【第1章完】ゲツアサ!~インディーズ戦隊、メジャーへの道~

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第2話(2)女子大へ行ってみた

公開日時: 2023年9月12日(火) 18:39
文字数:1,712

「いやあ、京都はやっぱり交通機関が充実しているよね~」

「……ふああ~」

「おいおい輝っち~? ちゃんと寝ないとダメだよ~?」

 あくびをする輝を凛がからかう。

「誰が言っている、誰が! お前がなかなか寝かせてくれないから!」

「え……?」

「ん? はっ⁉」

 輝は周囲から視線が集まっていることに気付き、顔を赤くする。

「いや~輝っち、これまた大胆な発言を……」

「う、うるさいな! 大体……」

「うん?」

「なんでお前がここにいるんだ⁉」

「いや、用事があるんだよ」

「誰に?」

「輝っちに」

 凛が輝を指差す。

「わたしはないぞ!」

「アタシはあるから」

「勝手なことを言うな、大体わたしは専門学校の授業があるから……」

「大変だね~」

「そういうお前だって、短大はどうした?」

「あ~それはちゃんと出るよ、ご心配なく」

「そうか……」

「ってかさ、昼休みは空いてるんでしょ?」

「ま、まあ、それはそうだが……」

「じゃあ、その辺りでまた集合しようよ」

「どこにだ?」

「昨日言っていた場所だよ」

「ああ……」

 輝が思い出したかのように頷く。

「行ってみる価値はあるでしょ?」

「適当に言ってみただけなんだが……」

「いや、案外いい線突いていると思うんだよね……」

「そうか?」

 輝が首を傾げる。

「そうだよ」

「今日じゃなきゃ駄目なのか?」

「やっぱり人が多いのは平日でしょ?」

「まあ、それはそうだな……」

 輝が頷く。

「それじゃあ、後でまた集合しよう!」

「そんなに時間は取れないぞ?」

「大丈夫、大丈夫♪」

 2人は一旦別れる。

「……ったく……」

「ごめん、ごめん、お待たせ~」

 凛が謝りながら集合場所に現れる。

「まったく、言い出しっぺが遅れるな……」

「いやいや、輝っち、そこは違うでしょ~」

「ん?」

 輝が首を捻る。

「『わたしもちょうど今来ばかりだから……』って、ちょっと恥ずかしがりながら応えるところでしょう?」

「な、なんでそんなカップルみたいなことをしなくてはならんのだ!」

「え~誰もカップルなんて言ってないんだけど~?」

 凛が悪戯っぽく口元を抑える。

「う、うるさい! ふざけるなら帰るぞ!」

「ああ、ごめんごめん、ちょっと待って……」

 その場を離れようとする輝の前に立って、凛が両手を合わせて頭を下げる。

「ふん……」

「機嫌治った?」

「別にそこまで機嫌を損ねてはいない……」

「それなら良かった」

 凛が笑顔を浮かべる。

「ただな。提案しておいてなんだが……」

「え?」

「ここを探すのは大変なんじゃないか?」

 輝が指し示した先には広大なキャンパスが広がっていた。

「お~さすが、名門女子大だね~建物も立派だし~」

 凛が感心する。

「学生数も桁外れに多い……わたしたちと同様にコントローラーをもらった者を見つけ出すのは困難だ……」

「でも、輝っちの推測はあながち間違ってはいないと思うんだよね~」

「そうか?」

「うん、アタシたちと同世代の女の子にコントローラ―やコネクターが配られた可能性は十分に考えられると思うよ」

「ふむ……しかし、この規模ではな……」

 輝が後頭部を抑える。

「なんでお昼に指定したか分かる?」

「そういえばなんでだ?」

「それは行けば分かるよ!」

「あ、お、おい!」

 凛が大学構内に入っていく。輝が慌ててついていく。

「……」

「なるほど、学生食堂か。いや、この場合はレストランと言った方が良いか……」

「ここなら多くの学生が出入りするよ」

「まあ、それは分かるが……この後はどうする?」

「え?」

「まさかずっと周囲の話に聞き耳を立てているのか?」

「う~ん、片っ端から聞き込みする?」

 凛が親指を立てて横にする。輝が首を振る。

「やめろ、つまみ出されるのがオチだ」

「どうしよっかね~?」

 凛は腕を組む。

「そこからはノープランだったのか……」

「一応eスポーツ同好会みたいのはあるみたいだけど……」

 凛が端末を取り出して、検索画面を輝に見せる。

「ほう、お堅いイメージがあったが、そういうのがあるのか」

「とりあえず、この同好会の方にDMを送ってみようか?」

「……なんて送るつもりだ?」

「『エレクトロニックフォ―スですか?』って……」

「即ブロックされて終わりだろう!」

「あ、送っちゃった……」

「おいおい……」

 輝が呆れる。

「あ、返信来たよ……」

「ええっ⁉」

 輝が驚く。

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