やっと調子が出てきました。
こっから良くなるはずなので、応援よろしくお願いします。
あれから数日。
毎日どっちが行き帰りで手を繋ぐかの争いが続いている。
俺としては嬉しくあるんだけど、気を遣うことになるから俺が疲れるんだが。
燿利がいなかったらどうなっていたのかは想像したくもない。
そして今日は……。
「おっは~、翔也!」
――4人で出かけることになっていた。
こんな疲れた週の休日くらいはゆっくりしたかった気はするけど、まあこれはこれで悪くないか。
ハチ公前集合で、今はだいたい9時くらいだ。
そんな俺はお気に入りであるフード付きの服で来ている。
まず最初に来たのは愛果だ。
無地のワイシャツにダメージジーンズと、シンプルだが……その、なんというか。若干ムチッとしている体を強調するかのようで目のやり場に困る。
愛果は俺に突っ込んでくると、そのまま抱きしめてきた。
……ここは公衆の面前なんだけど?
愛果はそういうのを気にしないんだろうけど、俺が恥ずかしいからやめてほしい。
「どうしたの?顔真っ赤だよ?」
「そりゃ、俺だって年頃の男子なんだからさ……。ドキッとくらいするだろ」
正直言って、つい最近意識し始めてしまったんだよなぁ。
俺をはっきり好きと言ってくれた影響だろうか。
俺はどっちが好きかとはまだ断言できないけど。
「愛果ちゃん。公衆の面前で翔也くんに堂々と抱き着くのはどうかと思いますよ」
聞こえてきた声の主はモチロン璃乃だ。
白いワンピースに身を包んでいる璃乃は近づいてきて、俺たちをジト目で見てくる。
アイドルだった美少女にジト目で見られるのも悪くない気はする。
そしてそのまま……俺の腕にくっついてきた!?
さっきの璃乃のセリフは何だったんだよ……?
「愛果ちゃんばっかりはズルいよ。私もくっ付きたいのに……」
頬を膨らませ気味に璃乃はそう言う。
そんな可愛い顔をされると、俺みたいなこういう経験に乏しい男子は皆テンパりそうになっちまう。
学校のトップ2の美少女にこんなに接近されるというのは他人からしたら羨ましいシチュエーションかもしれないけど、本音のとこ、頭が真っ白になる。
嬉しさとも気恥ずかしさとも、どれとも別の何かなのか分からない感情が湧いてきて、思考停止するのだ。
どうやってこの状況を打開しようかと考えていると。
「おいおい、朝っぱらからソレは周りに刺激が強すぎるんじゃないか?」
――救世主の登場である。
かなりアレな言い方をしたような気がしたのはさておき、俺は燿利に助けを求める。
「燿利、助けてくれ!このままだと俺が学校の連中に見つかったら、ヤバい噂を流されるかもしれないから!」
「いいじゃないか」
「どこがだよ!」
何をどうしたらそんなことをいいと言えるんだよ……。
もしや、そうすれば愛果と璃乃以外が俺に近づかなくなるって思ったんだろうか。
でも、そうしたらそうしたでまた男子に追いかけられる気がする。
「その方が面白いじゃないか」
「いや!完全に傍観者視点だろ!一応当事者の一人なのに!」
ソッチの方だったとは……。
そういえば、この前も俺たちのやり取りを見てるのは面白い的なことは言ってたな。
だからと言って、ここで俺をどうにかしないのもどうなんだか。
「それに、俺にそこまでの権利はないし。しっかりこの目で見届けさせてもらうよ、翔也の覚悟を」
つまり、俺だけの力でどうにかしてみせろ、と。
できないこともないんだろうけど、どうしたら……?
そんな時、何を思ったのか愛果が。
「あれ?何か当たってない?」
「やめろ!もう何でも言うこと聞くから放してくれ!」
*
危なかったな……。
少しでも判断が遅れてたら、『抱き着かれただけで大きくしちゃうヤツ』なんて不名誉なことを知られてしまうところだった。
まあ、それでも好きな人じゃないといけないけど。
おっと、俺は別に愛果に確定したワケじゃなくて、二人で迷ってるだけだ。
「それにしても、さっきのは何だったの?」
「……世の中、知らない方が幸せなこともあるんだよ」
「!?……わ、分かった」
そんなこと、とてもじゃないけど俺の口からは言えない。
だってさ、人前で大きくなっちゃうのは恥ずかしいだろ?ドコとは言わないが。
まあ、誤魔化せたんだしいいか。
「えっと、確か何でも言うことを聞いてくれるんですよね?」
璃乃が恐る恐る聞いてくる。さっきの発言に報いる時か。
何を要求してくるかは知らないけど、ファーストキスとかだったら断り辛いからやめてほしい。
「あ、ああ。俺はそう言ったぞ」
「それなら……」
*
「ボクが先に言おうとしてたのに……」
肩を落として落ち込む愛果。
璃乃が要求してきたのは、正面から抱き着くことだった。
公衆の面前でこれ以上は……とも思ったけど、はぐらかされると困るから今ここで、と言われたからせざるを得ない。
別にはぐらかす気なんてサラサラなかったのは璃乃も分かっているはずだし、すぐに抱き着きたかったんだろう。
そういうのは素直に言えばいいのに。
「おーい、ハグはお一人様15秒ですよー」
「お前は握手会の係員か」
燿利が暇になってきたのか、そんなことを言う。
俺としては大きくなってしまった禁忌について言及されない間に早く終わらせたいけど、璃乃が一向に放そうとしない。
まあ、こういう抱き着く機会って貴重なような気が……貴重か?
いつも愛果が登校する時に俺と合流する際のアレをカウントするってなると、璃乃はどれだけ俺に抱き着こうと愛果の回数には追い付けないってことになるけど、色々と面倒そうだから黙っておこう。
そんな感じの休日だが、まだまだこれは序の口である。
次回 Episode006 休日の戦い②
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