連載中 長編 現代世界 / ホラー

魕ガ棲ム嶼

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公開日時:2023年2月3日(金) 18:15更新日時:2023年8月30日(水) 22:22
話数:5文字数:6,801
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あらすじ

 都内アパレル店で働く猿渡基子は、夏休みの連休を利用して兼ねてより気になっていた秘島「藍ヶ島」に一人旅に出る。

 藍ヶ島に着いた基子は、目の前に広がるその雄大な自然に感動した。

 夕方まで村の周りを観光して楽しみ、その日の夜、地元唯一の居酒屋へと繰り出す。

 そして、藤井と言う女から面白い話を聞く。

 

——昔、名主の息子に浅之助という少々気の強い青年がいた。彼にはおつなという幼馴染の美しい恋人がいて、毎日楽しく過ごしていた。

 そんなある日、村の掟によって二人の仲は引き裂かれてしまう。

 怒り狂った浅之助は復讐するべく、七日七晩斧を研ぎ、その斧で島民七人を切り殺し、四人に大怪我を負わせた。

 しかし、最後に押し入った家で不運に襲われる。その家の家主が大事にしていた観音様により、斧が使い物にならなくなってしまった。

 武器を失った浅之助は、追ってくる島民から逃げるも、とうとう追い詰められ、自ら海に身を投げ自殺したという。そしてその後、おつなも浅之助の後を追うように自害した。

 島民は凶悪事件を起こした浅之助の無念と怒りを鎮めるべく「南台所神社」におつなと一緒に二人を祀った。

 浅之助とおつなの仲が良かったことからか、今では縁結びの神様として信仰されている。

 

 翌日、基子は神社に向かう。

 そして、社に着くと不思議な感覚に襲われ意識を失った。

 見慣れない景色の中で気がついた基子は、血塗れになって倒れた男を抱き、泣きながら『浅之助!』と泣き叫んでいた。

 しかし、抱きしめられた男は笑顔で抱きしめ返そうとするが、あえなく力尽きてしまう。

 ふっと目が覚め現実に戻ると、基子の手にはしっかりとその男の温もりが残っていた。