分で1日6,000円は、多い方だと言う。

 どれだけ安いんだ、この世界は。


 そしてある日、気付いたことがあった。

 孤児達が風呂敷を持ってきていることに。

 何が入っているんだろう?


 俺は子供達の後を隠れてついて行った。

 すると孤児達は路地に入り、継ぎはぎの服に着替えて出て来た。



 翌朝、孤児達にそのことを聞いた。

 すると孤児達は自分達だけお風呂に入り、服を買ってもらい美味しいものを食べているのは、他の孤児達に気が引けるというのだ。


 それなら連れてくればいい、そう俺は言った。

 孤児達は信じられない顔をして喜んだ。

 

 次の日から12人いる孤児の、残りの6人も屋敷にやってくるようになった。

 しかも12歳以下で赤ちゃんもいる。


 そのためシスターや修道士さんが付き添ってきている。

 そして孤児達はお風呂に入り、服を買い『なごみ亭』でお昼を食べる。

 当然、付き添いのシスターや修道士さんも、お風呂に入りお昼を食べて帰る。

 気が付くと付き添いの人数が増え、作業場にはたくさんの人が居る。


 ん?こんなに雇ったかな?


 エリアス社長、作業場が狭くなってきました。

 そう言われ次の朝、アルバンさんの家の隣に平屋の広い作業場を作っておいた。


 屋敷を訪れた教会からの人達や、アルバンさん家族はとても驚いていた。

 そして醤油タレや『マヨネーズ』が、毎日たくさん作られて行く。


 アルバンさんは毎日リヤカーで、商業ギルドや『なごみ亭』に納品に行っている。

 とても忙しそうだ。


 でもこれでまた、平穏な日々が戻ってきたよね?

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