カーネルの命を受けて隣国オルドラの王国魔法研究所に潜伏してから暫く経った頃。フィアナにそっくりな女の子が姉と一緒に尋ねて来た。始めは彼女の娘さんかと思っていたが同一人物であることに気付く。それと共にあの時私を助けてくれたあの人が言いたかったことを理解した。
度々やってきた彼女達だが、ある日フレン王子と一緒にやって来る。わたしはレオンと一緒にその場から逃げてこれからどうしようかと考えた。
「わたしの命を救ってくれたフィアナとアンナさんとルークさんの娘さんを巻き込むなんてしたくないわ」
レオンに偵察に行ってもらっている間わたしは複雑な心境をごまかすかのように言葉にしてみる。
「だけど王子の側にあの子達はいる。彼女達を巻き込まないでなんとか王子だけ狙う方法を考えないと」
思案してみるもいい案がなかなか浮かばない。
「でも、本当にこのままカーネルの言う事を聞き続けていいのかしら。女王様の命に従い続けて本当にいいの? だって、カイル王の息子をわたしが殺すなんてそんなことできるはずないじゃない。だって、カイル王は孤児となってしまったわたしを王宮に住まわせてくれてそこで生活できるように手配してくれた。魔法の勉強がしたいといったわたしに師匠を付けてくれてそして魔法使いとして王宮で暮らせるように手を回してくれた。一介の魔法使いにしてはこれ以上にないほどよくしてもらってきた。その恩を仇で返すなんてそんなことしていいはずがないわ」
カイル王への恩を考えるとその息子の命を狙うなんて本当はしたくない。でも命令に背くほどの度胸をこの時のわたしは持ち合わせてはいなかった。
「わたし、どうすればいいのよ……」
泣きたくなるほど弱音を吐くも誰も答えてくれる者はいない。
「そうだわ。王子の命を奪ったふりをすればいいのよ。フィアナ達も巻き込まないように王子だけ睡眠薬で眠らせてこっそり連れて行って女王様達が探し出せない程遠い国に転送魔法で飛ばす。そうすれば命を助けることができるわ」
良い事を考えつきそれでいこうと思う。
「レオンはフィアナに何か恩を感じているみたいだし、フィアナの名前を出せば協力してくれるはずよ。それでいきましょう」
我ながら名案を思い浮かんだと喜びながらレオンが帰って来るのを待った。
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