追憶の誓い

~時渡りのペンダント~
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二章 謎の少年と怪しい少年との出会い (共通ルート)

公開日時: 2022年4月11日(月) 03:00
文字数:3,592

 私が無事に若いころのお父さんとお母さんに出会い共に旅をする事となってから二日目。

 

時々こっそり抜け出して元の時代に帰っているが、恐らく皆はその行動に気付いているのだろう。それでも何も言わないのは様子見……ってことなのかな?

 

「……ますます怪しいよね。でもこればかりは言えないし」

 

未来から過去へと戻ってきた私は皆の下へと帰りながら溜息を零す。

 

「ルシアさん達は確かに怪しいかもしれないけれど私がいつも通りに接していれば問題ないって言っていたけれど……いつも通りって言われてもどうすれば……」

 

頭を悩ませながら野営地に戻ると皆はもう起きていてこちらに気付いたアンナさんが私ににこりと微笑む。

 

「あら、フィアナ。朝のお散歩?」

 

「はい。私この辺りは初めて来たので少しこの辺りを散策しようと思って」

 

「だからと言って女の子一人で森の中を歩くなんて危険よ。帝国の兵士に見つかりでもしたらどうするつもりだったのかしら?」

 

私の言葉にお母さんが困った顔で話す。

 

「これを持っているので大丈夫です」

 

「これは何?」

 

私は言うと腕につけているものを見せる。初めて見たといった顔でまじまじとそれを見詰めるアンナさんに私は口を開き説明する。

 

「これは友人がくれたお守りの腕輪です。呪いがかかっていてこれを身に着けている間は敵から身を護る事ができるんですよ」

 

「へ~。世の中にはそんな不思議なアイテムが存在するのね」

 

「おい、二人ともそろそろご飯を食べて出発するぞ。いつまでもここに留まるわけにはいかないからな」

 

私達が話し合っていると近寄ってきたルークさんがそう言って笑う。私達が目指している敵対国ザハルまでまだまだ道のりは長い。ザハルの帝王を倒せば世界は平和になる。そう信じているお母さん達はこうして長い旅を続けているのだ。

 

「……といってもお父さんとお母さんは何だか巻き込まれた感じみたいだったけれどね」

 

話しを聞いたところザハルの兵士に追われているジャスティンさんと出会い成り行きで一緒に旅をする事となり帝国兵に狙われることとなって、そこに武者修行の旅をしていたが食料が底をつき倒れていたハンスさんを助け彼も旅に加わった。……どう考えても巻き込まれて仕方なくって感じが否めないのよね。

 

そんなことを考えながら朝食を食べるとザハルへと向けて旅を再開する。そうしてしばらく歩いていると前方から複数の足音と金属がぶつかり合う音が聞こえてきた。

 

「何かしら?」

 

「誰かが戦っているのだろう。ひょっとしたら帝国兵の可能性もある。皆気をひきしめろ」

 

アンナさんが首をかしげるとジャスティンさんが警戒しながら話す。私達はそちらに近づきながらいつでも戦えるようにと気をひきしめた。

 

「あれは……大変。男の子が兵士に狙われているわ」

 

近寄っていって見えてきた光景にお母さんが青ざめた顔で言う。視線の先には大勢の兵士に狙われ必死に剣で応戦している少年の姿が見て取れてそれを見た途端ルークさんとジャスティンさんとハンスさんが前へと駆けだす。

 

「援護は任せろ。ジャスティンは兵士達を」

 

「俺はこいつで何とか相手の気をひいてみる」

 

ハンスさんが言うと魔法陣を構成し始める。お父さんもヴァイオリンで近くにいる敵の頭を殴り気をひく作戦のようだ。……というよりずいぶんと傷だらけだなとは思っていたけれど商売道具で相手を殴っていたのね。そりゃボロボロになるはずだよ。

 

その作戦が上手くいったようで兵士達の気はジャスティンさんとお父さんに向けられる。

 

「大丈夫?」

 

「は、はい。大丈夫です」

 

アンナさんがそっと少年に近寄り声をかけるので私も一緒にしゃがみ込み彼の様子を窺う。見たところ大した怪我はしていないみたい。良かった。

 

あっという間にジャスティンさんとハンスさんの魔法で兵士達を倒してしまうと少年の怪我の具合を見る為近くの草原へと向かう。

 

「……怪我は大したことなさそうね」

 

「少し見せて下さい……はい。これで大丈夫ですよ」

 

「有り難う御座います」

 

アンナさんが怪我の様子を確認しほっと胸を撫で下ろす。私は応急処置で怪我した部分に包帯を巻く。何かあるといけないからと持ってきておいた救急セット。役に立って良かった。

 

「でも、君どうして兵士に追われていたの?」

 

「……ぼくの国もザハルの帝王に攻められていて。それでぼくは兵士の目を盗んで国から出てきたんだ。だけど見つかって追いかけてきた兵士達に命を狙われたのさ」

 

「ザハルの帝王があちこちの国に兵士を送り込んでいるとは聞いていたが……そうか、それは大変だったな」

 

アンナさんの言葉に少年が俯き答える。その話にジャスティンさんが怒りに顔を歪ませながら呟いた。

 

「国はもうだめかもしれない……でもぼくはわずかな可能性でもあるのならば諦めずに助かる道を見つけようと思って。ザハル相手に勝てるかどうかわからないけれど、でも帝王を倒せば兵士達は国を攻めるのをやめるはず。だからぼくだけでも帝王を倒そうと思って」

 

「それなら俺達と一緒に行動しないか? 実は俺達の目的もザハルの帝王を倒す事なんだ」

 

彼の言葉にルークさんがそう提案する。少年は数秒悩むように黙り込んでいたが私達に目を向けるとにこりと笑う。

 

「ぼく一人だけだと何ともならないかもしれない。でも仲間がいれば心強い。ぼくも君達と一緒に行くことを許してもらえますか?」

 

「勿論よ」

 

「皆でザハルの帝王を倒そう」

 

彼の言葉にお母さんがにこりと笑い頷く。ハンスさんも握り拳を作るとそう言った。

 

「有り難う御座います。ぼくはジュディス、皆さんよろしくお願いします」

 

こうして兵士に追われていた謎の少年ジュディスさんと出会い一緒に旅をする事となった。

 

それから次の村へと向けて歩いていると前方から二人の人影がこちらへと近寄って来るのが見て取れた。

 

「……若」

 

「分かっている」

 

歩いてくる二人の人影が何か話し合うと周囲に急に兵士達が現れ彼等を取り囲む。

 

「このような所におられましたか。貴方の正体は分かっています。共に来てもらいますよ」

 

兵士達を引き連れた隊長だと思われる男が剣を抜き放ちながら答える。従わなければ殺すということなのだろうか?

 

「おあいにく様! お前達にひょこひょこついていくとでも思ったか」

 

少年が言うと身にまとっていたローブを脱ぎ捨て剣を構える。その姿が誰かに似ている気がして私の目は彼にくぎ付けになった。

 

どれくらいの間彼の姿を見ていたのか分からない。気が付いたら兵士達は倒れていてルークさん達も少年の側にいてまるで時が止まってしまっていたかのようだ。

 

「はっ……だ、大丈夫ですか?」

 

慌てて私も駆け寄ると彼等に怪我がないことに安堵する。

 

「手助けされなくてもあれくらいの数俺達だけで十分に倒せた」

 

「何言ってるの。隊長の剣圧に押されて困っていたように見えたけど」

 

少年の言葉にジュディスさんが意地悪く言う。

 

「お前達が邪魔しなければもっと早く終わっていたさ」

 

「わ……若。ここは素直にお礼を言うべきですよ」

 

「ロウ……若と呼ぶな。今の俺はただの少年だからな」

 

彼の言葉に男性が慌てて声をかける。そんな彼へと睨み付けて少年がぶっきらぼうに答えた。

 

「でも、どうして兵士に狙われていたの?」

 

「俺にはある目的がある。だからそれを阻止したいあいつが俺の命を狙ったんだろう」

 

アンナさんの言葉に彼が答える。ある目的って何だろう? それにより命を狙われているってことは実はものすごい陰謀に関わっているってことなのかな?

 

フレンさん達に関わったおかげで少しだけ勘がよくなったのか。私のこの考えは後に当たる事となる。

 

「俺はアルス。こっちは頼んでもいないのに勝手についてきたロウだ」

 

「そ、そりゃ、貴方お一人だけを危険な旅に出せますか。断られようとも私は勝手についていきますとも」

 

少年の言葉に男性が慌てて口を開く。何だかこの二人訳ありのようである。

 

「それで、あんた達はどこに向かってたんだ?」

 

「私達の最終目的地は帝国ザハルよ。帝王を倒すためにこうして旅をしているの」

 

アルスさんの問いかけにお母さんが行き先を答えた。

 

「成る程……よし、決めた。俺もお前達と一緒に旅をする」

 

「はっ? わ……アルス様。な、何をおっしゃいますか?」

 

彼の言葉に心底驚きロウさんが慌てて抗議する。そんな彼をめんどくさそうに見やりアルスさんが口を開く。

 

「目的地が同じなら共に旅をした方が良いだろう。何が問題なんだ?」

 

「し、しかし……」

 

「俺が決めた事だ。お前は口出しするな」

 

「は、はい……」

 

彼の言葉にまだ何か言いたそうな顔でロウさんが口を開くがそれを黙らせるようにアルスさんが言いきる。彼はそれに小さくなりながら返事をした。

 

こうして怪しい少年アルスさんと彼と共に旅をしているロウさんと出会い私達の旅の同行者が増える。ジュディスさんとアルスさんの出会いが後の旅に大きく影響を与える事となるとはこの時はまだ知ることはなかった。

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