追憶の誓い

~時渡りのペンダント~
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八章 二人で歩む道 (レオンルート)

公開日時: 2022年4月26日(火) 03:00
文字数:2,252

 過去と未来を行き来していた生活が終わりを迎えこの日私はレオンさんと久々に二人きりでお出かけした。

 

「レオンさんこの町での暮らしも大分なじんできましたか」

 

「人っと頃に留まるなんて経験なかったから初めはなじめるか心配したけどあれから5年も経てば大分なじむものなんだな」

 

カフェでお茶をしながら私達はお話する。暗殺者として生活していた頃の事なんてわからないけれど、仕事であっちこっち飛び回っていたのは聞いていた。潜伏したとしても長くても3年くらいだって笑いながら話す彼の言葉に私はそうなのかと驚いたものだ。

 

「フィアナもようやく落ち着けるんだからさ、これからは気楽に生きて行けばいい」

 

「気楽にって?」

 

気楽に生きるとはどういう事なのかと聞くとレオンさんが考え込むように唸る。

 

「う~ん。今までは使命感で過去に飛んでいただろう。それがなくなるんだからもう普通の女の子として生活していいってこと。だからさ、デートを楽しんでほしいんだよね。ってことで今日はいろいろとリサーチしてきてるから楽しんでよ」

 

「リ、リサーチ? レオンさんちょっと待って下さい」

 

デートってこと考えないようにしていたのに彼の口から言われた言葉に私は顔が赤くなっていないかと頬に手を当てた。

 

「って、ことでこれ飲み終わったら早速付き合ってもらうよ」

 

「は、はい」

 

有無を言わせぬ勢いで言われ私は小さく返事をする。それから噴水広場に市街地を一望できるテラス。お城が見える別館の近くの通りに市場に行ったりした後、最後に近くの森へとやって来る。

 

「ここが、最後の目的地」

 

「あの、レオンさん今まで行った所って」

 

私はこのルートに覚えがあった。以前観光地を案内して欲しいと頼まれてレオンさんと巡ったコースと同じなのだ。

 

「気付いてくれた。そ、君がオレに案内してくれた場所を順番に巡ってきたのさ。そして、この森で出会い、この森で再会した。オレにとっては思い出深い場所ってわけ」

 

「私にとってもこの森は特別な場所ですよ。レオンさんと出会って一緒にお花をつんだりした場所ですから」

 

にやりと笑う彼へと答えているとレオンさんが真面目な顔になる。

 

「フィアナが好きな街だからオレ、この町が大好きになった。フィアナの事子どもの頃から大好きだったからさ、だから、これからもオレの側にいてもらいたい。暗殺者として生きてきた過去は消すことができないけれどそれでも、オレも人並みに幸せになる事を許してくれる人達がいた。だからオレはこれからは人間ひととして生きていこうと思う。そして、これを受け取ってもらいたい」

 

「レオンさん……」

 

そう言って差し出してきた小さなケース。その中には煌く婚約指輪が納められていた。

 

「受け取ってくれるね?」

 

「はい、勿論です」

 

笑顔で言うレオンさんに答えるようにその指輪を受け取る。

 

「ち、ちょっと、ちょっと。何で泣くの?」

 

「だって、嬉しかったからです。レオンさんから婚約指輪を貰える日が来るなんて思っていなくてだから嬉しくてつい」

 

慌てた様子で彼が尋ねる言葉に私は涙を拭いながら答えた。今日という日ほどこんなに嬉しい日はない。

 

「まったく……君は変わらないな」

 

そう言って優しく私の瞳にたまった雫を拭うとそのまま……

 

「っ……」

 

「フィアナ、君の事を愛している。その気持ちはこれからも死ぬまでずっと変わらないよ。いや、死んだ後も変わることはないと思う。フィアナがオレを救ってくれたんだ。だからこれからはオレが君を救うと約束する」

 

唇に感じる熱が離れるといたずらっ子の様な微笑みでずるいくらいに優しい声音で宣言した。

 

「私もずっと変わりません。レオンさんの事を愛しています。それはこれから先もずっと変わらないです。ですから、ずっと側にいさせてください」

 

「勿論、君以外の誰かを側に置こうなんて思わないから安心して」

 

私の言葉ににこりと笑いレオンさんが手を差し伸べてくる。

 

そしてその手を取ると二人して街の中へと帰っていった。ここから二人で歩む道が始まりを告げるのである。

 

それから周りの皆に私達が結婚することを伝えると挙式の準備までしてくれてあっという間に結婚。

 

そしてかつて二人で探したレオンさんの家に今日から私が一緒に住む事となった。

 

「ふふっ」

 

「な~に、にやけてるの?」

 

これから始まる新生活につい嬉しくて笑っていたら、その顔を見られてレオンさんが覗き込んでくる。

 

「今日からずっとレオンさんと一緒に暮らすことになるのかと考えたら嬉しくなってしまいまして」

 

「ははっ。そんな事でにやけてたの? そんなに嬉しいならず~っと抱きついててあげる」

 

「レ、レオンさん?」

 

彼が本当に抱きついて離れなくなり驚いていると、レオンさんがいたずらっ子のような笑みを浮かべて口を開いた。

 

「フィアナ、もう夫婦なんだから敬語はなしね。それから、君の事守るといった言葉に嘘はない。必ず幸せにしてあげる。だから、オレの事信じて付いて来てくれるよね」

 

「勿論。私はずっと、ずっとついて行くよ。嫌だって言われても離れたりなんてしないからね」

 

敬語無しでと言われたので普通に受け答えると彼は私を抱きしめたままにやりと笑う。

 

「嫌になる事なんてないと思うけどね。オレ以外にしつこいから、好きな女の子は絶対に離さないからフィアナの方こそ覚悟しておいてよ」

 

彼の言葉にずっと付きまとわれるのかなと一瞬考えてしまったが、四六時中ずっと一緒にいるなんてことはないだろうと思いその思考は振り払う。

 

こうして二人の新しい人生の始まりを迎えた私達は夫婦二人で道を歩んでいくこととなる。

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