王国魔法研究所にいるヒルダさんの下に私と姉は話を聞きにやって来た。フレンさんも一緒に来たがっていたが動物を施設内に入れることはできないと言われ外で待ってもらっている。
「わたしに御用があるとは……それで、どのような御用でしょうか?」
「あ、あの貴女が魔法や魔法使いについて詳しく知っていると聞いて、それで魔法の失敗で動物に姿を変えられてしまった人を元に戻す方法をご存じないかと思い」
奥から小柄な体格のメガネをかけた女の人が出てくると言う。それに姉が緊張しながら尋ねた。
「一応お伺いしますが、どうしてそんな事お知りになりたいのですか?」
「そ、それはちょっと教える事が出来なくて……」
怪訝そうな顔で聞いてくる彼女へと姉は慌てて答える。
「……まぁ、いいです。魔法の失敗で動物になってしまった人を基に戻す方法は簡単です。素の魔法が何かが分かればそれを解く魔法と効果を打ち消す魔法を組み合わせればいいんです。……でも」
「なにかあるんですか?」
ヒルダさんが説明してくれるが途中で困ったような顔で黙り込む。
「とても高度な魔法なのでうまく解けないかもしれません。もし、失敗したらまた私の所に訪ねてきてください。魔法の効果を詰め込んだ薬を作ってあげますので」
「分かりました。お話有り難う御座います」
彼女の言葉に姉が言うとお辞儀する。私も慌てて頭を下げた。
そうして施設を出た私達はフレンさんと合流して一度家へと戻る。
「素の魔法を解く魔法と魔法の効果を打ち消す魔法を融合するということか」
「そうみたい。でもフレン魔法なんて扱えるの?」
家に帰って聞いてきた話をするとフレンさんが納得した顔で頷く。姉の言葉に私も考える。魔法を使える人なんて限られてるもの。難しいようならヒルダさんから薬をもらった方が早いんじゃないかな。
「……一応試してみる。ちょっと見ててくれ」
「「……」」
フレンさんの言葉に私達は彼の様子を見守る。一瞬魔法陣が浮かび上がり部屋中に光が溢れた。
「……ど、どうだ? 元に戻れているか?」
「「……」」
不安そうな声で尋ねるフレンさんの姿はさっきと全く変わらない犬の姿だった。
「その様子だと戻れていないんだな。やはり、俺の魔力では打ち消すことも解除することもできなかったっということか」
「諦めないで。ヒルダさんは薬があるからもし失敗した時はまた訪ねてきてって言っていたから」
「そうよ、その薬さえ使えば戻れる可能性もあるじゃないの。気を落とさないで」
項垂れる彼へと私と姉は慌てて声をかけて励ます。
「兎に角明日もう一度王国魔法研究所に行って話を聞いてくるから」
「あぁ、迷惑ばかりかけてすまないな」
姉の言葉にフレンさんが申し訳ないと頭を下げる。
「迷惑なんて思ってないよ。早く元の姿に戻れるといいね」
「その薬が上手く効けばな」
私は迷惑なって本当に思っていないということを伝えるのと早く元に戻れるといいねと話す。それに彼が曖昧な返事をした。薬を飲めば元に戻れると思うんだけど、何が心配なのかな?
兎に角明日もう一度王国魔法研究所に向かいヒルダさんに話をしてみる事となった。
「おまたせしました。わたしに御用があるとか……もしかして昨日の話で何か困った事でも?」
「あの、昨日話していた薬を作って頂く事ってできないでしょうか?」
研究室の奥からヒルダさんが来ると姉がそう言って頼む。
「あぁ、やっぱりそう、ですよね。……薬を作ることは可能ですが、そのタダであげることはできないんです」
「構いません。おいくらですか?」
彼女の言葉に姉がお願いしますと言いたげに尋ねた。
「そうですね、魔法薬を作る材料費もかかりますので18000コールでしょうか」
「い、18000コール……」
18000コールなんて私達のお小遣いをかき集めても足りない。うんん、生活費を切り詰めたとしても集まるかどうかわからないよ。
「もう少し安くしてあげたいのですが、これ以上安くすることはできなくて……どうされますか?」
「いえ、買います。何とかお金を集めてきますので作ってください」
私達の様子にヒルダさんが申し訳なさそうな顔で話す。それに姉がお願いした。
「分かりました。薬を作っておきますのでお金が集まりましたらまたわたしの所に来てください」
ヒルダさんの言葉に私と姉は家へと帰るとフレンさんに聞いてきたことを伝える。
「18000コールか。その、俺が言うのもなんだがそんなにお金が集まるのか?」
「私が路上で踊りを踊って稼ぐしかなさそうね」
フレンさんの言葉に姉が答える。私も何かお仕事手伝えないかな。
「なら俺も手伝う。俺が元に戻るために薬を買う事になったのだからな。俺にも働かせてくれ」
「それじゃあフレンお願いね」
彼の申し出に姉が了承すると明日二人で広場に行って踊りを踊って稼ぐという話になった。
「お姉ちゃん私も何かお手伝いさせて」
「フィアナには無理よ。家でおとなしく待ってなさい」
私も何か手伝いたくて名乗り出るも姉にばさりと斬り捨てられてしまう。うぅ、まだ私の事病弱な子ども扱いして……悔しいけれど姉に口で勝てるわけもなく不貞腐れながら引き下がる。
翌日。姉はフレンさんを連れて踊りを踊るために出て行ってしまった。私は雑貨屋での買い物を頼まれたのでルチアさんのご両親がやっているお店へと向かう。
「いらっしゃいフィアナ。今日はどうしたの?」
「お姉ちゃんに頼まれて日用品の買い足しに」
ルチアさんが私が着たことに気付きカウンターから出てこちらに近寄って来る。
「犬を飼ってから二人とも最近あんまり顔を出さなくなったからちょっと心配していたのよ」
「いろいろと忙しくて……ごめんね」
フレンさんの事でいろいろとあってここに顔を覗かせなくなったのは事実だし、心配させていたのかなってちょっと反省。
「ふふ、それだけワンちゃんの事に夢中なのね。まぁ、仕方ないわよね。あの子とってもかわいかったから。困った事があったら何でも言ってね」
ルチアさんの言葉に私は良い事を思いついた。
「そ、そうだ。今困ってることがあって、犬を飼ってからいろいろとお金が必要になってね。それで、ここでお仕事のお手伝いさせてもらえないかと思って」
「それってここで働きたいってこと? だ、だめよ。フィアナそんなことしてまた熱が出たらどうするの。ようやく風邪をひかなくなったんだから……働いて身体を壊してまたわたし達に心配をかけさせるようなことしないで。貴女が働かなくても仕送りとティアが踊りを踊って稼いでくれば何とか生活はしていけれるでしょ。もし、ワンちゃんのご飯代とかでお金が必要ならわたし達も協力するから、貴女は働くなんてそんなことしちゃだめよ」
ルチアさんも姉と同じで私に過保護すぎるんだから。もう昔と違って体も丈夫になったって思うのに、これ以上話しても聞いてもらえそうにないから私は用事を済ませてからお店を後にした。
「はぁ……私もお仕事したいのにな」
姉もルチアさんもダメだという。二人に相談した私がいけないのかもしれない。こうなったら自分でお仕事を探してみよう。
「どうしようかな……」
何処に行けば仕事が見つかるかなと思い考える。今いるのは大通り。ここからどこに向かおうかな?
「大通りを歩いていれば何か見つかるかも」
そう思い立ち私は荷物を家においてから早速大通りへと仕事探しに向かった。
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