あれから女王は犯した罪の重さにより罰せられて地位を剥奪され流刑となり、王国騎士のベルセリオさんは女王の命に逆らえなかったとはいえ罪に加担したことにより一番下の兵士へと逆戻り、カーネルさんは女王に取り入り悪事を働いたことがバレて王宮の魔法使いの長の座を剥奪され宮殿から追い出された。
ドロシーさんはフレンさんの命を奪うよう命令されて動いてはいたがフレンさん達を助けたことが考慮されて免罪となり王宮の魔法使いとしてのお仕事に戻ることを許される。
レオンさんはフレンさんとアレンさんの力で呪縛と服従の魔法を解かれ自由の身となりどこかへと旅立って行ってしまった。
「お別れくらい言いに来てくれるかなって思ってたのに、何も言わずに旅立っちゃうんだもんな……」
私は溜息をつくとそうぼやく。早く市場で買い物を済ませて家へと帰ろう。そう思って歩いていたのに気が付いたら私の足は彼と歩いた観光名所を巡っていた。
「……この森で初めて出会ったんだよね。それから二人でお花をつんだりしたんだ」
今となっては全てが懐かしくて私の視界は歪む。泣かないようにと必死に涙をこらえるも頬を伝う雫が増えていく。
「……こんなところに一人で来て、人攫いにでもあったらどうするの」
「え? ……レオンさん?」
聞き間違いかと思い顔を上げるとそこには困った顔で微笑むレオンさんの姿が。
「……その、せっかく自由になったし本気で世界中を旅しようと思ってたんだけど道に迷って気が付いたらこの町に戻って来てたんだよね。って、ことでフィアナ。オレが住めるような家を一緒に探してくれないかな?」
「レオンさん!」
困った顔でそう話すレオンさんに私は抱きつく。彼は驚きながらもしっかりと抱き留めてくれた。
「フィアナ……オレ、君に何も告げずに立ち去るつもりだった。会ったらきっと別れるのが辛くなると思って。呪縛と服従の魔法が説かれたってオレが今まで人を殺してきたことには変わりない。だからそんなオレと一緒にいちゃいけないって思って……でもやっぱり自分の気持ちに嘘つけそうにない」
「……」
レオンさんの言葉に私は彼と視線を合わせる。自分の気持ちに嘘をつけないってどういうことだろう。だって、レオンさんが好きなのは姉のはず……
「フィアナ……オレ、君の事が好きだ。だからもう何処にも行ったりなんかしない。ずっと君の側にいるって約束する。だからフィアナもずっと俺の側にいてくれ。何処にも行かないでくれ。フィアナが好きなこの町でずっと一緒に暮らそう」
「レオンさんそれってプロポーズですか?」
真剣な瞳で言われた言葉に私は今の言葉の意味を理解しかねて、いいや、聞き間違いなんじゃないかて思って尋ねる。
「プロポーズなんてシャレたものじゃないけれど、告白には違いないかな」
「っ!」
彼の言葉に私はきっと耳まで真っ赤になっているに違いない。と同時に瞳から何か暖かいものが零れ落ちる。
「ちょ、ちょっと、ちょっと。どうして泣くの?!」
「だって、レオンさんは出会った時からお姉ちゃんに一目ぼれしたんだって思って、だから私のこと好きだなんて思ってなくて……」
「あのね、あれはワザと……フィアナにオレの気持ち気付いてもらいたくてちょっと意地悪してたの。オレ好きな子ほどいじめたくなるから」
私の顔を見て慌てる彼へと私は答える。それにレオンさんがにやりと笑い話した。
レオンさんは出会った時から姉ではなくて私が好きだったってこと? 好きな子だからワザと嫉妬させたくて姉を抱き寄せたりしてたってことなの。彼の気持ちが分かった途端私は安心するのと嬉しいのとで口を開いていた。
「わ、私もレオンさんの事好きです。いつの間にか気付いたらレオンさんの事ばかり気になって、だからレオンさんに好きって気持ちを伝えたいって思ってたんです」
「フィアナ」
抱きしめられたままの格好でレオンさんは私の首に優しく唇を当てる。これってキ、キ、キス……だよね?!
「君の気持ちも同じなんだって知れて嬉しい。もう二度と離したりなんかしないから覚悟しててね」
「は、はひぃ」
優しく笑い言われた言葉に私は恥ずかしさで頭が沸騰しながら返事をした。
「……フィアナ。フィアナが首につけているペンダント」
「あ、こ、これはお父さんから貰ったペンダントで――」
レオンさんが私の首に下げているペンダントを見て話す。それに彼には説明してなかったなと思い口を開くと彼が先に語り始めた。
「それ、時渡のペンダントって言って、過去の時代に自由に移動することができるんだ。ただし干渉できるのは一日だけ。一日を過ぎてしまうと時の迷い人となり永遠に時の中を彷徨い続けてしまうんだ。だから、扱い方を間違えてはいけない……」
「え?」
レオンさんこのペンダントが何か知ってるの? 時渡のペンダントって……
「……二度と元の世界に戻ることができなくなるからって、昔教えてもらったんだ。だから、フィアナ。そのペンダントを使う時があったら扱い方を間違えないように気を付けてね」
「は、はい」
レオンさんどうしてそんな寂しそうな悲しそうな顔で言うの? とにかくこのペンダントの謎は解けたけれどでもこれを使う日が来ることがあるのだろうか。
「さ、暗くなる前に帰ろう。ティアも君の事心配してるといけないから」
「はい」
無邪気な笑顔に戻った彼の言葉に頷き私達は町へと戻る。こうしてレオンさんはこの町で家を探して暮らす事となり私達の新しい日常は始まりを告げたのであった。
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