追憶の誓い

~時渡りのペンダント~
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七章 約束の指輪 (アレンルート)

公開日時: 2022年4月28日(木) 03:00
文字数:7,393

 トカゲさんを見送ってから時間はどんどん進んでいき、気が付いたら牢屋の中で朝を迎えていた。

 

「おい、出ろ」

 

「「「……」」」

 

牢屋の鍵が外され中に入ってきた兵士に私達は連れて行かれる。きっと処刑場へと向かっているのだろう。怖くないと言えば嘘になるがそれを兵士達に悟られないようにと胸を張ってごまかす。

 

処刑場となる大きな広場には民衆が集まっていてぐるりと処刑台の周りを囲んでいた。

 

「皆の者聞くがいい。こ奴等は我に刃向かい暗躍しようと企んだ者達だ。今後同じようなことが起こらぬよう。見せしめのために本日公開処刑を執り行うこととなった。我に刃向かった者がどの様な末路を辿るのかしかとその目に焼き付けて帰るがいい」

 

物見台の上にやって来た帝王が偉そうに宣言する。私達は十字に組まれた木に体を縛り付けられた。

 

「冥途の土産に良いものを見せてやろう」

 

「「っ」」

 

「……すまない」

 

帝王が言うと兵士が何かをこちらに投げつけてくる。物みたいに扱われたそれが人であることを理解するのと同時にロウさんであると気付いた私は悲しさと怒りに心がかき乱される。

 

「貴様等もすぐにあの世に送ってやる。処刑を始めよ」

 

帝王に対して許せないという気持ちを抱いていると彼がそう宣言し私達の前に剣を抜き放った兵士達が近寄って来る。とっさに目を閉ざしその時を覚悟した。

 

「あれ?」

 

でも思っていた衝撃はいつまで経ってもやってこなくて代わりに耳元で縄が切れる音がし驚いて目を開ける。

 

「何をしておる? 我の命令が聞こえぬか! その者達を処刑しろといったはずだ」

 

「あいにくここで死ぬべき者はこの三人ではない。帝王、覚悟するがいい」

 

「ジャスティンさん」

 

苛立たし気な帝王の言葉に堂々とした態度で兵士の一人が答える。その声がよく知っている人物のもので私は安堵と共に緊張の糸が少しだけほぐれた。

 

「もう大丈夫だ。しかし、間に合ってよかった」

 

「僕達が来たからもう安心していいよ」

 

私の隣にいる兵士がそう囁くとジュディスさんの側にいる兵が兜を捨て去り安心させるように話す。

 

「フィアナ、怖かったでしょ。もう大丈夫よ」

 

アンナさんが駆け寄って来ると私に抱きついてくる。その反動で一瞬よろけてしまったがしっかりと受け止め返した。

 

「お待たせ、こっちも成功したわ」

 

アイリスさんの声が聞こえてくると見知らぬ二人の女性と一緒にアンジュさんやロバートさんやドロシーさんと一緒にこちらに向かって来ていた。あの女性二人はリックさんのお母さんとお姉さんよね。救出も成功したってことね。

 

「二人ともこいつを受け取れ!」

 

ハンスさんが二つの剣をこちらに放り投げる。アルスさんとジュディスさんがしっかりとそれを受け止めた。

 

「このように我を侮辱しおって許せぬ……どうした、そ奴等を全員捕らえよ」

 

帝王の言葉に呆気に取られていた兵士達が動き出す。この場が戦場と化すと察した民衆は悲鳴を上げながら逃げ惑う。

 

「数が多いな」

 

「ここは私に任せて下さい」

 

渋い顔をするジャスティンさんに私は言った。今こそあれを使う時よね。

 

「一体何をする気なんだ?」

 

「まぁ、見ていてください。それ」

 

ロバートさんがこの状況で何をいうのだと言いたげに聞いてきたが、私は気にせず懐に隠しておいた小瓶を取り出し兵士達目がけて投げつける。

 

瓶の中身が割れ風向きにより全体に広がると兵士達は地面に崩れ落ち眠りこける。強力な睡眠薬だとは聞いていたけれどここまで効くとは。ドロシーさん有り難う。

 

「睡眠薬です。かなり強力に作ってある物なので直ぐには目を覚ませません」

 

「フィアナ有り難う。さあ、帝王覚悟するがいい」

 

私へとアルスさんがお礼を述べるときつい眼差しで帝王を睨みやり宣言する。

 

「ふん。その程度で勝った気になるとは愚かな。貴様等なんぞアレを使えばいちころよ」

 

「なんか、やばそうだぞ」

 

帝王が言うと地面一面に赤黒い魔法陣が展開される。その様子にルークさんが冷や汗を流す。

 

「アンナさん。私が以前お伝えしたこと覚えていますか」

 

「え、えぇ。覚えているわよ。古代の封印の魔法の話よね」

 

私の言葉に突然の事で一瞬不思議そうな顔をしたが頷いてくれる。時間がない急いでそれをやってもらわなくては。

 

「すぐにお願いします」

 

「わ、私に古代の封印の魔法の舞を踊れというの? そんな、いきなりなんてできっこないわ」

 

お願いする私にお母さんは無理だと言い張る。

 

「大丈夫です。アンナさんにしかできません。お願い、私を信じて」

 

「…………貴女の言葉信じるわ。私やってみる」

 

しばらく私の瞳を見詰めていたアンナさんが小さく頷くと前へと駆けだす。そうして一呼吸おくと踊りながら魔法陣を描き出していく。その姿は姉と同じで、やはり親子だなって思いながら自然と涙がこぼれていた。

 

「ぐぅ……我の身体から魔力がなくなっていく? お、おのれ……」

 

帝王が喚くと力つき物見台から落っこちてくる。こうして長らく続いた戦争は終わりを迎え、新たな歴史が始まりを迎える事となった。こうして私が過去に飛びお父さんとお母さんを助けた事がゆくゆくは未来で女王の野望を止める事に結びつく。つまり未来まで繋がる伝説が誕生したことになるのだ。

 

点と線が繋がる時全ての歯車がかみ合うように過去から未来までの流れが完了する。今だから分った事だけれど、未来の私が過去の自分を助ける事になるとは当時は考えもつかなかったな。

 

ともかくこうしてつながった未来へと向けて皆が歩み始め、英雄伝説は語り継がれていくこととなった。

 

その後、アルスさん事カイルさんが路頭に迷うこととなってしまった民達を救うために新たにザァルブルブ国を設立し王となると、隣国オルドゥラの国王にジュディスさん事ライディンさんが即位する。

 

一緒に旅をしたメンバーもそれぞれ新しい人生を歩むこととなった。

 

(さて、これで私も少しの間はゆっくりできるよね。戻ろう私がいるべき時代に……アレンさんの下へと)

 

私はペンダントを握りしめ未来へと戻って行った。


 一度未来に戻りアレンさんと再会を果たした後も定期的に過去に飛び皆に会い国造りを手伝っていた私はある日ショックな出来事を体験してから行くことを止めていた。

 

「お願いがあるんです。フィアナさんにしか頼めません。もう一度だけ過去に行ってはもらえませんか」

 

「アレンさんがそうして欲しいと願うのであれば……でも、どうして?」

 

「それを今言うことはできません。でもお父様に会ってください。そうすれば分かりますよ」

 

寂しそうな顔で話された言葉に私は理解できなかったけれど、でも彼がもう一度過去に行って欲しいと願うのならばその通りにしよう。私はあの日から一度も使うことがなくなった時渡のペンダントへと手を伸ばす。

 

「フィアナ、もう二度とここには来てくれないかと思っていたよ」

 

「私も来るつもりはなかったです。でも、ある人から頼まれて。それでカイルさんに会いに来たんです」

 

ザールブルブと国名が変わってから大分経った頃の王国。すっかり国王姿が様になった成長したカイルさんの下を訪ねる。アレンさんは彼に会えばすべてわかるって言っていたけれど一体どういう事だろう。

 

「実は、フィアナに頼みたい事があったんだ。息子達の、フレイルとアレクセイのことだ。アントリオはアレクセイの事ばかり可愛がりフレイルの事を嫌っているようなんだ。勿論それは勘違いであってほしいと願うが。アントリオはどうやらフレイルとアレクセイを会わせないようにしているらしく、フレイルはそのせいかいつも一人で母親に愛情を注がれるアレクセイの事を嫌っているようなんだ。このままでは兄弟仲が悪くなる一方だ。俺は二人にはいつまでも仲睦まじい兄弟でいてもらいたい。ただそれだけを願うが、このままだと最悪な事態になりそうなんだ。それで、君に頼みたい。王子達の心を癒し二人の仲を取り持ってもらいたいのだ」

 

「分かりました。私に任せて下さい。私もアレンさんとフレンさんには仲良くいてもらいたいです。私にやれることをやらせてください」

 

語られた内容に私は驚いてしまった。だって今のフレンさんとアレンさんの仲の良さからは考えられない事だったから。でも、あの女王様ならやりかねないよな。と思い私に二人の仲を取り持つことが出来るならと了承する。

 

それから私は大切な客人という扱いで王宮に通うこととなった。フレンさんとアレンさんに会って話を聞きながら何とか二人の本音を聞き出し仲良くなってもらわないとね。

 

女王様に目を付けられるのではないかと心配もしたが、国王様が機転を利かせてくれてアレンさんと私だけで会えるように彼女を呼び出し彼が一人になる時間を作ってくれた。

 

(さあ、頑張ろう)

 

おもちゃで遊んでいるアレンさんの後姿を見詰めながら私は意気込む。

 

「ぅ……くすん」

 

「あれ?」

 

楽しく遊んでいるのかと思いきやすすり泣きが聞こえてきて私は驚く。もしかして泣いているの?

 

「どうして泣いているのですか?」

 

「っ!?」

 

いきなり話しかけられ人がいた事に驚く彼は途端に俯いてしまった。引っ込み思案だって聞いていたけれど知らない人から声をかけられもじもじしている姿に私は申し訳ないがなごんでしまった。

 

「王子様、始めまして。私は怪しい人ではないので安心して下さい。私は国王様の友人です」

 

「お父様の?」

 

私の言葉にアレンさんが興味を持ってくれたようでこちらに顔を向けてくれる。

 

「はい、王子様とお話がしたくて今日はここに来ました」

 

「ぼくと?」

 

私の言葉に彼が驚く。確か女王様はアレンさんを可愛がっているため人を近づけさせないようにしてるって聞いたな。

 

「ぼくももっといろんな人とお話したいと思っていたんです。でも、お母様が周りの人は敵だから話しちゃダメだって、ねぇ、お姉さんは敵? それとも……」

 

「私は王子様の味方ですよ。だからお話を聞かせてはもらえませんか?」

 

今も昔も私は変わらず貴方の味方だよ。なんて言えるはずもないので当たり障りのない言葉を伝える。

 

「それで、どうして泣いていたのですか?」

 

「……さっきお兄様に突き倒されたんです。ぼくはお兄様と一緒に遊びたかっただけなのに。お兄様、ぼくのことが嫌いなのかな? だからぼくにいつもひどいこというのかな」

 

涙を流しながら言った言葉に私は彼を優しく抱きしめる。それに驚き泣き止んだアレンさんの頭を撫ぜながら私は口を開いた。

 

「フレン王子がアレンさんの事を嫌っているなんてことはありません。ただ、自分でもどうしたら良いのか分からなくて、それであなたに酷い事をしてしまうんだと思うんです。でも、本当はアレン王子と仲良くしたいと思っていると思います」

 

「ぼく、ね。お母様の期待に応えるのが怖いんだ。お母様の期待に応えられなかった時お兄様の様に突き放されるんじゃないかって思ったら怖くて。だけど、自由に生きられるお兄様が羨ましいと思うこともある。そうすると心の中がもやもやしてこの気持ちの正体が分からなくてぼく、ぼく。どうすればいいのか分からなくなるんだ」

 

優しくあやしていると彼は小さな心に溜め込んだ思いをぶちまけ泣き出す。

 

「アレン王子は、幼いのによく頑張っています。女王様の気持ちに応えようと努力して、それが出来なかったらと不安になりながらも頑張ってきて。でも、それはフレン王子も同じなんです。お母さんに見てもらいたくて勉強も魔法も剣術もいろんなことを頑張ってきました。だけど、女王様がそんな努力しているフレン王子を認めてあげることがなく、見るのはいつも貴方の事だけ。だからアレン王子に嫉妬してその苛々をぶつけてしまったんだと思うんです。でもね、お兄さんはあなたの事本当はとても大事に思っていると思います。ですから、アレン王子がフレン王子の唯一の味方になってあげてください。きっと一人ぼっちで寂しい思いをしているのはフレン王子も同じはずですから」

 

「うん、わかりました。ぼくお兄様と仲良くしたい。もっとお兄様と一緒に遊びたい。だから、お兄様のこと好きでいたいんです」

 

「アレン王子、有難う御座います。きっとその気持ちはフレン王子にもちゃんと伝わりますよ」

 

心の内をぶちまけ私の腕の中で泣き続ける彼をあやし続けていると落ち着いてきたアレン王子が急に頬を赤らめ離れる。

 

「あ、あの、涙でお洋服を濡らしてしまいごめんなさい」

 

「気にしなくて大丈夫ですよ。私でよければまたいつでも受け止めてあげます」

 

如何して謝られているのか分からなかったけれどそう言って笑顔を意識した。

 

「そろそろ行かないと。また、お話聞かせて頂けますか?」

 

「また話に来てください。ぼく、待っています」

 

女王を引き留めるのもこれ以上は難しいだろう。メイド長であるアンジュさんが部屋に入ってきた姿に私はそう悟りアレンさんに声をかけた。これが最初の出会い。そこから私は一週間かけて彼に会いに行きながらフレンさんとアレンさんを仲良くさせるための対話を続けることとなる。

 

「あ、お姉さん。今日も来てくださったんですね」

 

「こんにちは、アレン王子。ずいぶんと明るくなりましたね」

 

アレンさんの下へと向かうと彼は私を見るなり駆け寄って来てくれた。初めて会った時と比べたら大分笑顔が増えてきたように思う。

 

「お姉さんに会うのが楽しみで……この前お兄様がぼくにお花をくれたんです。最近お兄様がぼくに優しくしてくれるようになったんです。お母様に気付かれないように二人でこっそり会うのも楽しいですよ」

 

「そう、フレン王子と仲良くできているようで安心しました」

 

笑顔で話してくるアレンさんに私も嬉しくて自然と口角があがっていく。

 

「あの、お姉さん。その指輪って、もしかしてどなたか大切な方から頂いたものなのでしょうか?」

 

「……これはね、私の大切な人から貰った物なの。お守り代わりにいつも身に着けてきた」

 

私が薬指にはめている台座だけの指輪を見詰め彼が尋ねてきたので説明する。その時とても悲しそうな顔をしたように見えたのだけれど気のせいかな?

 

「……アレン王子。この指輪を貴方に託します。また会えるための約束です。これをどうか大切に持っていてくださいね」

 

「どうして、急にそんな事を言うのですか? それは、とても大切な方から頂いた物でしょう。なのにぼくに譲るなんて……」

 

戸惑っているアレンさんの手の平に指輪を置くと私はお別れを伝えなくてはと口を開く。

 

「私、ここには用事があって尋ねてきていたのです。でも、その用事ももう終わります。そうしたらもうここには来れなくなるの。だから、最後にアレンさんの顔を見ておきたいと思い今日ここに来たんです」

 

「どこか遠くに行ってしまうのですか? どうして……」

 

幼い彼には到底理解できない事だろう。でも、私はカイルさんに頼まれてフレン王子とアレン王子の仲を取り持つことになった。もう私がいなくても二人は大丈夫だ。そうなったのだからここにこれ以上居続けることはできない。

 

「アレン王子、どうかその指輪をずっと大切に持っていてください。そうすれば必ずまた、会えますから」

 

「……分かりました。ぼく、この指輪を大切にします。お母様にだって見せません。ずっとずっと誰かにとられないようにかくして持っています」

 

お願いすると彼が涙を堪えた瞳で私を見やり大きく頷く。

 

「有り難う御座います」

 

きっとアレンさんの瞳にたまった雫を拭ってしまったら動けなくなってしまう。そう思い振り切るように立ち上がると扉へと向けてまっすぐ歩いて行った。

 

「アレンさん、ずいぶんと長いこと待たせてしまったね。もうすぐ貴方の下へ帰ります」

 

私は独り言を呟くと寂しさを振り切るようにカイルさんの下へと向かい、お別れを告げて未来へと戻る。

 

「ふぅ……」

 

「お帰りなさい。フィアナ、アレン王子から伝言よ。噴水広場で貴女を待っていますだって」

 

リビングへと足を着地させた途端溜息が零れた。そんな私に近寄ってきた姉が言伝を教えてくれて「行くんでしょ?」と言いたげな顔で見てくる。

 

「ちょっと行ってくるね」

 

「久々の再会なんだからゆっくり会ってきなさい」

 

私の答えなんて決まっているよ。急いで出掛ける準備をする私の背へと姉が声をかけ見送ってくれた。アレンさん待っていて、すぐに会いに行きます。

 

全ての事を終えた私は噴水広場にいるという彼の姿を探す。アレンさんの後姿をすぐに見つけ駆け寄った。

 

「アレンさん!」

 

「フィアナさん」

 

その胸に飛び込む私をしっかりと抱き留めてくれた彼はちょっと会わなかっただけでずいぶんと大きく見えて……私は少しだけ背伸びしてアレンさんと瞳を合わせる。

 

「もう、用事は終わったのですね。お疲れ様です」

 

「アレンさんが言っていたことようやく分かりました。フレンさんとアレンさんの仲を私が取り持ったから今のお二人の関係があるのですね」

 

微笑む彼に私は前に言われた言葉の意味がようやく分かったと伝える。それにアレンさんが嬉しそうな顔をした。

 

「あの時貴女に出会えていなかったらぼくとお兄様の関係は修正ができないほどひどい状況になっていたことでしょう。幼いぼく達の心を救い、ぼく達兄弟を助けて下さったこと感謝しております」

 

「そんな、私はただ二人を助けたいと思っただけです。私も二人には仲の良い兄弟でいてもらいたかったので」

 

彼の言葉に私は慌てて首を振って答える。感謝されたくてやった事なんかじゃないから。

 

「分かっていますよ。貴女はそういう人ですから。フィアナさん……これを受け取って頂けますか?」

 

「これは……」

 

私を離すとアレンさんはポケットから何かを取り出し差し出してくる。

 

「貴女の用事が全て終わった時に指輪を差し上げるといった言葉覚えていますか?」

 

「覚えています。つまり、この指輪は……」

 

ダイヤモンドが煌く指輪が指にはめられるのを見ながら私の顔は熱が一気に上がって心臓が激しく脈打つ。

 

「フィアナさん。ぼくの妻として、ぼくの隣にいて下さい」

 

「はい!」

 

婚約指輪にそっとキスを落とした彼がそう言って微笑む。私は嬉しくて即返事をする。

 

この後姉や周りの人達に私達が婚約したことを伝えると、なんとそのままの流れで結婚式の日取りまで決められてしまう。

 

まだ心の準備も何もできていないけれど、私やアレンさんよりも周りが盛り上がりすぎて二人して笑ったのは良い思い出だ。

 

こうして私は彼と結婚しザールブルブの王宮で暮らすこととなった。

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