追憶の誓い

~時渡りのペンダント~
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カーネス視点

公開日時: 2022年5月17日(火) 03:00
文字数:2,289

 王子の行方を探しながら隣国オルドラで俺の息のかかった者達から情報収集をしていた時だ。風になびく銀の髪が目に飛び込んできた。

 

「! ……そこのお嬢さん。少し宜しいですか?」

 

あの人かもしれないそう思い呼び止める。

 

「え? 私……ですか?」

 

「はい、そこの貴女です。……う~ん」

 

しかしふり返った彼女の姿は俺の知っているあの人よりずいぶんと幼くて、記憶の中ではもう少し大人の女性だったような気がすると考える。

 

「?」

 

「いや、失礼。仕事をしてくれそうな大人の女性を探していたのですが。見たところ貴女はまだ幼いようですから、依頼主の条件に合わないなと思いまして。……呼び止めておきながらすみません」

 

しかし呼び止めたのはこちらだ。不思議そうな彼女へと取り繕うように話す。

 

「それよりも、何かお困りのようですが、どうかされたのですか?」

 

「ええっと……」

 

記憶の中の彼女ではなかったが、あの人とそっくりなこの少女の事が気になって仕方ない。何か手助けできればと思い尋ねると困った顔で悩んでいるようだった。

 

「実は私魔法や魔法使いについて調べてまして……」

 

「魔法や魔法使いについて……ですか? また珍しいものを知りたがりますね。どうして調べているんです」

 

なぜ魔法や魔法使いについて知りたがるのか分からないが、そんなことを知って何の得になるのか。まさか彼女は魔法使いにでもなりたいと思っているのだろうか。聞きたい事は沢山あったが初対面でいろいろと追及するのは失礼だろうと思い違う言葉で問いかける。

 

「それは……」

 

「……まぁいいでしょう。お困りのようですし私が知っている事でよろしければ教えて差し上げます」

 

「本当ですか?」

 

あきらかに困らせている。彼女を戸惑わせたいわけではない。俺が協力できることならなんでもしよう。そう思い話すと少女は食らいついてきた。

 

「えぇ。ただしタダで情報を教えることはできません。情報と同じだけの価値がある物と等価交換するというのならば教えて差し上げましょう」

 

「等価交換?」

 

ザールブルブ国の王宮では当たり前の事だがここはオルドラ。そして彼女は一般人だ。等価交換なんて意味が分からないだろう。それに気づき説明するため口を開く。

 

「情報を得るためにはそれと同等の価値がある物と等価交換するのが普通なんです。貴女が持っているものの中で情報と同じ価値があると思うものと貴女が欲しがっている情報を交換する。それが等価交換です」

 

「これでどうでしょうか?」

 

俺の言葉に彼女は考え込むように黙り込む。しばらく様子を見ていたら首に下げているペンダントを手に取りこちらへと差し出してきた。

 

「どれどれ……こ、これは!?」

 

そのペンダントには見覚えがあった。これはあの人が首につけていたものと同じ。彼女にとってとても大切な物のように見えた。という事はこの少女にとっても大事な物であることは確か。それを差し出してまでも知りたいという情報。どうしたものかと悩む。

 

「う~ん……」

 

彼女にとってとても大切なペンダント。そんなものを頂くわけにはいかない。

 

「……これはお返しします」

 

「え?」

 

普段の俺ならたとえ大切な品物だったとしても差し出してきたなら貰っていただろう。だが、彼女は特別だ。困らせてしまったり悲しませたくないと思ったのだ。あの人とこの少女がどう繋がっているのか今はまだ分からない。このペンダントは唯一あの時の女性を探し出す手がかりになる。それを持っているという事はこの子はもしかしたら真相を知っているかもしれない。等と考えながらも表面には出さずに話を続ける。

 

「貴女の熱意には負けました。本来なら等価交換しないといけませんが、今回は特別にタダで情報を教えて差し上げましょう」

 

「いいんですか?」

 

申し訳なさそうな顔の彼女に大丈夫だと伝え微笑みの仮面をつける。

 

「ええ。それに……見たところそれはとても大切にしているもののようですし。そんな大事にしているペンダントを差し出すほど知りたい情報なのでしょう。ですから特別に今回は教えて差し上げます」

 

「あ、有難う御座います!」

 

何に首を突っ込んでいるのかは分からないが、彼女のためになるならば情報の一つや二つどうってことはない。それほどまでに彼女に似たこの少女の事を気に入ったのだ。そう思うことにする。心のどこかであの人と同一人物なのではないかとの声が聞こえるのを無視して。

 

「王国魔法研究所へ行きなさい。そこにいるヒルダという女性が魔法や魔法使いについて詳しく知っているはずですから」

 

「王国魔法研究所?」

 

「この国は魔法国家であるザールブルブ王国と友好関係を結んでいます。魔法使いをこの国に派遣しこの国は魔法について勉強し誰もが扱えるようになるための研究をしているのです。そしてオルドラ王国からは代わりに武術にたけた剣士を送り剣術についてを隣国に教えている。それが二つの国の外交の一環なのですよ」

 

聞いた事もないといった顔で不思議そうにする彼女に説明を続ける。

 

「知りませんでした」

 

「まぁ。一般人にはあまり関係のないことですからね。知らない人も多いでしょう。……自己紹介が遅くなりましたね。私はカーネスと言います」

 

「私はフィアナです。カーネスさん有難うございました」

 

「いえ、では私はこれで失礼します」

 

フィアナ……か。あの人の名前を知れたようなそんな嬉しい気持ちになりながら別れる。その後もあの人にそっくりな彼女の事が気がかりでこっそりと少女の様子を見に行った。

 

そしてフィアナとあの人が同一人物であると確証は得れなかったがそうなのではないかと思う自分がいた。全ての真相を知るのはもう少し後になってからである。

 これにて完結に御座います。誤字脱字などのチェックは一応しましたが、作者が見落としている部分もあるかもしれません。気付いた方はこっそり終えていただけると助かります。ここまでご拝読下さり誠に有り難う御座いました。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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