追憶の誓い

~時渡りのペンダント~
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七章 決戦 (共通ルート ベルシリオルート)

公開日時: 2022年4月3日(日) 03:00
文字数:2,838

 扉を開け放った私達の前には女王と第二王子それからベルシリオさんがいていきなり扉が開いた事に皆驚いていた。

 

「女王、そこまでだ!」

 

「お兄様、ご無事だったのですね」

 

「フレン……」

 

フレンさんの言葉に第二王子が喜び笑顔になる。そんな彼とは対照的に顔色を悪くする女王。

 

「俺の命を狙い船を事故に見せかけて沈没させ、その罪をオルドラの国王に被せようとしたこと、そして大勢の人を犠牲にする戦争を始めようとしている事。その全ての罪を償ってもらうため俺は、貴女に刃を向ける」

 

「え?」

 

彼の言葉に第二王子が驚き母親を見上げた。

 

「お母様、本当にお母様がお兄様を殺そうとしたのですか? それを隠し、全ての罪をオルドラの国王様に被せようと? そんな……そんなことを……」

 

「待ちなさいアレン、すべては貴方のためです。国王の後を継ぎザールブルブの王となるにふさわしいのはフレンではなく貴方なのに。それなのに国王はフレンを跡取りにすると言ってきかなかった。ですからフレンさえいなければ貴方が自然と王の座につけるのですよ。貴方こそ王にふさわしいのです」

 

第二王子は言いながら母親から距離を取りフレンさんの方へと駆けだす。その背中に向けて女王が叫び制する。

 

「お母様のしていることは間違いです。お兄様の命を狙うだなんて……そんな、そんなことをしてまでぼくは王の座なんて欲しくない! それに王にふさわしいのはぼくではなくお兄様です。お母様は間違ってる。ですから、ぼくはもうお母様のいうことなんて聞きません。聞きたくありません。ぼくはお兄様のお手伝いをします」

 

「アレン!」

 

きつい眼差しで母親を睨みやり言い放った第二王子へと女王がヒステリックな声で叫ぶ。

 

「……仕方ありませんね、貴方まで私に逆らうというなら手加減は致しません。世界を掌握する手始めにまずはこの国ごと貴方達には消えてもらいます」

 

「っ! 女王様、ここであの魔法を使ってはなりません!」

 

女王が落ち着きを取り戻すとそう言って赤黒い魔法陣を部屋中に描き出す。その様子にベルシリオさんが止めるように言う。

 

「まさか、古代の破滅の魔法を使う気か?」

 

「俺が何とかする。お前達は逃げろ」

 

ルシアさんの言葉にフレンさんが切羽詰まった声で言った。

 

「お前一人で何とかなるものか。魔法を使うことはできないが頭脳戦は得意だ。最後まで女王を止められる方法を考える」

 

「ぼくもお兄様のお手伝いをします。ここで逃げたらきっと後悔する。ですから……」

 

「私も逃げません。最後までここに残ります」

 

私達はそれぞれ決意のこもった眼差しでフレンさんを見やり言う。その言葉に彼は小さく頷き了承する。

 

「分かった。ならお前達の好きにしろ。俺は全魔力を注ぎ防御壁を作る。なんとか破滅の魔法を食い止めてみる」

 

「ぼくもお兄様を援護します」

 

「いいか、無駄に魔力を消費してはいけない。魔法の発動するタイミングを俺が教える。お前達は防御壁をはる準備をしてろ」

 

フレンさんが言うと右手を突き出し魔法陣を構成しだす。

 

その彼の横に並び第二王子も左手を突き出しフレンさんの魔法陣に重ねるように自分の魔法陣を描き出す。

 

そんな二人の背後へと立ちルシアさんも話す。私も彼等の側へと近寄り何にも出来ないけれどパワーを送る気持ちで彼等の肩に手をかけた。

 

そうして私達が死を覚悟して女王と対峙していた時だ。

 

「ちょっと待った! まだ諦めるな。助かる方法が分かったんだ!」

 

「私封印の魔法のやり方を教えてもらってきたの、今からやるからもう大丈夫よ」

 

ルキアさんの声が聞こえてきたと思うと姉が私達の前へと飛び込み踊りながら魔法陣を描き出し始める。

 

その様子に呆気に取られている間に姉の魔法陣は完成し女王の魔力は封印され彼女はその場に膝をついた。

 

「……」

 

「ベルシリオさん……」

 

負けを認めたベルシリオさんもその場に剣を捨てる。その様子に私は彼に何か言いたくて口を開いたが途端に胸が痛み息をするのも苦しくなった。

 

「っ……」

 

「フィアナ!」

 

最初に感じた激痛よりも痛む胸と呼吸困難になって意識がもうろうとしていく中で姉の悲痛な悲鳴を聞いた。私このまま死んじゃうのかな。ベルシリオさんがどんな気持ちで女王の命に従い続けていたのかも知れないままさよならも言えないまま……霞んでいく視界の中でベルシリオさんが複雑な心境で私の事を見ている様子が見えた気がした。

 

「ん……」

 

生ぬるい液体が喉を通っていく感触に私の意識は再び浮上する。

 

「フィアナ!」

 

「間に合ってよかった……」

 

涙を目に一杯溜めながら笑顔で見てくる姉に安堵した顔をするヒルダさん。

 

「私、死んだんじゃないの?」

 

「オレ達が駆け込むのがあと一秒でも遅かったら間に合わなかっただろうな」

 

死んだと思っている私にレオンさんがそう言った。

 

「私、助かったんだ。よかった……」

 

「フィアナ?」

 

安心した途端体中から緊張が抜け私は再び目を閉ざす。姉の驚いた声を遠くで聞きながら私は夢の世界へと旅立った。

 

「ん……っ」

 

再び意識が浮上して見えてきたのは立派な天蓋。驚いて飛び起きると周りを見回した。

 

「あ、フィアナ目が覚めたのね。待ってて今皆を呼んでくるから」

 

自分の現状を理解できないまま姉の言葉に頷き待つこと数秒。すぐにフレンさん達が飛び込んでくる。

 

「あの、ここはどこなんですか?」

 

「ここは王宮の客室だ。あの後気絶したフィアナをここまで運んで寝かせた。国王様には話をしておいたから心配はするな」

 

「それから、目覚めたばかりで悪いがあの後どうなったのかきちんと説明するな」

 

私の疑問にルシアさんが答えてくれる。それで納得しているとフレンさんが真面目な顔で話しかけてきた。

 

それから聞かされた話しによると、国王様は牢屋に捕らえられていたがお父さんとお母さんが助け出し皆で安全なところまで避難していたそうだ。どうしてお父さん達がと思ったがどうやら封印の魔法を知っていてそれを扱ったのがお母さんで、お父さん達と国王様は昔ながらの友人同士だったらしい。それで助けに向かっている途中でヒルダさん達と会い姉に踊り方を教え王宮へと一緒に向かってきたそうだ。それから女王とベルシリオさんは今地下の牢獄に投獄されていて、それぞれの罪の重さによって処罰を下すそうだ。ザールブルブにいるカーネルさんの下にも兵士達が向かっていてそのうち捕らえられるだろうとのこと。

 

「そう、ですか……全てが無事に終わって良かったです」

 

「フィアナ……」

 

本当に良かったと思う反面ベルシリオさんの事が気になって仕方がない。そんな気持ちで答えたからだろうか私の顔を見てフレンさんが心配そうな顔をする。

 

「ともかくフィアナの体調がよくなるまではここで療養していいと言われている。俺達もしばらくの間はここに留まる。だから何か言いたい事があれば俺に言ってくれ」

 

「有難う御座います」

 

もしかしてフレンさん私がベルシリオさんの事を気がかりだって思っていることに気付いているのかな? ともかく体調がよくなるまでの間私はこの部屋で過ごすこととなった。

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