おばさんが、リンゴを包装している合間に、商店街の東側から数十名の騎馬隊がやってきた。騎馬隊は、その機動力から魔王戦争で大活躍していた王国の大事な部隊だ。
妙だな。あっちの方には、王城しかないはずだ……?
魔王戦争。
一週間前には勃発していた魔王軍と人類軍との1000年も続いていた大戦争だ。
勇者の俺がいるから、あっけなく魔王戦争では人類側が勝ったのはいい。
けど、その後は俺は職を失い。
今じゃ、一文無しだ。
「ま……また、魔王が蘇っていたりして……」
俺の不吉な予想通りに騎馬隊が、俺の方へ近づいてきた。騎馬隊の先頭には、顔見知りがいた。
「勇者ランダル。国王様がお呼びだ。すぐに王城へ行け……うん?」
「悪い……魔王なら今は間に合ってる……戦争はちっとも金にならないんだよ」
「……何を言っているんだ……そうはいかんぞ。いや、だが。今度は魔王討伐ではなく。魔王城自体に用があるんだ。国王様から魔王城の最奥を配信せよとの命を受けている」
「ふ? へ? 配信?」
「……ふー、そのようだな……」
俺と共に魔王戦争で戦った仲間の一人だった。
それも、大戦争でも生き延びた。
数少ない生き残りの一人。
女騎士団長のスザンヌが呆れて言った。
「あ! あそこにあるのは?! ニューライズ産限定100年ものの特級ワインだ!! しかもなんと100リンだって!?」
「な、なんだと?!」
スザンヌの表情がスッと変わった。
どんな小さなものでも、射ぬいてしまうかのような。そんな目で、俺の指差した方向を向いた。
俺はその隙に……。
逃げた!!
人々の合間を縫うように猛ダッシュ!!
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