女王の企てで隣国の王が亡くなり、さらには船に乗っていた第一王子であるフレン王子も行方知れずとなった。全ては女王がアレン王子を王位につけるために仕組んだこと。
だが女王の目論見はすべて失敗に終わる事だろう。それが分かっているからこそ我は落ち着いて全ての出来事を見届ける覚悟ができていた。
「王様、それではそろそろ行って参ります」
「あぁ、ハンス。アンナとルークのこと頼んだぞ」
女王に命を狙われている二人が捕まらないように皆で手を貸して助けている。それを知っているのはかつての仲間達だけだ。
万が一女王により二人がザールブルブの城に捕まったとしてもジャスティンやリックやアンジュが何とかしてくれる。そしてハンスには二人が無事にこの城まで来れるように転移魔法で逃がしてもらう手はずとなっている。
フィアナとティアの家にフレン王子がいる事も分かっている。そこにルシアとルキアが一緒にいる事も。
だからハンスに頼みルチアに会いに行ってもらい言伝を頼んでおいた。後はフレン王子達が女王を何とかしてくれることだろう。
全ての真実をフィアナから聞かされた時は正直驚いた。だけど、同時に女王に対して怒りを覚えた。夫であるカイル王の命と血のつながった我が子であるフレン王子の命それを狙うなんてとてもじゃないが人間がする事ではない。
「ましてや、古代の破滅の魔法を使い世界と戦争を起こそうなどと考えているとは許せないことだ」
かつて自分達が戦ったザハルの帝王の事を思い出しながら呟く。
だからと言って怒りに身を任せて女王へと刃を向けるほど愚かではない。全ての真相を知っていることを彼女は知らない。ましてや命を奪ったはずのカイル王が生きていてこの城の別館にいるとは考えてすらいないはずだ。我がへまをすれば全てが水の泡となってしまう。だからここは冷静に全ての事が終わるまで言動には十分に注意しないといけないのだ。
「久々に演技をするか」
久々に化かして見せよう。かつて王子であることを隠しアンナ達と旅をしていた時のように手の内を読まれないように何も気づかないふりをして女王を迎え入れよう。
もう直ぐこの城へとやって来るだろう女王をもてなすために我は準備に取り掛かった。
それぞれのキャラ視点で紡がれるサブストーリー①はここまでです。次章からは攻略キャラクター達の視点のサブストーリーとなります。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!