追憶の誓い

~時渡りのペンダント~
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カーネスルート

三章 王国魔法研究所 (共通ルート 分岐点)

公開日時: 2022年4月4日(月) 03:00
文字数:5,939

 王国魔法研究所でフレンさんを元に戻す方法を聞いて来て試したのだけれど結局元に戻れなくて薬を買うこととなったのだが、その金額がなんと18000コールもかかるらしい。

 

それで姉とフレンさんは広場へと出かけ踊りを披露してお金を稼いでいる。私はというと姉に無理だと言われ家で留守番することとなったのだが……

 

「お姉ちゃんたらいつまでも私の事を何もできない貧弱な子だと思ってるんだから。私だって昔と違って元気になったもん。お仕事するくらい私だってできるよ」

 

大きな声で愚痴をこぼすも誰もいない空間で言うだけ虚しくて、せめて気分転換にでもと思い久々にルチアさんに会いに行こうと雑貨屋さんへと向かった。

 

「いらっしゃい。フィアナ久しぶりね」

 

「うん。最近忙しくてなかなか顔出しできなくてごめんね」

 

私に気付いたルチアさんが笑顔で出迎えてくれる。それに私は返事をすると謝った。フレンさんを元に戻す事ばかりに気を取られていて最近ここに顔出しできてなかったもんね。

 

「本当にティアもフィアナも最近来なくて少し寂しい思いをしていたわよ。これからはたまにでいいから顔出ししてね」

 

「うん、そうするね」

 

小さく笑いながら彼女が言った言葉に私は答える。姉にも後でルチアさんが会いたがっていたと伝えておかないとね。

 

「まぁ、犬を飼ってから大変なのだろうけれど、何か困った事とかあればいつでも言ってね。わたしで手伝えることがあれば何でもするわよ」

 

「……」

 

彼女の言葉に私はそう言えば姉がよくここでお店のお手伝いをしていたなということを思い出していた。姉にやれるのだから私だってできるかもしれない。

 

「困っているっていうか、今まさに困った事になってるんだよ」

 

「まぁ……そうなの? いったい何に困ってるの。わたしでよければ話を聞くわよ」

 

私の言葉にルチアさんが驚いたものの相談に乗ってくれるといった感じで微笑む。

 

「実は犬を飼い始めて何かとお金が必要になってね。それで私もお姉ちゃんのお手伝いがしたいと思って、それで雑貨屋さんのお手伝いをさせてもらえないかなって」

 

「それってフィアナが家で働きたいってこと? だ、だめよそんな事。雑貨屋のお仕事って言っても楽なものじゃないのよ。もし、働いてまた病気にでもなって寝込むこととなったらどうするの? 貴女が働かなくてもティアがお仕事すればなんとかなるでしょ。それにもしどうしてもお金が必要ならばわたし達も協力するから」

 

私の言葉にルチアさんが少し説教するかのような口調で話す。ルチアさんも姉と同じで私には無理だって言うんだね。本当に過保護すぎてこういう時困っちゃうよ。

 

「分かってもらえるわよね?」

 

「……分かった。私そろそろ市場に買い物に行かないと。また遊びに来るね」

 

これ以上話しても聞いてもらえそうになため私は当たり障りない言葉で終わらせると店を後にする。

 

「はぁ~。……ルチアさんのお店で働ければ一番早いと思ったのにな」

 

こうなっては他にお仕事を探すしかなさそうだ。

 

「どうしようかな……」

 

今いるのは大通り。ここからどこに向かえば正解なのかを考える。

 

「……市場に行ってみよう。そこならお店もいっぱいあるし、お仕事を探しているところもあるかもしれないものね」

 

私は答えを出すと市場へと向けて歩き出した。

 

「市場にきたはいいものの、何処からどうお仕事を探すべきか……」

 

「そこのお嬢さん。何かお困りですか?」

 

私が考え込んでいると誰かに声をかけられる。そちらを見ると柔和な微笑みを浮かべたカーネスさんが立っていた。

 

「あ、カーネスさん。こんにちは、この前は有り難う御座います」

 

「いいえ、お役に立てたようで良かったです」

 

私の言葉に彼は笑顔を崩さずにそう答える。そうだ、この前カーネスさんお仕事をしてくれそうな女性を探してるって言っていたな。だめもとで一度聞いてみよう。

 

「そういえば、お仕事をしてくれそうな女性はもう見つかったのですか?」

 

「それが、なかなか条件に合う方が見つからず困っているんです」

 

まだ見つかっていないのね。それならば……

 

「あの、実は私お仕事を探していて、それで条件に当てはまらないかもしれませんが、そのお仕事もし私に出来るならやらせてもらえませんか?」

 

「う~ん……」

 

私は必死にお願いしてみる。カーネスさんは数秒考えこむように黙る。

 

「……まぁ、いいでしょう。私のほうから依頼主に話をしてみましょう」

 

「有り難う御座います!」

 

にこりと微笑み彼が了承してくれた。私は心からのお礼の言葉を述べるとカーネスさんについて依頼主の所へと向かう。

 

「カーネス。俺は仕事をしてくれそうな大人の女性を探してほしいと頼んだはずだが?」

 

「確かに彼女はまだ幼いですが、貴方の依頼内容では容姿がよくしっかりとしていて愛想がよく笑顔の素敵な女性をということでした。まさに彼女はその依頼内容にぴったりだと思いますがね」

 

お店の中へと入っていくと依頼主である店主が難しい顔でぼやく。それに彼が笑顔で受け答えていた。

 

「まぁ……確かに容姿はよさそうではあるが」

 

「一度試しに彼女を雇ってみてください。きっと貴方の要望通りに応えてくれますよ」

 

考え込む依頼主へとカーネスさんがそう提案する。

 

「分かった。それじゃあ一つ試しに雇ってみるか。嬢ちゃんにはこのお店の呼び込みをしてもらいたい。店の前に立ってお客さんを呼び込んでくれればそれでいい」

 

「分かりました」

 

店主の言葉に私は頷くと早速お店の従業員の服を借りて店の前へと立ち呼び込みをする。

 

そうして夕方になるまでお仕事をすると店主に呼ばれて私はお店の中へと戻った。

 

「いや~。あんたのおかげで開店以来初めて大勢のお客が来てくれたよ。有り難う。これは今日の分の給金だ。少し多めに入れておいたぜ」

 

「有り難う御座います」

 

上機嫌な様子の店主から人生で初めてのお給料袋を貰う。私は嬉しくてその気持ちのままお礼を述べた。

 

「また働きたいと思ったらいつでも歓迎するぜ。そうだなあと二歳年上になってからならアルバイトで雇うこともできるぞ」

 

「考えておきます」

 

彼の言葉に私は返事をするとお店を後にする。早くこのお金を姉に渡さないと。でもその前に……

 

私はカーネスさんの姿を探す。この辺りにはいないみたいだ。もしかしたらまだ市場にいるかもしれない。そう考え私はそちらに向けて歩き出した。

 

「あ、良かった……カーネスさん」

 

「おや、フィアナさん……無事にお仕事はできましたか?」

 

私の思った通り市場に彼の姿はあり声をかけながら近寄っていく。カーネスさんも私に気が付き笑顔で尋ねてきた。

 

「はい、実は私姉達にお仕事なんて無理だからやらなくていいって言われていて、それで少し不安だったんです。でもカーネスさんがお仕事を紹介してくれて、人生で初めて働いてお給料を貰えて、それで私でもやれるんだって。だからお礼が言いたくて、有り難う御座います」

 

「……」

 

私の言葉にカーネスさんは驚いて目を見開く。はじめて瞳を見たけどすごくきれいな赤い色をしてるんだな。

 

「いいえ、困った事があればまたこの私を頼ってください。貴女の頼みならばいつでもご相談にのりますので」

 

「本当に有難う御座います。それで、お礼を……」

 

驚いた顔を元に戻し柔和な笑みを浮かべるとそう話す彼に私は給料袋から紙幣を取り出す。

 

「それは貴女が初めて稼いだお金でしょう。そのような物は頂けれません」

 

「でも……カーネスさんのおかげで私お仕事が出来たのに、何もお礼しないなんて……」

 

その言葉に私は人生で初めてお仕事ができたのはカーネスさんのおかげだから何かお礼をしたいと思っているのにと呟く。

 

「失礼。……では、これだけ頂きますね」

 

困っている私に気付いたのか彼が給料袋を手に取ると中から小銭を取り出しそれを貰うといった。

 

「はい。有難う御座います」

 

たった500コールだけれどそれでも受け取ってくれたことが嬉しくてお礼を言う。

 

「いえ、では私はそろそろ行かないといけませんので。失礼します」

 

「はい」

 

カーネスさんが言うと立ち去っていった。私も夕飯の買い物を済ませてから家へと戻る。

 

「ただいま」

 

「おかえり……」

 

家に帰って来るとくたびれた様子の姉がけだるそうに答えた。

 

「遅くなってごめんね。それで、お姉ちゃん。お金は稼げれたの?」

 

「それが後8000コール分どうしても稼ぐことが出来なくてね。私は稼げるまで止める気はなかったのだけれどフレンが暗くなってきたから今日は帰ってまた明日頑張ればいいっていうから」

 

「ティアが疲れている様子だったからこれ以上無理させたくなくてな」

 

私の言葉に姉が答えるとフレンさんも話す。今8000コールって言ったよね。それならば……私は給料袋の中に入っている紙幣を数える。うん、丁度8000コールある!

 

「お姉ちゃん。それなら、このお金を使って」

 

「え? フィアナこのお金どうしたの。まさか貴女……」

 

「ち、違うよ。悪い事なんてしてないよ。これは私が人生で初めて働いて稼いだお金だよ」

 

私が差し出した給料袋を見て疑う姉に慌てて答えた。

 

「フィアナがお仕事したってこと? フィアナが?」

 

「そ、そんなに驚かなくてもいいでしょ。私だってもう昔みたいに病弱なままじゃないんだからね。これからはお姉ちゃんのお手伝いだってなんだってできるんだから」

 

驚き呆気にとられる姉へと私は不愉快な気持ちを抱きながらそう話す。もう病人あつかいなんかさせないんだからね。

 

「兎に角これで薬が買えるな」

 

「そうね、フィアナ。有り難う」

 

フレンさんの言葉に姉も頷き私にお礼を言う。嬉しくって私の心は弾んだ。

 

こうして翌日お金を持って王国魔法研究所にいるヒルダさんを訪ねる事となった。

 

「確かに18000コール頂きました。こちらが薬になります。副作用などはないですので安心して下さい」

 

「有り難う御座います」

 

ヒルダさんがお金を受け取ると小瓶に入った薬を差し出してくる。姉がそれを受け取るとお礼を言って頭を下げた。私も一緒にお辞儀する。

 

「問題はないと思いますが、何かあったらおっしゃって下さいね」

 

「はい」

 

「有難うございました」

 

ヒルダさんが言うと姉が返事をした。私もお礼を言うと立ち去っていく彼女の背を見送る。

 

「さあ、早く家に帰らないと」

 

「うん。そうだね」

 

ヒルダさんの姿が見えなくなったのを確認して姉が嬉々とした顔で言う。それに私も頷くと急いでフレンさんが待つ家へと戻って行った。

 

「フレン、薬を買ってきたわよ」

 

「これで元の姿に戻れるよ」

 

「あぁ、そうだな。二人とも有り難う」

 

リビングの扉を勢い良く開けながら姉が言う。私も声をかけると彼がぎこちない口調で頷く。何だか緊張しているみたいだけどどうしたんだろう?

 

「さぁ、これを飲めば元の姿に戻れるわよ」

 

「あぁ……そうだな」

 

姉が小瓶をフレンさんの前へと置く。それを見詰めながら彼はやはり神妙な顔をしていて本当にどうしたのだろう?

 

「フレンさんどうしたの? 飲まないの?」

 

「いや、飲むぞ……ただ、少し心配でな」

 

「大丈夫よ。副作用も何も起こらないって言っていたから心配する事ないわ」

 

私が尋ねるとフレンさんがそう答えた。姉が大丈夫だと言って励ます。

 

「あぁ……」

 

「もう、怖気づいてるの? それなら私が飲ませてあげるわよ」

 

「ひ、一人で飲めるから、だから止めてくれ」

 

一向に薬を飲もうとしない彼の様子に姉がしびれを切らし無理矢理飲ませようとする。

 

それにフレンさんが慌てて抗議すると渋々といった感じで小瓶の中身を飲み干した。

 

「「!?」」

 

彼の身体を包み込むように光が現れると見る見るうちに形が変わり人の姿へとなる。その光景に私達は驚いて目を見張った。

 

「ど。どうだ? 元の姿に戻れているか?」

 

「えっ……えぇっ!?」

 

「フ、フレンさん?」

 

目の前には犬ではなく美しい男性が立っていてその人が不安そうな顔でこちらを見てくる。そのイケメンの姿に姉と私は盛大に驚き大きく後退りしてしまった。

 

「そ、そんなに驚くことではないだろう。だが、二人の反応を見るにどうやら元通りになったようだな。……ティア、フィアナ。二人には今まで世話になった。本当に感謝している有り難う」

 

「そんな、気にする事ないわよ」

 

「そうですよ。フレンさん元に戻れてよかったですね」

 

優雅に頭を下げてお礼を述べる彼の様子に姉と私は心からの言葉を伝える。

 

「それで、二人にはまだ秘密にしていたことがあるんだ。実は――俺は……ザールブルブ王国の第一王子で本当の名はフレイル・レオン・ザールブルブという」

 

「「えっ?」」

 

フレンさんの口から語られた真実に私達は呆けた声しかあげられなかった。だって、とても信じがたい事実で一国の王子様だったなんて。確かに犬の姿の時から隠し切れない気品みたいなものは感じていたがまさか王子様だったなんて……

 

私達が驚いていると彼はまた口を開き今まで自分の身に起こったことを順番に説明してくれた。船の事故はあらかじめ細工されていたことで誰かがフレンさんの命を狙い仕組んだことだと。さらに死に至る魔法をかけられたがそれが失敗に終わり犬に姿を変えられてしまったところを海に投げ出されたのだと。命からがら辿り着いたこのオルドラ国で彷徨っているところを姉に拾われたのだと。聞かされた真実は意外なもので驚いたがフレンさんの抱えている事情が事情なだけに慎重になっていたのにも頷ける。

 

「それで、迷惑ついでにもう暫くこの家にかくまってもらえると助かるのだが。お前達意外に信頼できる人物もいないからな。二人の家にいながら黒幕を暴くために調べようと思っている」

 

「それなら私達も手伝うわ」

 

「はい。フレンさんだけだとまた命を狙われるかもしれませんから」

 

彼の言葉に姉が言うと私も答える。私達の気持ちは最初から決まっていた。フレンさんを助ける。その気持ちに嘘偽りなんてない。

 

「待て、二人には今まで元に戻るために協力してもらっていたが、危険な目に遭わせたいとは思っていない。俺に関わり続けていたら二人も陰謀に巻き込んでしまうことになる」

 

「ここまで関わったんだから最後まで関わらせてよ。それに味方は多い方が良いでしょ」

 

「はい、フレンさんだけだと動くに動けないかもしれませんし。ノーマークの私達なら自由に動いて情報を集めることができますから」

 

慌てて待ったをかける彼に姉と私は力強い口調で話す。フレンさんは数秒考えるように黙っていたが了承するように小さく頷いてくれた。

 

こうして私達はフレンさんの命を狙う黒幕を暴くためにある人達に会いに行くこととなる。

 

彼の口からその話を聞いた時は驚いたけれど、でもそれが本当ならば黒幕の正体を一気に暴くことができるかもしれないものね。私達は翌日もう何度訪ねたか分からない王国魔法研究所へと向かうこととなった。

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