冒険者ギルドでの登録はマヤの活躍もありすんなりと行うことができた。
むしろオレの方がマヤに助けられた形だ。
おかげでマヤには「師匠」と「女王様」の称号が与えられた。
オレより目立ってね?
オレとマヤには金属製のプレートが与えられた。
オレたちに与えられた金属のプレートは青銅。
今後経験と実績を重ねるごとにランクアップしていくということだった。
ランク的には青銅(ブロンズ) → 鉄(アイアン) → 白銀(シルバー) → 魔法金属(ミスリル) → 希少魔法石(オリハルコン) → 神王石(アダマンタイト)となる。
ミーシャはアイアン冒険者だった。ミスリル級では上級の冒険者となりオリハルコン、アダマンタイトとなると伝説級の冒険者となる。
プレートには識別の魔法が付与されており、万が一死亡した場合でも、プレートがあればどこの誰かがわかるようになっている。それだけに身分証としての役割もあり、紛失すると高額な罰金が課せられる。
「依頼の受付や換金、武器の買い物等でこのカードが必要になります」
ローズがカードを手渡しながら説明してくれた。渡しながらしっかりと手を握ってくる。
「あの……また、来てくださいね!」
ローズはマヤの手を握りしめ何度も何度も確認していた。
百合な展開。
その時はオレも混ぜて下さい。
◆ ◆ ◆ ◆
ギルドを出て街の中を歩く。
科学という枠で見ればまだまだ発展途上なのだろうが魔法という観点で行けば最盛期だ。そんな世界だからこそ魅力がある。
街には活気があり、歩いているだけでも楽しい気分になる。
「まずは宿に向かいましょう」
ミーシャの行きつけの宿があるということだった。
中心街を離れ郊外へとたどり着いた。
「ここです」
ミーシャの案内した宿は一階が飲み屋になっていた。飲み屋兼宿「黒猫亭」
「こんにちは」
「あら、ミーシャじゃないか」
一階の飲み屋のカウンターはそのまま受付にもなっていた。
さすが顔馴染みの宿。
受付の恰幅のいい女性がミーシャに気軽に話しかけてきた。どうやらこの宿の女将さんらしい。
「また。お世話になります」
手続きを済ませ部屋のカギを受け取る。
「ところで……あれはミーシャのコレかい?」
女将さんが親指を立ててミーシャにウインクする。
「もう、そんなんじゃないですよ」
ミーシャは真っ赤になりながら否定した。
そこまで否定されるとなんだか傷つく。
「そうかい。アタシはてっきりアンタのいい人なんだと思っちまったよ」
女将さんは少し笑って、オレとマヤに握手を求めた。
「アンタは悪い人には見えないね。この娘もそうだよ」
マヤの頭をなでる。
「ミーシャを頼んだよ。この娘はアタシらの娘みたいなもんだからね」
「ああ、分かっているさ」
「しっかり面倒見るです」
オレたちの言葉に安心したように「頼んだよ」と声をかけられた。
「ところでミーシャ、アタシの渡した【あの本】は役に立っているかい?」
「おおおおおお、女将さんその話は今はしないで下さい!」
女将の言葉にミーシャは今までにない動揺をみせた。
なんだろう【あの本】って?
「おっと、そうだねぇ」
女将さんは意味深な笑みを浮かべた。
なんだろう。女同士の秘密というやつだろうか。
「部屋に行きましょう」
ミーシャに促され、オレたちは部屋に向かった。
部屋は思ったより広くベッドが一つと大きなソファー、イス、テーブルが各一つずつだった。
質素な洋服タンスもあるが……お世辞にも使う気にはなれなかった。
「これからの予定何だけど」
とりあえずオレはイスに腰掛け。ミーシャとマヤはソファーに座った。
「まずは装備を整えたいと思います」
ミーシャの言葉には賛成だった。
「それについては、オレに考えがあるんだが……装備についてはオレの方で準備したいんだが、構わないか?」
オレは自分の考え……というよりもマザーさんからの提案をミーシャに伝えた。
「別に構わないけど……ノゾミは知り合いのお店とかあるの?」
そんなものはない。この街どころかこの世界のどこにも知り合いはいない。
まあ、今はまったくいないというわけでもなくなってきたが……
マザーさんの提案とは、漆黒の剣と同じく、こちらの技術で造られた装備品を使用するというものだ。
これはアランたちと別れ、ミーシャと共に冒険者として活動すると決めた時にマザーさんに打診していたものだ。
「ではまず、これを二人には着てもらおう」
オレは空間から布製のものを取り出した。
空中から物が現れた事にミーシャは驚いたが、理屈は剣と同じ。異空間にある物をワームホールを通じてこちらに具現化させただけの事だ。
異空間を経由すればカルネアデスで作られた物をこちらで具現化する事ができる。
「これは……なんですか? 素晴らしく柔らかい布みたいですけど」
「ふふふ。それは下着だ!」
「下着?」
そうだ。そうなのだ。
この世界の下着といえば麻布のデカパンと半袖の肌着しかないのだ。
革命が必要だった。
革新的で斬新で究極の進化が……この世界には必要不可欠だった。
下着はやっぱり純白に限る。
デカパンではなくパンツ。
肌着ではなくブラジャー。
柔らか素材ではだにフィットし、身体の魅力を最大限に引き出す武器。
まさしくこの世界におけるリーサル・ウェポン。
まずは今着ているものを脱がしてこれらを身に着けてもらう……すぐに脱がしちゃうけどね。
「えっ、今ここで脱ぐんですか?」
ミーシャは流石に恥ずかしそうだった。
まだ日は高い。
うむむ。楽しみは夜にとっておくか。
仕方ない。
オレは楽しみは最後に食べる主義なのだ。
空中から服を取り出した。
「分かった。オレは部屋の外にいる。着替えたら教えてくれ」
「分かったです。着方もミーシャに教えるです」
「任せた」
オレはそう言って部屋を出た。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!