追憶の誓い

~時渡りのペンダント~
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第四章 情報収集 (フレンルート)

公開日時: 2022年3月6日(日) 03:00
文字数:4,667

 フレンさんが隣国の王子様だという事実を知った翌日。

 

「それで、情報収集するということになったのだが、俺が自由に外を出歩けないのに、どうやって情報を集める気だ。なにか良い方法はあるのか?」

 

「うん。ルシアとルキアにそれとなく話を聞いてみようと思うの。フレンもザールブルブが今どんな状況になっているのか気になるでしょ? 実はさっきルチアが家に来てね、隣国の王子様が行方知れずとなっているって噂が国の間で流れてるんだって。だからそれとなく情報を聞き出せないかなと思って」

 

彼の言葉に姉が答える。隣国の間では噂でしかないけれど王子様が乗った船が事故に合い王子様が行方不明となっているのではないかという話が出回っているらしい。その事はまだ国の中だけの話で他国には知られていないが、友好関係を結んでいるからこそこの国にもその噂が流れてきたのである。

 

「なるほど、あの二人に聞けば何か情報がもらえるかもしれないということだな。だが、国を揺るがす問題の話をそう簡単に教えてくれるとは思えないが」

 

「だから噂話程度の事をさりげなく聞いてみるのよ。陰謀に直接結び付くかどうかはわからないけれど、王宮で働いているルシアとルキアなら船の事故がただの事故じゃないって気付いているかもしれないから」

 

フレンさんも納得してくれたようで頷くも不安がぬぐい切れない様子。そんな彼へと姉が安心させるように話す。

 

「私達に任せておいてください。上手く情報を聞き出せるようにしてみますので」

 

「でも、いきなり二人で聞きに言ったらおかしいと思われるといけないからそれぞれ時間をずらしてルシアとルキアに聞きに行こうかなって思ってるの」

 

私の言葉に姉が続けて説明する。

 

「たしかにルシアは頭がいいから何か勘ぐる可能性は大いにあり得る。二手に分かれてそれぞれが片方から情報を貰ったら交代で聞きに行ったほうのが良いだろう」

 

「フレンさんまるでルシアさんとルキアさんの事を知っているように話すけれど、やっぱり王族の方なので会ったことがあるのですか」

 

前から気になっていたのだけれどフレンさんはまるで二人の事を知っているような感じだった。それが気になったので私は尋ねる。

 

「会ったことがあるというか、実はあの二人とは中学が同じだったんだ。王家の者だけど世情に疎くてはいけないということで身分を隠して普通の学校に入学するという風習があってな。それでその時に出会って仲良くなったんだ。二人が王宮で働くこととなってから俺も何度か出会う機会があり、あの二人には俺が王子であるということは知られている」

 

「そうだったんだ」

 

彼が説明した言葉に姉が驚いて目を瞬く。私もびっくりしたが理由が分かり何だかすっきりした。

 

「俺が王子と知っても二人は普通に接してくれる。あの二人の事はよく知っている。だから信頼してもいいとは思うが、事情が事情だけに危険な事に巻き込むわけにはいかないからな。下手に協力を仰げばこの国まで狙われかねない。だから俺の事も秘密にしてもらいたいんだ」

 

「分かりました。フレンさんがそう言うのでしたら、二人には秘密にしておきます」

 

フレンさんの言葉に私は頷く。私達の事だって本当はまだ巻き込んでしまってすまないと思っているのだろう。でも、私も姉も巻き込まれたから仕方なくやっているんじゃない。本当にフレンさんを助けたくて、彼の力になりたくてだから協力しているのだ。たとえ大きな陰謀により命を狙われる危険があったとしても。

 

「それじゃあ、行ってくるね」

 

「あぁ。二人とも気を付けて」

 

姉の言葉に彼がそう言って見送る。家を出ると姉は別館に私は王国騎士団の社務所へと向かった。

 

「フィアナが尋ねてくるなんて珍しいな。オレに何か用?」

 

「あ、あのね。ルチアさんから話を聞いたんだけど隣国の王子様が行方知れずになってるって……本当なの?」

 

社務所でルキアさんに用があると言って待たせてもらっていたら彼がやって来て話しかけてくる。私は不自然にならないよう気を付けながら尋ねた。

 

「あ~。……その噂ね。たしかにそんな噂が隣国の間で流れてるのは本当だ。それから……」

 

ルキアさんは周囲を見回し誰もいないことを確認すると私に耳打ちしてくる。

 

「王子が行方不明になる前に王様が死去されたらしい。それを知った王子は国に戻るため船に乗ったがその船が事故に合ったってされてるけれど、本当は何者かが事故に見せかけるために船に細工したんじゃないかって話だ。隣国の政権交代を狙った戦争を企てている国があるんじゃないかって話も流れている。実は昨日隣国の使者が着て王子の行方を探し出すのを手伝ってほしいって頼まれたてルシアから聞いた。隣国は今大変な混乱の中にある。だから友好関係を結ぶこの国に協力を仰ぎに来たって話だ。オレの勘なんだけど王子は生きているんじゃないかって思ってる。いや、あいつが死ぬはずはない。きっとどこかで無事に生きながらえて、すべての事を解決するための好機を窺っている。そう思ってる。案外この国で身を潜めているかもしれないな」

 

「……そ、そんなにいろいろ私に教えてくもよかったの?」

 

話しを終えた彼へと私はつい聞いてしまった。情報を引き出そうとは思っていたけれどこんなにたくさんの事を話してもらえるなんて思っていなかったから驚いてしまったのだ。

 

「ん。だってすごく知りたそうな顔してたし、それに……何に首突っ込んでるか知らないけれど、とても大事な事なんだろう。お前がここまで必死になるなんて珍しいからな。だから、特別にオレの知りえる限りの情報を教えたんだ。それにオレの勘だとそれが行方不明になった王子と関係があるような気がするし、そうじゃない気もするけど……でもほら、オレの勘てよく当たるだろ。だからフィアナに協力することがあいつを助けられることにつながっているような気がするんだ」

 

「ルキアさん……有難う御座います」

 

本当に有難う。そしてごめんなさい。今は言えないけれど全てが無事に解決したらそうしたらちゃんと話すから。だから……今はまだこのままで許してね。私は涙がこぼれそうになるのをこらえ頭を下げてごまかした。

 

それから一度姉と合流する。しかしなんだか姉の様子がおかしいような気がするのだけれど?

 

「お姉ちゃんルシアさんから情報は聞き出せたの?」

 

「それが……妙に勘が鋭くてね。私の方が誰かに利用されてるんじゃないかとか、誰に言われたのか教えろとかって根掘り葉掘り聞きだそうとしてきて……ぼろを出す前に途中で逃げ出してきたの」

 

私が尋ねると姉が溜息交じりに説明する。さすがルシアさん。姉の事を昔からよく見ているだけはあって嘘をついているのを一発で見抜いたってことだね。これは私も気をひきしめて行かないと姉の二の前になるかもしれない。

 

「私はこれからルキアに会いに行ってくるけれど、ルシアの方はもう少し時間が経ってから会いに行った方が良いわ。今行ったら疑われると思うから」

 

「そうする。それじゃあお姉ちゃん頑張って」

 

「貴女もね」

 

私達は話し合うと別れた。さて、今すぐにルシアさんに会いに行くのはできないからどこかで適当に時間をつぶして……って、あれってルシアさんじゃ?

 

「! ……フィアナ」

 

「ルシアさん。そんなに慌ててどうしたんですか?」

 

ルシアさんも私に気付きこちらへと近寄って来る。私は不自然にならないように意識しながら声をかけた。

 

「いや、何でもない。それよりティアを見かけなかったか」

 

「お姉ちゃんならまた仕事を探しに行ってると思うけれど、ルシアさんお姉ちゃんと何かあったの?」

 

彼の言葉に私は嘘を重ねる。ルシアさんには悪いけれど、今姉がルキアさんの所にいる事を教えるわけにはいかないからね。

 

「お前が気にするほどの事ではない。……いや、実は先ほど俺のところを訪ねて来てな。隣国の王子が行方不明になったことについて何か知らないかと聞いてきた。噂がこうも容易くこの国にまで浸透してしまっているとは……何とか手を打たねばならないな」

 

「その、私もルチアさんから話を聞いて驚いていたんだけれど、隣国の王子様が行方不明になったって、それがもし本当なら一体これからどうなってしまうのかな? まさか……他の国との戦争とか起こったりしないよね」

 

「お前が心配することはない。あいつが、死んだという証拠は何一つとしてないということはどこかで生きている可能性もある。あいつの事だから真相を掴もうと身を潜めているに違いない。俺の考えではあるが、船の事故とあいつの行方不明。この二つはただの偶然だとは考えていない。何者かが王位継承者であるあいつの命を狙った犯行だと考えている。そしてその黒幕は意外にザールブルブ国内の王宮にいる誰かではないかとも思っている」

 

私が尋ねると彼はすらすらと説明し出した。

 

「どうして、そう思うの?」

 

「先の王が亡くなったばかりであいつが行方不明になったからだ。友好関係を結んでいるこの国が先王の死去をしったのもつい最近だというのに、その事を交流のない他国が知る機会があるとは思えない。つまり、内部の人間の仕業と考えるのが普通だろう」

 

私の言葉にルシアさんはそう教えてくれる。でも民間人である私にここまでいろいろ教えてくれるなんて彼らしくない。どうしてだろうと疑問に思ったので私は聞いてみる事にした。

 

「そ、そんなことが……あれ、でもちょっと待って。どうしてそんな事を私に教えてくれるの?」

 

「ティアが聞きたがっていたからな。だからお前が代わりにあいつに話してやってくれ。何に首を突っ込んでいるのか知らないが、無理はするなともな」

 

「う、うん。分かった」

 

ルシアさんがここまで話してくれたのは姉が聞きたがっていたからだと。本当に姉の事となるとルシアさんて何でも協力してしまうのね。本当なら国家秘密級の内容なんじゃないかな。だけどこれである程度の情報は集まった。さあ、家にいるフレンさんに聞いてきた内容を教えてあげなくちゃ。

 

「それじゃあ、私そろそろ帰るね」

 

「あぁ。最近変な奴がうろついているという情報がある。気を付けて帰るんだぞ」

 

私が言うと彼がそう忠告してくる。変な人がうろついてるのか……もしかして以前レオンさんが言っていた人攫いとか? 気を付けて帰ろう。

 

ルシアさんと別れた私は真っすぐに家に帰るとリビングで待つフレンさんの下へと向かった。

 

姉も数分後に帰って来て私達は今日得た情報を話し合うこととなる。

 

「二人とも有り難う」

 

「今の話で何かわかったことはある?」

 

私達の話を聞いた彼が礼を述べると姉が何かわかったかと尋ねる。

 

「大体予想していた通りの話だった……としか言えない。父が亡くなり俺が後を継ぐのをよしと思わない連中が俺の命を狙った。そう考えてはいたからな。勢力を持ちたい連中が仕組んだことだろう」

 

「一体誰がそんなことを企てているんでしょうか」

 

「今はまだ分からないが、一つ手はある」

 

私の言葉にフレンさんがそう言うと私達へと内緒話するように顔を近づけた。

 

そうして彼から聞いた意外な作戦に私達は驚きを隠せず目を見開く。

 

「……危険な賭けだが、どうだ? やってくれるか」

 

「勿論です」

 

「うん。フレンの言う通りなのだとしたら、これが上手くいけば黒幕と結びつく可能性はあり得るものね」

 

フレンさんの言葉に私達は返事をする。でも、本当にあの人達がフレンさんの命を狙う人物とかかわりがあるのだろうか? もし本当だとしたらどうして……でも、その通りならば辻褄はあう。本当にそうなのかどうかは明日あの人達に話を聞きに行けばわかるよね。

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