アランの謝罪とマヤの小言から解放されたのは深夜のころだった。
システィーナとは夕食の時に少し話をしただけで、それ以来会えていない。
きっと今頃眠っているだろう。
今夜は村長の家に泊めてもらえるということになった。
オレは村長の家に向かう前に離れにある小さな家に向かった。
この家にはニャンと双子の姉のミャンがいる。そして、ミーシャが昨日からつきっきりで看病しているはずだ。
「ミーシャいるか?」
ドア越しに声をかけると中から声がした。
中に入ると、二つのベッドの上によく似た二人の幼い猫娘。
「二人とも状態は安定しています。薬のおかげですね」
椅子から立ち上がろうとするミーシャをオレは手で制した。
「疲れているだろ……そのままで」
ミーシャはうなずき椅子に座りなおす。
オレも向い合せるように椅子を持ってきて座った。
座ると同時に身体が重くなる。
疲労がひどい。
一度死んだりもしたし、ゆっくり寝たとはいえ体力も万全とは言えない。
まともに体を休める暇などほとんどなかった。
生まれて……いや、目覚めてまだ三日目ですが、何か?
「かなり疲れているみたいね」
「まぁな……洞窟内は想像以上に難易度が高い」
「熟練の冒険者でも洞窟は大変みたいです。その時は猫人族にガイドをお願いするみたいですね」
ああ、猫人族には暗視の能力があるみたいだから危険を事前に察知できれば洞窟の探索の難易度はかなり下がる。いきなり大穴に落ちて死ぬことはないだろう。
LV45のシスティーナは足首のねん挫ですんでいたな。
オレYOEEEEEEE!
「システィーナはノゾミに感謝していましたよ」
「そうか……」
「もうお嫁にいけないとか言ってましたけど……」
「そ、そうか……」
やっぱオレやばいことしてた?
「……まさか洞窟内で!」
いやそれ勘違いだから!
ミーシャの視線が痛い。
何もしてないし、まあ、「ちょっとした不注意」でなんだか大変なことにはなったみたいだけど。
「そんなことはないと思いますけど、どうしてもガマンできない時は……言ってくださいね」
ミーシャが抱きついてくる。唇を重ねてきた。
オレの手が背中に伸びる。
「あ……ダメです。二人がいるから……♡」
おいおい。先に手を出してきたのはそっちだぜ。
「ちょっ……と……ダメですっ♡」
無理でつ! もう我慢できません!
「いいだろ?」
ミーシャは黙って頷いた。
これはミーシャの魔法だ。
素晴らしい回復魔法だ。
今までの疲れが一気に吹き飛んだ。
オレの聖剣が天を指す。
ミーシャがオレの唇に人差し指を当てる。
「もう……声を出さないで下さいね♡」
それからいっぱい楽しみました。
◆ ◆ ◆ ◆
「いっぱい……可愛がられちゃいましたね」
ミーシャは満足したように微笑んだ。
そのまま、すっと眠りにつく。
おやおや、着衣に乱れがありますね。
誰がこんな酷いことを!
ミーシャの衣服をきちんとして着せてあげる。
証拠隠滅? 何それ?
そんなことしてないし。
ただの親切で、着衣の乱れを直してあげただけだし。
治療に回復とこの二日間、彼女は頑張り通した。
それに追い打ちをかけるオレって鬼畜!
酷いヤツでした。
ゴメンナサイ。
オレはミーシャにキスをすると、彼女を隣の部屋まで運びベッドに寝かせてあげた。
いやはや、オレって紳士だ。
◆ ◆ ◆ ◆
ミーシャを隣の部屋に送り届け再び二人の眠る部屋へと戻る。
部屋の中はシンと静まり返っていた。
「そろそろ起きてもいいんじゃないか?」
ベッドの中でビクリと動きがあった。
もそもそと動き体を起こす。
「気づいていたんですね」
そう言ったのは、ニャンではなく双子の姉のミャンだった。
ゆっくりとした動作でベッドの縁に腰かける。病み上がりでまだ身体は本調子ではないだろう。
「初めまして。私はニャンの姉のミャン。妹を助けて下さりありがとうございました」
ミャンが頭を下げると猫耳がピクピクと動いた。
ぬおおおおおお!
何という破壊力!
ダメだ。落ち着けオレ!
スキル賢者ターイム!
二回もイッたんだから落ち着けるはずだ。
(報告。フェロモンを発動します)
マザーさんの報告。
ん? なんでフェロモン?
あれって落ち着かせる能力だよね。
途端にミャンの身体がビクンとなった。
「その……あなたにまずはお礼を……」
なんだか様子がおかしい。
病み上がりで体力もないだろうに。
ああ、だからフェロモンか。
これで落ち着かせてやろうって事だな。
「色々と……ありが……」
唐突にミャンがオレの腕をつかんだ。
「か、身体が熱いですぅ♡」
オレの手を彼女の胸に導く。
えっ? 何してんの?
「あの……少しだけでいいのです……」
ミャンの幼い胸にオレの手が触れた。彼女の身体がビクンと跳ねる。
あ、いや、ちょっと待ってください。
「ミ、ミャン……まずは落ち着こう」
薄暗い部屋の中、ミャンの瞳がきらりと光っている。
「ん……どうかしたのかにゃ?」
むくりとニャンが起きだしてきた。
――おお、これは天の助け!
「ニャン……助けてく……」
言いかけたオレの言葉は途中で止まる。
「あの……ニャンさん?」
ニャンの耳と尻尾はピンとなりオレのことをじっと凝視していた。ミャンと同じ雰囲気だ。
もしかして――二人とも――
(報告。二人とも発情状態にあります)
うをおおい! なんちゅうことしてくれとんじゃ。
(報告。予想外の状況です。この場からの即時撤退を推奨します)
しゃ――――っ!
マザーさんの警告もむなしくオレは二人に押し倒された。
「大丈夫だにゃ。最初は痛いかもしれにゃいけど、すぐに気持ちよくなるにゃ」
それはオレのセリフだと言いたい。
「天井の染みでも数えているうちに終わりますので」
ミャンも病人とは思えないほどに興奮しているようだ。
「覚悟はいいですか?」
オレの返答を待たずにミャンの唇が重ねられる。
二人との長い夜の始まりだった。
……これから後のことはまた別のお話! ってことで!
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