新婚旅行も無事に終わり日常が戻ったある日。
「フィアナ、今までよく頑張って覚えたわね。……合格よ!」
「や、やった~」
王族の一員になるための勉強を続けていた私は遂にドロシーさんから卒業してもいいと言われた。これでようやくアレンさんの隣でお手伝いができる。
「でも、フィアナとの勉強会が終わってしまったらなかなか会えなくなるわね……あ~ぁ、寂しいわ」
「ドロシーさん……王宮にいるんですものいつでも会えますよ」
そっか、お勉強を担当してくれるってことで私の側にいてくれたんだものね。本来は王宮の魔法使いのお仕事があるのだ。私の側にずっといられるわけでもない。でもドロシーさん寂しいって思ってくれるなんて嬉しいな。私も悲しくなった心をごまかすようにそう話す。
「一端の魔法使いが王族の人と関わる事なんてめったにないわ。儀式の時くらいよ」
「で、でもドロシーさんもこの宮殿にいるんですからどこかで会えるかもしれないじゃないですか」
「無理よ。魔法使いの長なら王様の隣で仕事をする事もあるけれど、わたしみたいな下の者は宮殿内でも行けるところが限られているの。だからフィアナが生活する場所にわたしは入れないわ」
「……」
彼女の言葉に私は会えないと思うと涙がこぼれそうになり俯く。
「……でも、貴女がこっそりわたしに会いに来るって言うんならわたしは見て見ぬふりをするわよ。王族の人に取り入ろうとしている……なんて噂が立たない程度にお願いするわね」
「ドロシーさん……はい。必ず会いに行きます。勿論迷惑をかけない程度に」
小さく溜息を吐き出し微笑むドロシーさんに私は大きく頷き答える。
「わたしの事なんかよりアレン様の下に行きなさいな。今頃フィアナが卒業できたかどうかそわそわして待っているでしょうからね」
「はい」
彼女に背中を押される形で部屋を出るとアレンさんの下へと向かう。
「アレンさん、ついに合格できました。これから私も貴方の側でお仕事をお手伝いいたします」
「フィアナさんなら合格できると信じておりました。……ぼくは幸せ者ですね。こんな有能な助手が側で一緒にいてくれるんですから」
「ゆ、有能だなんて……恥をかかせないように気を付けます」
アレンさんのいる部屋へとやって来るなり報告する私に彼がにこりと笑う。ゆ、有能なんてそんな事ないよと慌てて答えているとこちらに近寄って来る。
「卒業本当におめでとうございます。早速なのですが、貴女のお披露目パーティーが今度開かれます。他国の王族の方達や貴族の方々が見えて盛大に開かれる物ですから、さっそくお勉強の成果を披露して頂くことになりますよ」
「き、緊張するけれど頑張ります」
私のお披露目パーティーなんて緊張してしまうけれどフレンさんとアレンさんに恥をかかせないように気を付けないとね。
ここから王族の一員となった私の新しい物語が幕を開ける事となる。
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