超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第10話(4)決戦の時来たる

公開日時: 2022年3月13日(日) 00:11
文字数:1,995

「……もうすぐ函館ね」

「ちっ……」

 車での移動中にジンライが頭を抑えて軽く舌打ちする。舞が尋ねる。

「どうしたのよ?」

「せっかく身体を休めに行ったというのに、そこで新たに負傷してしまっては意味が無いではないか……」

「人の裸を見るからよ」

「それはお互い様だろう」

「いやいや、そこはイコールにはならないでしょう!」

「俺様が不覚にも気を失っている隙に、俺様の全てを見たのだろう?」

 ジンライが身をよじる。舞が声を上げる。

「その気味の悪い動きやめなさいよ!」

「油断も隙もないな……」

「だから見ていないわよ! 部屋にはドッポに運んでもらったんだから!」

「そうなのか?」

「ハイ、センエツナガラ……」

 ジンライの問いにドッポが答える。

「見ていないのか……」

「なんでちょっとがっかりしてんのよ!」

「『銀河一のヴィラン』の裸体だぞ?」

「だぞ?って言われても!」

「興味無いのか?」

「まったく無いわよ!」

「……まったくということはないだろう?」

「しつこいわね! 見て欲しかったの⁉」

「まあ……どちらかと言えば、な」

「な、じゃないのよ⁉ 性癖をカミングアウトしないでよ!」

「別に大して減るものでもないしな」

「私の心境的にはかなりのマイナスだわ!」

「いつか何かのきっかけでプラスに転じることも……」

「無いわよ!」

 そんな言い合いをしている間に、車は既に函館市内に入っていた。

「函館か、約一週間ぶりだが、妙に懐かしいな」

「まず家に戻りましょう」

「そうだな、ドッポ、疾風宅に向かってくれ」

「カシコマリマシタ」

「おかえり!」

 家に戻った舞とジンライを大二郎が玄関で迎え入れた。

「ただいま、おじいちゃん……」

「お腹が空いているだろう。食事を用意したよ。と言っても出前だけどね」

「悪いけど、私、ちょっと部屋で休んでくるわ。流石に疲れたし……」

 舞が自分の部屋に足早に向かう。

「そ、そうかい? ジンライ君はどうだい?」

「……いただくとしよう」

「おお、では手洗いを済ませたら居間においで」

 大二郎の言葉通り、ジンライは手洗いを済ませ、居間に入った。

「さあ、大盛りカツ丼だよ!」

「カツ丼?」

「そう、敵に勝つという意味でね!」

 大二郎はそう言ってウィンクする。

「……ゲン担ぎというやつか」

「す、少し、古臭いかな」

「ジンクスを気にするのは銀河のどこでも一緒だな」

 ジンライは笑みを浮かべながら食卓に座る。

「はははっ、やっぱりそうなんだ」

 大二郎も笑いながら食卓に座る。

「この場合、敵が誰かという話になるのだが……」

「え?」

 ジンライの呟きに大二郎が反応する。

「なんとかと天才は紙一重というが、貴様はどちらだろうな?」

「な、なんの話だい?」

「舞も学園防衛に当たると言っているぞ」

「!」

 大二郎がやや動揺した様子を見せる。

「大事な孫娘だろう?」

「……とっても大事な孫娘だよ」

「危険に晒すことになるぞ」

「止められないのかい?」

「どういう性格をしているかは貴様の方が承知しているだろう」

「そうか……」

「良識を信頼しても良いのだろうな?」

「ヴィランから良識という言葉が聞かれるとはね……」

「ふっ……確かにらしくもないか」

「言葉を返すようだけど、君のことも全面的に信頼して良いのかい?」

「……逆の立場なら信頼しないな。そもそもスーツを与えない」

「偶然の産物だけどね。緊急時にスーツへの適応値が高い君が来た。それだけだよ……」

「偶然か、まあそれでいいだろう」

「いいのかい?」

「訊問は得意ではない……ただ一つ、五稜郭学園にNSPを集めさせた意図は?」

「詳細はまだ話せない……NSPの力を引き出す上で必要な処置だと思ってくれ」

「ふむ、まあそれもいい……ムラクモの迎撃に集中するとしよう」

「こう言ってはなんだけど……勝てるのかい?」

「ストレートな疑問だな」

 ジンライが苦笑を浮かべる。

「ご、ごめん。でも、大事なことだから……」

「勝つ……俺様は同じ相手に二度も苦杯は舐めん」

「た、頼もしいね……」

「誰だと思っている? 『銀河一のヴィラン』、ジンライ様だぞ?」

「おおっ……」

「カツ丼を食べて、明日に備えるか……」

 ジンライは食事を始める。翌日五稜郭学園に設置された緊急指令室でドッポが報告する。

「ジンライサマ、ウヨマテチョコウコクノブタイヲカクニンシマシタ」

「襲撃は今日だったか……」

「ヘイスウハソレホドオオクハアリマセンガ……」

「とはいえ、ムラクモの部隊だ。練度は高いだろうな……」

「⁉ チョットオマチクダサイ!」

「どうした⁉」

「ナナカショデハンノウアリ! オソラクNSPヲネラッテイルカクセイリョクデス!」

「7ケ所同時だと⁉ ちっ、こんな時に面倒な……」

「ど、どうするの⁉」

 舞が心配そうな声を上げる。

「各個撃破しかあるまい!」

「む、無茶よ!」

「無茶でもやるしかあるまい!」

 ジンライは走り出す。

「ジンライサマ! キンキュウツウシンガ!」

「緊急だと⁉ お、お前らは……⁉」

 ドッポのモニターを見てジンライは驚く。

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