魔法の失敗で犬になってしまったフレンさんと出会い彼を助けるうちに大きな陰謀へと巻き込まれザールブルブ国の女王と対峙し世界を崩壊の危機から救って早五年。私は二十歳の誕生日を迎えた。
「フィアナ、お父さんとお母さんから手紙が届いてるわよ」
姉の言葉に私は手紙を受け取る。女王から命を狙われ世界中を飛び回っていた両親は今では普通にお仕事の為にいろんなところを旅して回っていて、昔も今も変わらずにこの家へはあまり帰ってはこない。
姉のティアさんも今では立派な踊り子さんでオルドラ国一の劇団で働いている。
「誕生日だからお祝いの手紙じゃないかな」
姉から手渡された手紙を見ながら私は呟く。二十歳になったからお祝いしてくれるのだろう。さて、なんて書いてあるのかな?
「フィアナ、二十歳の誕生日おめでとう。お父さんとお母さんは相変わらずお仕事が忙しくて直接お祝いしてあげられないけれど手紙を送ります。……ふふ。帰ってこられないだろうなとは思っていたから大丈夫なのに。……さて、貴女がようやく二十歳の誕生日を迎えたので今まで貴女に言えなかったことを伝えます。フィアナはお父さんとお母さんがお友達と一緒に世界を救ったことはもう知っているわよね。実はねその時お父さんとお母さん世界を救うのに失敗しちゃって、貴女に助けてもらったことがあるの。だから時渡のペンダントの力を使ってお父さんとお母さんを助けに来てね……へ?」
「へ? ……それって、どういうこと? フィアナがお母さんとお父さんを助けたって? 時渡のペンダントを使って?」
手紙の内容を読みあげた私は驚いてフリーズする。姉も意味が分からないといった感じで困惑した表情で首を傾げた。
「時渡のペンダント……それって私がお父さんから貰ったこの形見のペンダントの事だよね。その能力を使って過去の時代に飛んでお父さんとお母さんを助けろってことなの?」
「……手紙を読む限りだとそうとしか考えられないわね」
私の言葉に姉が小さく頷く。そして私の顔を心配そうにのぞき込んだ。
「もし、使い方を間違えたりしたら二度と元の世界に戻ってこれないのよね。……大丈夫なの?」
姉の心配も分かる。扱い方を間違えれば時の迷い人となり一生時間の中を彷徨い続けてしまうかもしれない。不安もあるけれどでもお母さんとお父さんが手紙で知らせてきたということは二十歳になった私に昔助けてもらったことが本当にあったのだろう。だから上手くいくから大丈夫だと思ったからこそ教えてくれたのだろう。今は両親の言葉を信じて私はお母さんとお父さんの未来を守るために過去の時代へと行かなくちゃいけない。
二十歳の誕生日の日に知らされた事実は私の人生を動かす始まりに過ぎなかったことを知るのはもう少し先になってからである。兎も角この手紙が届いた事により時渡のペンダントを使って過去の時代へと飛ぶこととなった。
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