~花子視点~
何が起こったのかわからなかった。
ガラスが割れて破片が降ってきたかと思えば、お腹に誰かの腕が回されて抱き上げられた。
私を抱き上げたのは、真っ白な仮面をつけた黒髪の男の人。
うん、あなたどちら様ですか?
どうしよう、婆ちゃん。
顔も名前も知らない人にだっこされてるんだけど、私はどう反応するのが正解なのかな??
そう思っていれば、周囲からなぜか悲鳴が上がった。
「なっ、聖女様!?」
「いやああああ、魔王よ!!」
床の人に向かって槍を突きつける兵士さん。
悲鳴を上げるドレスを着た女の人。
なるほど、これがカオスか。
あと、ドレスを着た人よ。
魔王と言った??
え、この仮面の人って魔王なの?
私はモブなのに、魔王とエンカウントしたわけ?
いや、それって完全に死亡フラグじゃん!!
そう思っていると、憤怒の形相で剣を抜きながらカドリックさんが近づいてきた。
「クソッ、聖女様を離せ!! その御方は、貴様のような汚らわしい存在が触れてよい方ではないのだぞ!!」
「ふん…………軟弱な貴様に何ができる」
「なんだと!! 俺は、貴様を倒す勇者だぞ!! 貴様など、この刃の錆にしてくれる!!」
マジか、カドリックさん。
あんた、その体型で魔王さんと戦おうとしてるの??
抱っこされててわかるけど、魔王さんって結構筋肉あるよ?
しかも軍服着てるし、絶対に物理でも強い人だよ?
カドリックさん、もしかして運動ができるおデブさんだったの!!
そう混乱しながらも、抱き上げている魔王さんの腕の力が強くなったのを感じた。
「…………魔王さん?」
魔王さんの顔を見上げると、魔王さんが私の顔を凝視していることに気づいた。何分ぐらい、そうしていたのかわからない。周囲に武器を持った兵士がいるのに、魔王さんはじっと私を見ていた。
「…………お前は」
魔王さんはそう呟いた瞬間、私の顔の前で手をかざした。
…………あれ?
不思議に思った瞬間、急に強い眠気が襲ってきた。
「…………聖女は、貰っていく」
私が最後に聞いたのは、魔王さんのそんな冷たい言葉だった。
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