追憶の誓い

~時渡りのペンダント~
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六章 伝説の英雄を探して (共通ルート ルキアルート)

公開日時: 2022年3月18日(金) 03:00
文字数:3,256

 翌日私は鳥の声と共に目を覚ます。何だか体が重い気がするけど気のせいかな?

 

「っ、フィアナ!」

 

「え、ルキアさん?」

 

なぜか泣き出しそうな顔のルキアさんに抱きしめられて私は驚いて彼の顔を見やる。

 

「ずっと目を覚まさないから心配していたんだ。ヒルダの作った薬が効いたんだな」

 

「え、えっと?」

 

なんで心配されているのか分からなくて混乱する頭を回転させて記憶をさかのぼる。

 

「あ、私小瓶に入っていた何かの薬品を浴びて……それでどうなったの?」

 

「ヒルダが作った強力な睡眠薬でお前丸一日眠ってたんだよ。それで気付け薬を作ってもらってそれをお前に飲ませたんだ」

 

何とか倒れる前の記憶を思い出した私は彼に尋ねる。丸一日も眠り続けてたんだ……そりゃ心配もされるよね。

 

「待ってろ、今皆を呼んでくるから」

 

ルキアさんは私から離れるとそう言って慌てて一階へと駆けて行った。

 

「本当に目を覚ましたのね……あぁ、よかった」

 

「ごめんなさい。貴女をこんな目に合わせてしまって……」

 

姉が駆け込んでくると安堵した表情で私を抱きしめる。ヒルダさんも申し訳なさそうな顔で謝る。

 

「お前が眠っている間この二人に話を聞いた。フィアナ……目覚めたばかりで悪いが話を聞いてくれるか」

 

「はい」

 

フレンさんの言葉に私は頷く。そうして聞かされた話しによるとヒルダさんとレオンさんを操っている黒幕はザールブルブの女王様で、女王様の命を受けたカーネルさんが二人をこの国に送り込んだそうだ。そして二人はもう私達と敵対する気はないのだと、女王を止めるために協力してくれるそうだ。

 

「女王は禁断の古代魔法を復活させるつもりらしい。それを使われたら世界は崩壊する。阻止するために俺達はこれからザールブルブに乗り込むつもりだ」

 

「それで私はフレンの力になりたいから一緒に行くけど、貴女はまだ体調が心配だからここに残って――」

 

「うんん。私も行く。私一人だけここに残るなんて嫌だよ」

 

フレンさんの言葉に続けて姉が言う。それを遮り私は強い決意をもって話した。

 

「分かった。なら私も止めない。それで、貴女はどうするの?」

 

「私ルキアさんと一緒にいる。だからヒルダさん達と一緒に行動するよ」

 

何にも出来ないけれどそれでもルキアさんと離れ離れで心配するのは嫌だ。だから、せめて側にいたいから。

 

「分かった。ならフィアナはヒルダ達と一緒に伝説の英雄を探しに行ってくれ」

 

「それじゃあ、早いとこここを出た方が良いと思うから、今すぐ出発しようと思う。フィアナ、動けるか?」

 

「大丈夫です」

 

フレンさんの言葉にレオンさんが言うと私を見る。それに力強く頷くとベッドから立ち上がった。

 

そうして私の準備ができるのを待ってもらってから私達は町の外まで転移魔法を使い移動する。

 

「そんで、ここからどうやってその伝説の英雄を探すんだ?」

 

「何の手がかりもなくて闇雲に探すとでも思った? ちゃんと考えているわよ。実はわたし昔その人達に助けてもらったことがあってね。だから探知魔法を使って探し出すのよ」

 

ルキアさんの言葉にヒルダさんが言うと私達は彼女の後について探知魔法が反応する森の中へと入っていった。

 

「待て……この足音は……ヒルダ、フィアナ。二人はここにいろ」

 

「待てよ、俺もこれでも王国騎士団の隊長だぜ。二人でやれば早いだろう」

 

レオンさんが何かに気付きナイフを取り出す。その様子にルキアさんが言うと剣を構えた。

 

「あれはザールブルブの王国兵。誰か追われているみたいだけれど……」

 

ヒルダさんも暗闇の奥から見えてきた人影に冷や汗を流す。

 

「ちょっと行ってくる」

 

「二人ともちゃんと身を隠しておけよ」

 

レオンさんとルキアさんが言うと兵士達へと向けて駆け込んでいった。大丈夫なのかな? って心配したけれどあっという間に兵士達を倒してしまった。二人とも強いのね。

 

「あ、有り難う御座います。おかげで助かったわ」

 

「大丈夫ですか……って、お母さん、お父さん?」

 

追われていた人の一人がお礼を言う姿に駆け寄ってその人達を見た私は驚く。

 

「フィアナ、フィアナなのね。貴女どうしてここに?」

 

「それはこっちの台詞よ。どうしてお母さん達が兵士に追われていたの?」

 

不思議そうな顔をするお母さんへと私は尋ねる。

 

「女王に命を狙われているんですね」

 

「えぇ、その通りよ。実はね……」

 

ヒルダさんの言葉にお母さんが頷くと事情を説明した。お母さんとお父さんが伝説の英雄であり、そしてお母さんが封印の古代魔法を扱える唯一の人物である事。だから破滅の魔法を復活させようとしている女王に命を狙われていたのだということを教えてもらった。

 

「女王を止める為一緒に来てもらえますよね」

 

「行ってあげたいけれどごめんなさいね。私達にはまだやるべきことが残っているのよ」

 

「その代わりティアなら女王を止められるはずだ。ティアが幼いころから身体で魔法陣を覚えさせてきたからな」

 

ヒルダさんの言葉に首を振って答えるお母さん。お父さんがそう続けて言うと私達は驚いた。お母さんが姉に一人前の踊り子になる為にはまず魔法陣を覚える事って言っていたのは古代魔法を止めるための封印の魔法を覚えさせるためだったんだね。

 

情報を聞いた私達は姉達にこのことを伝えるためにザールブルブへと向けて足を進めた。

 

そうして急いで駆け付けたザールブルブの町は騒然としていた。何かあったのだろうか?

 

「女王様が隣国と戦争を起こすそうよ。なんでもフレン王子を殺そうとしたのはオルドラの国王様らしいのよ」

 

「友好関係を結んでいたのにどうして? それが事実ならオルドラの国王は罰せられるべきよねぇ」

 

「女王がオルドラと戦争だって!?」

 

「フレン王子達と早く合流しなくては……急ぐわよ」

 

井戸端会議の奥様達の話声を聞いたルキアさんが驚く。ヒルダさんの言葉に私達は急いでフレンさん達のいるザールブルブの王宮へと向かった。

 

「どうやら王子達は玉座の間にいるみたいよ」

 

「そこまで転移魔法で一気に移動できるか?」

 

探知魔法の反応を見たヒルダさんの言葉にルキアさんが尋ねる。

 

「大丈夫よ。わたしの近くに着てちょうだい」

 

ヒルダさんの言葉に私達は魔法陣の範囲内へと入る。そうして一気に景色が変わると大きな扉の前に立っていた。

 

中へと駆けこむと死を覚悟している姉達の姿と見たこともない魔法文字が床中に浮かび上がっている光景が見えてきた。

 

「お姉ちゃん!」

 

「諦めるな! 助かる方法が分かったんだよ」

 

私が叫ぶとルキアさんも大きな声をあげる。私達の声に姉達が驚いてこちらへとふり返った。

 

「お姉ちゃん古代の封印の魔法は踊りながら魔法陣を描き出すんだって。その方法を教えてもらったの」

 

「分かった。やってみるわ」

 

私が急いで姉に説明すると姉は息を整え一拍おいた後そっと舞うように魔法陣を描き出す。

 

姉の動きに合わせて白く輝く魔法陣が浮かび上がると女王の赤黒い魔法陣の上に重なるように古代文字の魔法陣が広がっていく。

 

「っ……私の魔力がなくなっていく……ベルシリオ、何をしているあの踊りを止めるのだ!」

 

「……御意」

 

女王は最後の悪あがきのように王国騎士の男に命令を下す。男は剣を手に姉に向かって突っ込んでいく。

 

「ティアに手出しはさせない」

 

「くっ」

 

瞬時に反応して動いたフレンさんの剣が男性の武器を弾き飛ばす。フレンさんてこんなにも強かったんだね。兎に角これでもう大丈夫だよね。

 

姉の描き出した魔法陣が輝き発動するとともに女王がその場に頽れる。

 

こうして勝負は決まり女王は牢獄に捕らえられベルシリオさんは騎士団隊長の座を剥奪され逃亡中のカーネルさんは全国に指名手配される事となった。

 

全てが終わり落ち着いたころにフレンさんとヒルダさんはザールブルブに戻り、レオンさんは暗殺者を辞め自由の身となりどこかへと旅立って行ってしまった。会えなくなるとなると少し寂しさを感じるけれどフレンさんもヒルダさんもまた会いに来てくれるって約束してくれたからいつかまた会えるかな。レオンさんはよくわからないけれど……そうして私達も日常を取り戻し何ら変わらない日々を過ごしていった。

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