あれからさらに数週間が過ぎようやく元気になった私はフレンさんに頼んだとおりに一緒にザールブルブへと連れて行ってもらう。
「何かあったら大声で呼ぶんだぞ」
カーネスさんと二人きりで話したい事があると言って頼むと彼がそれだけ伝えて牢屋番と一緒に外へと出て行った。
「……」
私は牢獄の扉を開けるのをためらう。もし拒絶されたら……そう思うと怖くて動けない。
それでもいつまでもここで突っ立ているわけにもいかないので勇気を出して扉を開け中へと入った。
「貴女は……」
「……」
牢屋の中へと入ってきた私の姿にカーネスさんは驚く。
「私、カーネスさんに伝えたいことがあって、それでフレンさんに頼んでザールブルブまで連れてきてもらったんです」
「……」
私が話し始めると彼は怖い顔でじっとこちらを見詰めていて、不安に駆られたけれどでも話すのを止める気はなかった。
「ドロシーさんの作った薬を被って死んでしまうかもしれないって時に思い浮かんだのはカーネスさんの顔で、それで私気付いたんです。私出会った時からずっと貴方の事が好きだったんだってだから――っ!?」
必死に思いを伝えていると目の前にはカーネスさんの顔があり私の唇には温かいぬくもりを感じた。これって、キス?
「……俺は今まで自分のしてきたことに後悔したことは一度だってありませんでした。ただ、唯一貴女に刃を向けた事だけは後悔しておりました。嫌われても当然だと、そう思って突き放したというのに……やはり貴女には敵いませんね」
軽いキスのあとに私から離れた彼が優しく微笑み言う。
「俺が貴女に恥じない生き方ができるようになって、貴女の前に現れるその日まで待っていてくれますか? いいえ、今まで貴女に散々待たされたのですから、今度は貴女が俺が現れるその日まで待っていてもらいますよ」
「待ちます。ずっと、ずっと。カーネスさんが私の前に現れてくれる日まで」
カーネスさんの言葉に私は勿論だと言いたげに力強く頷き答える。
彼が私の前に現れる日が来るまで私は何十年かかろうと待ち続けるだろう。たとえおばあさんになったとしても。
一章はここまでとなります。次章は閑話的な感じで四コマ漫画風コラムをお楽しみください。
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