ドロシーさんの転移魔法をつかいザールブルブの城下町までやって来る。ここまでくる間に探知魔法を使い封印の魔法を扱える人を探しながら来たがその人物の反応は現れなかった。そこで私達は先に千年樹の実があるとされるお城へと乗り込むことを決める。
「ここまでは何とか来れたけれど問題はここからよ。王宮にいる連中にばれないように城に潜入しないといけない」
「それで、何かいい作戦は考えてあるのか?」
ドロシーさんの言葉にルキアさんが尋ねる。
「見張りが少ない裏門からなら城内に潜入することができるはずよ」
「兵士は俺が眠らせておくから、扉を開けたらすぐに入って来いよ」
彼女の言葉にレオンさんも話す。そうして私達は裏門へと向かい何とか城の中へと潜入することに成功した。
「上手くいったな。それで、千年樹の実がある場所は分かってるんだろう。案内してくれよ」
「そ、それが……千年樹の実はとても貴重なもので王宮が厳重に管理しているものだからわたしにはどこにあるのか分からないのよ」
「オレも見当がつかない」
ルキアさんの言葉に二人が申し訳なさそうな顔で話す。
「はぁ? この城で働いていたのに全然頼りにならねぇんだから」
「仕方ないでしょ。一介の魔法使いじゃ城の内部まで入ることは許されなかったんだから」
「オレも行ける場所は限られていたからな」
ルキアさんの言葉にドロシーさんが慌てて説明する。レオンさんもそう言った。
「そこにいるのは誰だ!」
「「「「っ!」」」」
男性の鋭い声が聞こえ私達は見つかったと思い身構える。
「あら、フィアナ、それにルキアも。あなた達なんでここに?」
「え? お母さん、お父さん?」
聞こえてきた声にそちらを見やるとザールブルブの兵士二人と一緒に立っているお母さんとお父さんの姿があり私は驚く。
「お母さん達こそどうしてここにいるの?」
「実は女王様によって捕らえられてしまってね。でもここにいるお友達に助けてもらったのよ」
お母さんの言葉にますます意味が分からなくなって疑問符を浮かべる。どうしてお母さんとお父さんが女王様に捕まえられたりなんかしたのだろうか。
「アンナさん、ルークさん。やはり女王に命を狙われていたんですね」
「えぇ、その通りよ。女王様は私の事を恐れていたのね。だから捕まえて殺そうとしていたんだわ」
驚く私をよそにドロシーさんがお母さん達に話しかける。それに答える言葉を聞いて説明して欲しいと言わんばかりに私は二人を見詰めた。
「フィアナ。貴女のお母さんが古代の封印の魔法を踊れる唯一の人物なのよ。だからご両親は命を狙われていた」
「え?」
「なるほど、それで二人あての手紙をわざとルシア宛てにして送っていたわけだな」
聞かされた話しに驚く私の耳にルキアさんの声が聞こえてきてどういう事と言いたげに見詰める。
「お前達を守るためだ。二人のいる家が特定されていればお前達も命を狙われていた。もしくは捕まって人質にされていたかもしれない。だからあえて王宮あての手紙に紛れ込ませていたんだ」
「そ、そうだったんだ」
彼の言葉にようやく理解ができ私は納得する。お母さんとお父さんは私達を守る為今まで世界中を飛び回る生活を続けていた。ルシアさん宛てにして手紙を王宮に送っていたのも家を特定されないための事だったのだと。お母さんとお父さんの愛情の深さを知り私はなぜだか涙がこみ上げた。
「それで、お二人には協力してもらいたいのですが」
「分かっているわ。女王を止めるためにあの踊りを踊ってほしいと言いたいのでしょう。だけどごめんなさいね。私達のお友達が今とても大変な目に合っているの。それでこれから二人で助けに行くところなのよ」
「その代わりにティアならあの踊りが踊れるはずだ。何しろ小さなころから体で覚えさせてきたからな」
ドロシーさんの言葉にお母さんが言うとお父さんもそう話す。それからお母さんから封印の踊りについて姉に伝えてくれと頼まれ方法を教えてもらう。
「二人ともそろそろ行かないと」
「見つかってしまうぞ」
「俺達はそろそろ行かないといけない」
「何をするか分からないけれど、皆気を付けてね」
王国騎士団の人達がお母さん達へと声をかける。それに二人は頷くと私達へと別れの言葉をかけて立ち去っていった。
「……これで封印の魔法の方は大丈夫ね。後はフィアナのために大樹の実を見つけ出せれば問題は解決よ。それで、二手に分かれて探した方が良いと思うのだけれど」
「それならオレとフィアナでドロシーとレオンの二手に分かれて探そう」
ドロシーさんの言葉にルキアさんが話す。
「ちょっと待って、貴方達はこの城の内部に詳しくないでしょ」
「お前達が裏切ったことはまだ誰にも知られていない。もし誰かに見つかったとしても何とかごまかして逃げることはできる。二人には俺達が入れない城の内部に潜入して探してきてもらいたいんだ」
慌てて制する彼女へと彼が説明する。
「た、確かに言われてみればそうね。……分かったわ。ならわたし達は城の内部を探してみるから。貴方達は東側の塔を調べてみて。大樹の実が見つかっても見つからなくても三時間後には一度ここに戻ってくるように」
「分かった」
私達は二手に分かれて調べる事になる。東側の塔ってここから見えるあの建物の事よね。確かに何かありそうな雰囲気。
「それからフィアナ。これを貴女に渡しておくわ。眠り薬よ。ちょっとばかし強力に作っているからちょっとやそっとじゃ目を覚ますことはないわ。兵士に捕まりそうになったらこれを使って逃げなさい」
「はい、分かりました」
「なぁ、ドロシー。それオレにも少し分けてくれないか」
「え、えぇ。いいわよ」
眠り薬の入った小瓶を受け取っているとルキアさんがそう言ってドロシーさんに頼む。彼女は不思議に思ったが承諾して彼へと薬を渡した。
「それじゃあそろそろ行こう」
「気を付けてね」
レオンさんの言葉にドロシーさんも言うと私達は別れる。そうして私達は東側の塔を調べる事となった。
「何かあるかと思ったが、特にこれといってなかったな」
「そうだね。あったのは倉庫に乱雑に積み重なった武器ばっかりで、見張りの兵士も少なかったからここじゃなさそうだね」
東の塔を攻略していた私達は最上階まで見たが特にこれといって何も得られず仕方ないので一度待ち合わせ場所まで戻る。
「っ。フィアナ隠れろ」
「え?」
「ちょっと、わたし達が何したって言うのよ!」
ルキアさんが何かに気付き私を壁の後ろへと押し込む。訳が分からなかったが次に聞こえてきた声に私は一気に意味を理解した。
壁からそっと外の様子を窺い見ると兵士達につかまったドロシーさんとレオンさんの姿があり二人の前にはカーネスさんが立っていた。
「何をしたかですか、それはこちらが聞きたいですね。こそこそと何を嗅ぎまわっていたんです?」
「別に何も嗅ぎまわってなんていないわよ」
「例えそうだとしてもあなた達は立ち入り禁止の区間に勝手に入り込んだ。これは見過ごすことのできない大罪です。この二人を牢屋へと連行しなさい」
やり取りを見守っていると二人は牢屋へと連れて行かれてしまった。
「ど、どうしよう。ドロシーさん達捕まっちゃったみたい」
「落ち着け。あいつらがいなくなったらすぐに二人を助けに向かうぞ」
「さて……そこに居ることは最初から分かっています。10数える間に出てこなければ命はないと思いなさい」
「「!?」」
小声で話し合っているとカーネスさんの声が聞こえ私達の間に緊張が走る。
「俺がおとりになる。お前はその間に逃げろ。そんでドロシー達を助けに行くんだ」
「待って、ルキアさんがおとりになるなんてだめだよそんなの。私がおとりになる」
「何言ってるんだ。そんな危険なことお前にさせられるわけない」
ルキアさんの言葉に私は慌てて答える。それに彼が驚いて言う。
「相手が私だって分かればカーネスさんも油断するかもしれない。だからその間にルキアさんはドロシーさん達を助けに向かって。さあ、行って!」
「っ……フィアナ。俺達が必ず助けに行くからそれまで無茶なことすんなよ」
私は言うとルキアさんの背中を押し出す。彼は私の覚悟を知りそう言うとこの場から走り出した。姿が見えなくなったのを確認するとカーネスさんの「10」という声と共に壁から飛び出し彼の前へと出る。
「……ネズミは貴女でしたか」
「……カーネスさんはザールブルブのお城に仕えている人だったんですね」
私の姿を見たカーネスさんが初めて見せる冷たい笑みで呟く。私はなんとか時間稼ぎをしようと口を開いた。
「なぜ貴女がここにいるのか分かりませんが、愚かな事をしましたね」
「カーネスさん。貴方は私にとても優しくしてくれました。そんな貴方がどうして……」
冷ややかな眼差しでそう言ってくる彼に私は必死に訴える。
「貴女には関係のない事です。……さて、もう一匹のネズミが何処に行ったのか教えてもらいましょう」
「な、何の話ですか」
カーネスさんの言葉に私は白を切る。ルキアさんが一緒にいたことがバレていたなんて。でも絶対に彼の事は教えれない。
「白を切りとおせるとお思いですか? 貴女が一人でここに来たとは考えていません。誰かと一緒に来たのでしょう。さぁ、今素直に言えば命だけは助けてあげますよ」
「っぅ!?」
カーネスさんの言葉を聞きながら心臓がドクンと脈打ちその痛みに胸を押さえる。
まさか魔法の効果が発動したの? だめ、今ここで倒れたらルキアさん達を助けられない。そう思う気持ちとは裏腹に私は息をするのが苦しくなりその場に倒れ込む。
「!?」
かすれ行く視界の中でカーネスさんの焦った顔を見たような気がした。そこで私の意識は途切れる。
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