追憶の誓い

~時渡りのペンダント~
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七章 時渡りのペンダント (共通ルート フレンルート)

公開日時: 2022年3月9日(水) 03:00
文字数:7,105

 それから数分後王宮へといっていた姉達が戻って来る。いきなり連れてこられたルシアさんとルキアさんはまだいまいち状況を把握できていない様子で不思議そうな顔をしていた。

 

「ティアからある程度の話は聞いた。だが、まだ状況を把握できていない。どうして、行方不明になっていたお前が二人の家にいて、そしてどうして俺達に協力を仰いできたのか順に説明してもらえないか」

 

「事情が事情なだけに今まで黙っていてすまなかった。実は……」

 

ルシアさんの言葉にフレンさんが順を追って説明する。その言葉に二人は驚いたり納得したりで、状況を把握するのに時間はかからなかったようだ。

 

「なるほど……そりゃ確かに黙っていたほうのが安全だったってことだな。だけどオレ達を頼るということはあまり状況的に良くないってことだろう」

 

「あぁ。事は一刻を争う。女王が兵士を連れてこの国に攻め込んでくる前にそれを阻止しなくてはならないからな」

 

ルキアさんの言葉にフレンさんが説明する。

 

「それでルシアは俺と一緒にルキアはドロシー達と一緒に行動してもらいたい」

 

「分かった。ルキア、へまをするなよ」

 

彼の言葉にルシアさんが答えるとルキアさんへと視線を送る。

 

「そりゃこっちの台詞だって。ルシアはあんまり戦闘能力ないんだからフレンの足手まといにならないようにな」

 

「もとより武力で役に立とうとは考えていない。頭脳戦で攻め込むつもりだ。知略を巡らせるのは得意だからな」

 

それに彼が心配だといった感じで話す。それにルシアさんが大丈夫だといった感じで答えた。本当にこの二人は対極的よね。

 

「それじゃあ、あまり遅くならないうちにここから出て行った方が良いと思うわ。転移陣は使えるわよね? 国の外まで見つからないように転移出来れば一番いいのだけれど」

 

「そのくらいなら問題はない。そっちも見つからないように気を付けていくんだぞ」

 

ドロシーさんの言葉にフレンさんが答える。こうして私達は二手に分かれて作戦を決行することとなった。フレンさん待っていてね。必ず封印の魔法を扱える人を見つけて連れて行くから。

 

転移魔法で街の外までやって来ると周囲を見回し誰もいないことを確認する。

 

「どうやら、上手く外まで出る事が出来たな」

 

「それで、どうやって探すんだ? その人物に心当たりでも?」

 

「勿論よ。何の心当たりもなくどこにいるのかもわからない人を探すなんて言わないわ。実はわたしその人達に昔助けてもらったことがあるのよ。だから探知魔法を使って今その人達がどこにいるのかを探し出す事さえできれば問題ないはずよ」

 

レオンさんがとりあえず敵に見つからず外に来れた事に安堵する。ルキアさんの言葉にドロシーさんが説明した。

 

そうしてドロシーさんの探知魔法を使い周囲を探してみるがオルドラ国周辺では反応はなかった。

 

「この辺りにはいないみたいね」

 

「もっと範囲を広げることはできないのか?」

 

彼女の言葉にルキアさんが尋ねる。

 

「わたしの魔力ではこれが精一杯よ。この周辺にいないとなるとどこか別の国にいるのかもしれないわ……っ!?」

 

ドロシーさんが話していると何かに気付き目を見開く。

 

「うそ……さっきまで何の反応もなかったのに、急に反応が……それもかなり近くにいるわ」

 

「え?」

 

まさかこんなに早く見つかるなんて? でも急に反応が現れるなんてそんなことありえるのかな。もしかしてその人達も魔法使いとか?

 

「とにかく行ってみようぜ」

 

レオンさんの言葉に促され私達は反応が現れた近くの森の中へと入っていく。

 

「この辺りにいるはずよ」

 

「そこにいるのは誰だ!?」

 

ドロシーさんが言うのと誰かの声が発せられるのは同時だった。

 

「「「「っ!?」」」」

 

私達は敵かもしれないと思い身構える。すると薄暗い闇の中からうごめく影が二つ警戒しているのかゆっくりとした足取りで近寄ってきた。

 

「フィアナ?」

 

「へ、まさかお母さん? お父さん?」

 

女性の声に私も暗がりから現れた二人の顔を見て驚く。どうしてお母さんとお父さんがここに? 世界を旅していてまだ帰れないって手紙には書いてあったはずなのに。

 

「あぁ、やっぱりフィアナだったのね。こんなところで何をしているの?」

 

「それはこっちの話だよ。どうしてお父さんとお母さんがここに? 町に帰って来るのはまだ遅くなるはずなんじゃなかったの」

 

お母さんが私の手を握りしめて嬉しそうに話す。聞きたいのはこっちだと思った事をそのまま伝えた。

 

「隣国の王子様が行方不明になってから女王様がこの国を攻め落とすって話していたって友人から聞いて戻ってきたのよ」

 

「途中で女王の手のものにつかまりそうになったが友人達が守ってくれてな。何とか無事にここまで帰ってこれたんだ」

 

お母さんとお父さんの話に私達は驚く。どうしてお父さんとお母さんが捕まりそうになったりしたのだろうか。

 

「ねぇ、フィアナ。この二人が貴女のご両親に間違いないのね」

 

「は、はい。本当の両親ではないですが私を育ててくれた両親に間違いはないです」

 

ドロシーさんの問いかけに私は答える。

 

「そう……アンナさん、ルークさんお久しぶりです」

 

「あら、貴女は……あの時の女の子? まぁまぁ大きくなって」

 

「そんな話は今は良いです。それよりも命を狙われていたんですね」

 

ドロシーさんはお母さん達と知り合いだったんだと驚いていると彼女が話題を戻すように話す。

 

「……お察しの通りよ。私達は命を狙われていた。だから捕まらないように世界中を転々としていたの」

 

「それで納得した。だからティア達あての手紙をわざとルシア宛てにして送ってきていたんだな」

 

「それってどういうこと?」

 

話しの内容が理解できなくて私は尋ねる。お母さん達が命を狙われていたことと私達宛ての手紙を王宮にいるルシアさんに送っていたこととどう関係があるんだろう。

 

「貴女達を守る為よ。ご両親は命を狙われていた。貴女達の家が特定されていたら貴女達も命を狙われていたかもしれない。もしくは捉えられて人質にされていたかもしれない。だから、貴女達を守るためにあえて手紙を王宮に送っていた……そういうことだと思うわ」

 

「その通りだ。二人に危害が加えられないようにと思って俺達は今まで世界を転々と渡り歩いてきた。そのせいで二人には寂しい思いをさせてしまっていたがな」

 

まさか私達の命を守るためにお母さん達がずっと家を空けていたなんて。そう言われてみれば私はともかく実の娘である幼い姉を置いて世界中を飛び回るなんておかしいとは思っていた。こういう事情があったのね。

 

「それで、話しは変わりますが、お二人に協力してもらいたいことが」

 

「分かっているわ。あの踊りを踊って欲しいと言いたいのでしょ。だけどごめんなさい。私達はまだやらなきゃいけないことがあるの。友人がとても大変な目に合っていてね。だからこれから二人で助けに行くところなのよ」

 

ドロシーさんの言葉にお母さんは首を振って答える。

 

「そ、それじゃあ女王を止めれないわ」

 

「大丈夫。ティアに任せればいいわ。私が今から教えたとおりにあの子に伝えてちょうだいね」

 

お母さんは言うと顔を近づけ私達に内緒話を始める。まさか、お母さんが踊り子で大事なのは魔法陣を覚えることだって言っていたのはこういうことだったの?

 

*****

 

ティア視点

 

 フィアナ達が出て行った後私達もすぐに転移陣を使い町の外までやって来るとそのまま何度か繰り返し隣国であるザールブルブへと向けて歩みを進める。

 

そうして何とか誰にも見つからないように王宮の中まで忍び込めたんだけれど。

 

「女王様は一体どこにいるんだろう?」

 

「おそらく玉座だろう。まずはそこを目指すぞ」

 

私の言葉にフレンが答える。私達はなるべく急ぎつつも足音を忍ばせて玉座の間へと向かっていった。

 

「女王様。兵士を全て外に待機させております」

 

「お母様……本当に隣国がお兄様を亡き者にせんと企んだのですか?」

 

私達が扉の近くまでくると中から男性と少年の声が聞こえてくる。

 

「いいですか、アレン。隣国が今回の事を企てた証拠があるのです。友好関係を結んでいたのもこの国を亡ぼす絶好の機会をうかがっていたからに他ならないのです。私は今回の事でよく学びました。やはりこの国を護るためには全ての国を滅ぼし誰にも脅かされることのないようにしていくしかないのだと」

 

「それでは、女王様。そろそろ我々にご命令を」

 

女性の言葉に別の男性が声をあげた。これ以上は待っていられない。私達は頷き乗り込む決意をした。

 

「そこまでだ!」

 

「「「「!?」」」」

 

フレンの声に中にいた人達が驚いてこちらを見やる。玉座の前にいる女性が女王様よね。その隣に立っている少年が第二王子かしら。二人の側に立つ剣をもった人が騎士団の人でローブを身にまとっている人が魔法使いかな。

 

「お兄様! ご無事だったのですね」

 

「……フレン。生きていたのね」

 

喜ぶ男の子とは対照的にまるで死人にでもあったかのような顔で女王が言う。

 

「あぁ、貴女に命を狙われたがこの通り無事に生きている。そして、貴女の野望を阻止する為にここに乗り込んだんだ」

 

「お母様どういうことですか? お兄様を殺そうとしたのがお母様だというのは……うそですよね?」

 

フレンの言葉に男の子が女王を見上げて尋ねる。

 

「……そうです。船の事故も私がカーネルに頼みあらかじめ事故に見せかけるため細工させたのです。そしてそれだけでは生き残る可能性があると考えた私は確実に死に至らしめる魔法を使った」

 

「っ!? お母様がどうして……」

 

女王はもはや隠すこともなく事情を説明した。その言葉に信じられないといった顔で男の子が呟く。

 

「全てはアレン。貴方のためです。王の後を継ぎこの国の次期国王となるのにふさわしいのは貴方しかいないからです。フレンがいては貴方は王にはなれない。だから今回の事を企てたのです。フレンはもう王子でも何でもありません。私達に刃を向ける反逆者です。分かって頂けましたね」

 

「……お母様がお兄様を殺そうとした。お母様はいつも自分の事ばかりだ! 自分のためにぼくを利用しようとした。ぼくはもう……お母様のいいなりになるお人形なんて嫌だ! お兄様を殺そうとしたお母様なんて大っ嫌いだ!」

 

「アレン! 何を言うのです。貴方まで私に逆らうというのですか?」

 

男の子はそう言うとフレンの隣へと駆け寄り母親を睨み付ける。その様子に女王がヒステリックな声をあげた。

 

「……いいでしょう。こうなっては仕方ありません。貴方まで私に逆らうというのならば、もう貴方は必要ありません。貴方達はここで死んでもらいます」

 

「っ! 女王様いけません。まだその魔法を発動しては……」

 

女王が言うと見たこともない魔法陣が地面に広がる。その様子に騎士の人が慌てて制止の声をあげた。あれ、さっきまでいた魔法使いの人がいなくなってる? それにルシアの姿も見えなくなっている。一体何処に行ったのかしら。だけど今はそれどころではない、なんだか嫌な予感しかしない。

 

「まさか古代魔法を発動する気か? ……っ。ティア、アレン逃げろ。俺が何とか防御魔法で食い止めてみる。だからその間にお前達は逃げるんだ」

 

「っ! お兄様ぼくもお手伝いします。お兄様だけを残していくなんて出来ません」

 

フレンが言うと腕を突き出し魔法を発動させた。そんな彼へと男の子が自分の右手を近づけ魔法陣を重ねる様に発する。

 

「!」

 

「ティア?」

 

何の力にもなれないかもしれない。だけどフレンを一人になんてさせられない。

 

「私も最期まで一緒にいるわ。何の力にもなれないかもしれないけれど、でも貴方が守りたい人達を皆で守りましょう」

 

「ティア……あぁ。せめてこの国だけで留められるように俺も全魔力を注ぎ込む」

 

「ぼくもお兄様の助けになります」

 

二人の言葉に私も力強く頷いた。崩壊の魔法で世界中が滅ぼされないために私達にできる事をしてみるから。隣国には絶対に手出しさせない。だからフィアナ。貴女は生き残って。

 

*****

 

 お母さん達から聞いた封印の魔法の発動方法をザールブルブにいる姉に伝えるために私達は急いで隣国へと向かっていた。

 

「っ? なに、あの煙は?」

 

「何かあったのかもしれない。急ごう」

 

遠くから立ち上る煙に私はなんだか嫌な予感を覚える。ルキアさんの言葉に促され私達は急いで煙のあがる方向を目指す。

 

「っ!? ……そんな」

 

「街が……こんなことになるなんて」

 

森を抜け隣国の城壁があるはずの場所へとやって来るとそこには黒く焦げた焼け跡と崩壊した街があるだけだった。

 

「せっかく、情報を持ってやってきたのに。こんなことになるなんて……」

 

助けられなかった。姉もルシアさんもフレンさんも街の人達も誰も助けてあげられなかった……。

 

「……方法は、なくはなくてよ」

 

悲しみに暮れている私達の耳にドロシーさんの声が聞こえてきて私は慌てて顔をあげた。

 

「助けられる可能性は、あるわ」

 

「どうやってだよ。どう見たってもう希望一つ残っちゃいないのに!」

 

ルキアさんの言う通りこの状況で生き残っている人がいるとは考えられない。

 

「前から気になっていたんだけれど、貴女がつけているそのペンダント……わたし前にそれと同じものを付けている女性に会ったことがあるのよ。あの時は何を言っているのか分からなかったのだけれど、このことを言っていたのね」

 

「え?」

 

ドロシーさんが私のペンダントを見詰めて話す。一瞬何を言われているのか分からなかったけれど、もしかしてこのペンダントについて何か知っているのかな。

 

「ドロシーさん。このペンダントの力が何か知っているのですか?」

 

「知っている……というよりそのペンダントを持っている人から話を聞いたことがあるのよ。それは時渡りのペンダントと言って魔石の力で過去の時間軸に戻る事の出来る不思議な力を宿しているペンダントなの。だからそのペンダントを使って街が滅ぼされる前の時間に戻って崩壊を止めれば未来を変えることができるかもしれない。……でも気を付けないといけないのは過去の時間に戻ることができるのは一日だけ。一日を過ぎてしまうと時の迷い人となり一生時の中を彷徨い続ける事になるらしいの。だから扱い方を間違えると元の世界に戻ってこられない。それでも……皆を助けるための方法はそれしかないわ」

 

「私やってみます」

 

扱い方を間違えたら時の迷い人となり彷徨い続けてしまうかもしれない。それでもフレンさん達を助けられる方法があるのならば、私はそのわずかな可能性に賭けてみたい。

 

「使い方は簡単よ。そのペンダントを握りしめて魔石の魔法を発動させるの」

 

「……」

 

ドロシーさんの言葉に従い私はペンダントを握りしめる。すると私の足元に時計の形の魔法陣が現れる。

 

そうして私達を包み込むぐらい魔法陣が拡大すると一瞬背景がぐにゃりと歪んだかと思うと城壁の前へと私達は立っていた。

 

「これは?」

 

「どうやら成功したみたいね。急ぎましょう。時間がないわ」

 

驚く私にドロシーさんが言うと急いで王宮へと向かう。

 

王宮の中へと駆け込みドロシーさんの探知魔法を使ってフレンさん達の下へとやって来ると、死を覚悟しながら女王と対立している姉達の姿が見えてきた。

 

「お姉ちゃん!」

 

「諦めるのはまだ早い! 助かる方法が分かったんだ!」

 

私は急いで姉の側へと駆け寄る。ルキアさんも叫んでこっちに気付いてもらおうと必死のようだ。

 

「っ! フィアナ?」

 

「お姉ちゃん。古代魔法の発動を封印できる方法が分かったの。踊りながら魔法陣を描けばいいんだって。お姉ちゃんならやれるはずだよ」

 

「どういうことだ?」

 

驚く姉へと私は説明する。いまいち理解できていない様子のフレンさんが尋ねて来た。

 

「ティアのお母さんがかつて古代魔法を封印した人物だったんだよ。ティアには小さなころから体で覚えさせてきたからやれるはずだって」

 

「分かった。やってみる……」

 

ルキアさんの言葉に姉が言うと踊りを舞うため神経を研ぎ澄まさせた。

 

一瞬の静寂の後に姉は踊り出す。すると姉の動きに合わせて魔法陣が描き出される。

 

お母さんが言っていた一人前の踊り子になる為にはまず魔法陣を覚えろとはこういうことだったのだ。きっとお母さんは自分達の身に何かあった時の事を考えて姉にこの封印の舞を覚えさせたのだろう。

 

「っ……私の身体から魔力が消えていく? これが封印魔法の威力」

 

女王がそう言うとその場に崩れるようにしてしゃがみ込んだ。

 

「フレンさん……」

 

「……貴女のした事は到底許されることではない。自分の野心のために人々を危険にさらした。そんな人が女王であり続けることは許されない。よって今をもってあなたの地位を剥奪する。……だが、貴女が今まで俺達兄弟を育ててくれた事には感謝している。だから罪を認め償った時は、またこの宮殿に迎え入れることを約束しよう」

 

無言で女王へと近寄っていった彼につい声をかけてしまったが黙って見守る。すると彼はそう言って女王を見下ろした。

 

「どうやら、上手く解決したみたいだな」

 

「ルシア……今まで何処に行っていたの?」

 

「魔法使いの男が抜け出すのを見かけて後を追いかけて行ったのだが……途中で見失ってしまった。すまないな」

 

「うんん。追いかけてくれてたのね、ありがとう」

 

ルシアさんの声が聞こえてきたのでそちらを見ると姉と何か話をしているようだった。

 

それから私達は姉達にペンダントの力を使って過去の時間に戻ってきたことを話し、未来でまた再会することを約束し別れる。

 

未来に戻っても何も変わっていなかったらどうしようと不安だったが、戻った世界で姉達と無事に再会を果たし、ザールブルブの街も無事だった。その事にほっと胸をなでおろす。こうして長かった私達の戦いは終わりを迎えた。

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