フィアナが俺達の前に現れることがなくなってから暫く経ったある日。彼女が急に訪れる。
「フィアナ、久しぶりね。あれからどうしていたのか心配していたのよ」
「ご心配おかけしてすみません。もう二度とここに来るつもりはなかったんです。でも、今日はロバートさんに……お父さんにどうしても会いたくて」
ロバートは今病に倒れていてアンナと一緒に様子を見に行っていた。フィアナが彼に会いたいというので一緒に連れて行く。
「……ゴホ、ゴホ。フィアナ、すまないな」
「お父さん、死んじゃいやだ。待っていて病気が治るって言われている草を探してくるから!」
俺達がお家を訪ねるとベッドに横になったロバートに幼いフィアナが涙ながらに声をかけ外へと飛び出していくところに遭遇した。
「……アンナ、ルーク。俺はもうだめだ。娘の事を頼む」
「ロバート、今日は貴方に会わせたい人がいるの」
静かな口調で呟く彼にアンナが声をかけるとフィアナが部屋の中に入って来る。
「お父さん……」
「フィアナ?」
驚いた彼の顔に少しだけ正気が戻ったように見えた。
「お父さん!」
「フィアナ……最期にお前の顔が見れて良かった」
ベッドへと駆け寄り泣きつく彼女にロバートが掠れる声で呟く。
「私、ずっとずっと後悔してた。お父さんの最期を看取れなかったことを。だから、今日はちゃんと最期まで側にいるから。それにね、心配しなくても大丈夫だってこと伝えに来たの。私はアンナさんとルークさんにとても大事にされて愛されて育った。ティアさんとも本当の姉妹のように仲良く過ごせてます。だから、心配しないで。大丈夫だからね」
「そうか、それを聞けて良かった…………フィアナ、愛しているよ」
「お父さん?! ……お父さん……ぅ、ぅぅつ……わぁぁん~」
フィアナが手を握り語りかける言葉に答えていたロバートが目を閉ざす。
力が抜けて滑り落ちる手に彼の死を知った彼女が亡骸に泣きつく。
「アンナさん、ルークさん。今日は有り難う御座いました。私、あの時お父さんの最期を看取ってあげられなかったことをずっとずっと後悔して生きてきました。どうして薬草なんか取りに行ったのだろう。行かなければお父さんにちゃんとお別れが出来ていたかもしれないのにと。……ようやく心の中にあった物がなくなりました。有難う御座いました。……私の事よろしくお願いします」
「フィアナ、私達がちゃんと育てるから。だから、貴女の事私達に任せてね」
「俺達が守るから、だから安心しなさい」
俺達の言葉にフィアナが「有り難う」というと深々と頭を下げる。それから未来へと戻って行った。
後の事は俺達に任せろ。もうしばらくしたら戻って来るだろう幼いフィアナに俺達ができる事をしてあげようとアンナと二人で話し合った。
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