『女神の羽根』
いつからかは判らない。
そういう名の歌が、数年前からこの街界隈のインターネットを介して広がっていった。
誰の曲なのか、いつ生まれた歌なのか、知る者はいない。
アコースティックギター一本を伴奏に唄うその声は、女神の唄声と評され、聴いた人々の多くを魅了していった。
誰が唄ったかも判らない、たった一曲。
それは奇跡の歌だ。
同じ曲も、同じ声も、同じ歌詞も、存在しない。
ただ、聴く者に感動を与えるだけの、ごく当たり前の歌。
何の権利も、権威も、利益も、傲慢もなく。
歌の持つ本来の姿を、世界中のどんな名曲よりも現していた。
歌の持つ本来の力を、世界中のどんな名曲よりも現していた。
聴きたい者が自由に聴ける。
唄いたい者が自由に唄える。
ただそれだけの、本当に当たり前の歌。
当たり前であることが奇跡であることを証明する歌。
そして
『女神の羽根』
いつしか、その歌を唄った者は
歌の女神ディーヴァと呼ばれるようになった。
0 Prologue END
『Prologue』 BOΦWY GIGS より 1986年
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