追憶の誓い

~時渡りのペンダント~
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五章 急展開 (共通ルート ルキアルート)

公開日時: 2022年3月17日(木) 03:00
文字数:4,069

 王国魔法研究所へと来ると私達はヒルダさんに会いに向かう。フレンさんは変装していてルキアさんも王国騎士の格好では目立ってしまうので私服で一緒に来てもらっている。

 

「あれ、ティア、フィアナ……こんなところに何しに来たの?」

 

「え、レオンさん?」

 

受付でヒルダさんを待っていると誰かに声をかけられ振り返ると不思議そうな顔で立っているレオンさんがいた。

 

「レオンさんこそこんなところに何しに?」

 

「オレはちょっと用事が……じゃなくて観光してたらすんごく気になる施設があったから立ち寄ったの」

 

何か今言い直していたけど確かに観光するのには気になるところよね。私だって王国魔法研究所の中を見て見たいって思うもの。

 

「お、お待たせしました……って、なんであんたも一緒にいんのよ」

 

「ちょ、ちょっと……し~っ、し~っ! この子達は俺の事観光できてる旅人って思ってるんだから変な言動しないで」

 

レオンさんを見た途端ヒルダさんが半眼になり言う。レオンさんが彼女に近寄り何か耳打ちしていたけれどよく聞こえなかった。

 

「そ、それでわたしに御用とは……一体なんでしょうか?」

 

「あ、あの。今日は私達が用事があるのではなくてこの人がお聞きしたい事があるということで」

 

ヒルダさんの言葉に姉が言うと隣に立つフレンさんへと視線を向ける。

 

「あんたはザールブルブの魔法使いだろう。あんたなら何か知っていることはないかと思って……」

 

「え……っ! あ、貴方は」

 

「っ!? あんたなんでここに……」

 

フレンさんがわざと帽子とストールを取り顔を晒すとヒルダさんとレオンさんが驚く。

 

「ん? 俺の顔がどうかしたか……それとも、あんた達は俺の顔に見覚えでも」

 

「……生きていたってことか。あんた自らこっちに来てくれるなんてね」

 

彼が鎌をかけるとレオンさんが冷たく鋭い目でフレンさんを見やり低い声で言う。なんでか分からないけれど体が震える。こんな怖い目をするレオンさん初めて見た……ルキアさんはヒルダさんが怪しいって言っていたけどまさか、レオンさんも関係者?

 

「ち、ちょっと待ちなさい。ここで問題を起こさないで……それに、ここにはフィアナが……っ!」

 

ヒルダさんの言葉は途中から聞こえなかったけれど彼女はとっさに右手を突き出す。すると魔法陣が現れレオンさんとヒルダさんの姿は消えていた。

 

「ち、逃げられたか……」

 

ルキアさんが何時でも捕まえられるようにと身構えていたが逃げられてしまった為悔しそうに呟く。

 

「転移魔法だろう。もうこの辺りにはいないと思う」

 

「とにかく、先手は打った。後は相手の出方を待つだけだ。オレちょっと宮殿に戻る。お前達は一度家に帰れ」

 

「何をする気なの?」

 

フレンさんの言葉にルキアさんが話すとお城に行くという。姉が驚いて尋ねた。

 

「味方は多い方が良いだろう。って、ことで頼んでみるのさ」

 

「え?」

 

一体ルキアさんは何を言っているのだろう。国を揺るがす大きな陰謀を前に助けを求めて手伝ってくれる人が他にもいるってこと? そしてその人は信頼できる人ってことだよね。考えられる人は一人くらいしかいないけれど、でもそんな簡単に手伝ってくれるのだろうか?

 

とにかく家に帰れと言われたので私達は自宅へと戻り作戦会議をする。こちらから接触した以上二人がフレンさんの命を狙って襲ってくる可能性がある。そこを待ち伏せし彼女達を捕まえて黒幕を暴くということになった。

 

「お待たせ、助っ人連れて来たぞ」

 

「味方ってルシアの事だったのね」

 

数分後宮殿に行っていたルキアさんが神妙な面持ちのルシアさんを連れてやって来た。

 

「ルキアから話は聞いた。大変な事になっているようだな。お前の命を狙う者達。俺の考えでは内部の者の仕業だろう。お前を殺し政権を手に入れようと企む輩がいるということだ」

 

「あぁ。それは俺もだいたいそうじゃないかと思っていた。黒幕はザールブルブの国内にいる。それが誰であったとしても俺は今回の事を許すことはできない。国を揺るがし混乱におとしめ政権を奪おうとする者達を必ずやとらえて見せる」

 

何やら難しいお話を始めた二人から私は意識を外す。だって聞いていたって分からないんだもの。

 

「フィアナ、疲れた顔してるけど大丈夫か?」

 

「うん。大丈夫だよ。一気に色んなことが起こってちょっと驚いているだけ。まさかレオンさんもフレンさんの命を狙う黒幕と繫がっていたなんて……それにあんなにおとなしそうなヒルダさんが陰謀に加担しているだなんてどうして……」

 

「どんな信じられないような事実であれそれを受け止めなくちゃならない。フィアナは優しいから二人の事を信じたいんだろうけど、でも人間は腹の内ちじゃ何を考えてるかなんてわからないんだ」

 

「ルキアさん?」

 

どうしたのだろう。ルキアさんはまるで裏切られた過去でもあるかのように話す。人を信じられなくなるようなそんな経験をしたことがあるのだろうか?

 

これ以上の事は踏み込んではいけないような気がして私は黙り込む。

 

それからルキアさんとルシアさんにも作戦を話して私達はいつでも二人が襲ってきてもいいように身構える。

 

だけど夜になっても一向に現れる気配はなく仕方ないので私達は順番に仮眠をとりながら昼夜問わず警戒を続ける事となった。

 

*****

 

≪オルドラ王国の路地裏≫ (共通ルート 分岐点)

 

「ちょっと、せっかく王子が自らオレ達の前に現れたってのになんで逃げたの」

 

「あの場にはフィアナ達がいたのよ。巻き込むわけにはいかないじゃないの」

 

唇を尖らせ言い放つレオンへとヒルダが答える。

 

「へ~。あんたも人の子ってわけか。関係ないあの子達を巻き込みたくなかったってこと」

 

「あ、あんただってあの子達を巻き込みたいとは思っていないでしょ。それより……どうしてあの子達王子と一緒にいたのかしら?」

 

彼の言葉に彼女は答えると首をひねる。

 

「王子と関わり有るとは思えないけど……って、あっ」

 

「何? 何か思い当たる事でもあったの」

 

レオンが何かを思い出した様子で声を漏らすとヒルダが彼を見上げて尋ねる。

 

「彼女達がヒルダに聞いてきた言葉だよ。魔法の失敗で動物に姿を変えられてしまった人を戻す方法を知らないかって話……何でそんなこと聞くんだろうって思っていたけどそういうことだったんだな」

 

「それはわたしも気になっていたのよね。情報料だって決して安くはないのにどうしても知りたがるなんて……っ! ま、まさか、そういうこと」

 

レオンの言葉に彼女も不思議だと思っていたというとある事実に行き当たりはっとした顔をする。

 

「あの人が王子にかけた魔法が失敗して動物に姿が変わってしまっていたんだ。そりゃどこを探しても見つかるはずもないし、探知魔法に反応が現れるはずもない。オレが探し回ったって見つからなかったのもそういうことだったんだ」

 

「……」

 

彼の言葉を聞きながら考えこむように俯くヒルダ。

 

「これからどうする」

 

「王子を見つけた以上は殺すしかないわ。それがあの人の命令だもの……でも、王子の側にはあの子達がいる」

 

「彼女達を巻き込まず王子だけ消す方法あるのか?」

 

悩む彼女へと彼が尋ねるとそれに答える。その言葉にレオンがさらに問いかけた。

 

「方法は、なくはなくてよ。ちょっと耳を貸しなさい」

 

「! ……ふ~ん。それなら確かに上手くいくかもしれないな」

 

ヒルダが耳打ちして話した言葉に驚くもにやりと笑い了承する。こうして二人は作戦を実行する為に町へと繰り出していった。

 

*****

 

 あれから一日たってもヒルダさんもレオンさんも現れず仕方ないので私達は戸締りをしてから作戦会議をする事となった。

 

「ルキアさん二階の戸締り終わったよ」

 

「お、そんじゃ後は玄関だけだな。フィアナ一緒に頼むわ」

 

二階の戸締りを終えて降りてきた私はルキアさんと出会う。彼の言葉に頷き二人で玄関まで向かった。

 

「あれ、何の音だろう?」

 

「な、なんだ? 何かがものすごいスピードでこっちに突っ込んでくるぞ」

 

扉の外から聞こえた音に不思議に思いそれを開けて様子を見ると、ルキアさんが驚き目を丸くする。

 

「う、うわ! フィアナすぐにドア閉めろ」

 

「う、うん」

 

私達の見た光景はものすごい速さで突っ込んでくる小動物達の姿で慌てて扉を閉めて押さえ込む。でもなんで動物達が家に突っ込んでくるの?

 

「どうした?」

 

「大丈夫?」

 

「悲鳴が聞こえたが何かあったのか」

 

フレンさん達も悲鳴を聞きつけ駆けつけてきた。私と彼は扉がこじ開けられないよう必死に押さえ込む。

 

「何か分かんないけど小動物達がこの家に押し寄せてきてるんだよ」

 

「え?」

 

扉の外からは爪でひっかいている音が聞こえこのままではドアが壊れてしまうのではないかと不安になる。

 

「俺がおとなしくさせる。二人はちょっと離れてろ」

 

「「……」」

 

フレンさんの言葉に私達は頷き合い扉から離れる。そして彼がドアを開け放った途端イヌやネコやうさぎやイタチありとあらゆる小動物達がどっと押し寄せてきた。

 

「っ!」

 

部屋中がめちゃくちゃになるのではと思った瞬間淡い光が現れる。すると次の瞬間あれだけ押し寄せてきていた動物達がおとなしくなっていた。

 

「なんで動物達が押し寄せてきたりなんかしたのかしら?」

 

「さぁな。……にしてもこいつら可愛いよな」

 

姉の言葉にルキアさんが答えると近くにいたネコの頭を撫ぜる。もう、こんな時でも動物好きは変わらないようですぐに撫ぜたがるんだから……あれ、あのうさぎ何だか様子がおかしいような?

 

一匹のうさぎがひょこひょこと動きフレンさんに近寄っていく。何だかわからないけれどとっさに彼の前へと飛び込んだ。

 

「フレンさん!」

 

「フィアナ?」

 

フレンさんを突き飛ばした私に彼が驚いたがそれと同時にうさぎが持っていた小瓶が私目がけて放り込まれる。

 

「っ……ゴホゴホ、な、なに? 変な臭い」

 

薬品が私の顔へと被せられその強烈な臭いに私はむせかえる。それとともに歪む視界と体の感覚がなくなってフラフラと足がおぼつかなくなる。強烈な睡魔に襲われ私はその場に倒れ込んだ。

 

「っ……フィアナ!」

 

ルキアさんが叫んでこちらに駆け込んでくる姿を最後に私の意識は闇の中へと落ちていった。

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