なんか終わりの方が適当になちゃった気がしましたが、不快になられてないですか?
まあ、5話くらいから調子が出始めるのでご期待を。
結局あの後、俺たちの間で三角関係が発足した。
三角関係ってのは、もっと『気が付いたら』って感じのモノだと思っていたけど、どうやら認識が甘かったようだ。
まあ、俺としてはそんなに困らないから大丈夫。
そう、困らない……。
「ボクが手を繋いで帰るの!」
「愛果ちゃんは登校する時に翔也くんとくっ付きながら来てるって燿利くんから聞いたの。だから、せめて帰りくらいは……」
三角関係で困らないワケがない。
二人のどちらかが悲しむことになるから選べない俺としてはありがたい申し出だったとは思ったけども。
どっちかだけを優遇するってのも無理な話だし。
「うーん。よし、燿利。判定を頼む」
「えっ、俺?それなら、璃乃の言い分を擁護して、今回は璃乃が翔也と手を繋いで帰っていいぞ」
……今はだいたい帰るくらいの時間。
さっきからの話は、愛果と璃乃のどっちが俺と手を繋いで帰るか、というモノだ。
俺は三人で手を繋げばいいと思ったけれど、2人にとって禁止事項らしい。
負け惜しみ的な感じで嫌なのだろうけど、それで言い合いみたいになるのは当人の身としてあんまり気分がいいことはない。
「やっぱり判断力があっていいな。燿利、今日からこのレフェリーを頼む」
「俺がレフェリー?……まあいいか。どうせ暇だから、こういうのを眺めてた方がずっと有意義だしね」
コッチ見ながらニヤニヤすんな。
レフェリーを辞めさせてやろうかと思ったけど、ぶっちゃけてこの三角関係がどうにかなってくれるまでは必要な存在だから黙っておく。
「それじゃあ翔也くん。手、握りますね」
気づいたら俺の隣に立っていた璃乃が、俺に一声掛けてから優しく俺の手を握った。
その手は柔らかくて、温かかい。
……そういえば、まだ愛果ですら俺の手は握ったことなかったな。
よし、コレについては知らないフリでもしておこう。
言ったらどうなるか分からないし。
「ねえ、翔也くん。ちょっと手に力入ってない?」
「あ、ゴメン。璃乃の手が温かかったから、つい……」
俺は知らぬ間に手に力を入れてしまっていたらしい。
正直な話、俺だって女の子と手を繋ぐのは初めてだから力の調節が難しい。
どのくらいの力量で握ったらいいのか分からんし、こういうのは慣れていくモンなんだろう。
「いたぞ!無法者だ!」
「あの璃乃様の手を握手会以上の時間握ってるなんて……!許さん!」
何か廊下の方から聞こえる気がする。
つい今日にも似たようなセリフを聞いたような……。
振り向くと、鬼の形相をした男子どもが……って!
「とりあえず逃げよう!璃乃、走ってくれ!俺は璃乃にペースを合わせるから」
「うん。できるだけ走るね」
「ボクも一緒の方に行くからね!」
俺たちはいそいそと逃げる用意を始めたけど、燿利は動じない。
何か策でもあるのか?
そうだったとしても、ここは逃げた方が安全なはず。
「燿利、逃げないのか?」
「いや、ここは俺に任せて先に行け!」
どっかの何かで聞き覚えのあるセリフを堂々と吐いたな、オイ。
まあどうであれ、頼もしいには変わらない。
「悪いな!それじゃあ足止め頼むぞ!」
「ああ、俺も全力で止める!」
俺たちは男の熱い会話……のような何かを済ませ、3人で走って教室から出る。
それと同時に、迫って来ていた男子どもが教室の中へと入っ行った。
その後、燿利によってどう処理されたのかは誰も知らない。俺たち以外は。
*
「ふう……。やっと逃げれた……」
俺たちは、高校から一番近い公園のベンチにて休憩している。
どうにか逃げ切ったのはいいが、燿利は大丈夫なんだろうか?
……とその時、ちょうど電話が鳴りだした。
『もしもし、翔也?』
「燿利!大丈夫だったか?」
『ああ、コッチは大丈夫だ。その男子等全員に「人の恋愛に手を出すな!」って説教しといたぜ』
ソレ、燿利が一番言えないセリフだと思うんだけど。
だって、どこぞの誰かの三角関係のレフェリーだぞ?
でもまあ、何事もなく全員無事ってことだけは分かった。
「俺たちは高校から一番近い公園のベンチにいるから、そこまで来てくれ」
『ああ、あそこか。すぐ行くよ』
俺はそれだけ言い残し、電話を切った。
すると、璃乃と愛果が同時に躰を肩に預けてきた。
顔を見ると、二人とも寝ている。
今日は色々とあったし、騒いだり走ったりで疲れたんだと思う。
俺はその二人の寝顔をもう一度見ると……。
「ダメだ、罪悪感しか湧かない」
その寝顔はあまりに罪過ぎたのだ。
学校のトップ2の美少女の顔を間近で眺められるってのも悪い気はしないけど。
俺も眠いし、燿利が来るまでの少しの間だけ寝るか。
*
起きて最初に驚いたことは、まず夜だったってことだ。
しかも、深夜0時くらいだった。
まさか誰も起こしにこないとは……。
もちろん二人とも寝ていて、その眺めていたい寝顔に苦しめられながらも起こした。
燿利は反対方向の公園に行っちゃったらしいけど、実際はその公園の方が高校に高校に一番近い公園だったとのこと。
そんなことになっていたけど、二人を起こした後、俺たちは結局なんだかんだ言って三人で手を繋いで帰った。
家に帰った時、親に今日のことを全て話そうと思ったけど色々と面倒な部分があるから黙っておいた。
……どうしてか深夜に公園にいたことは先生たちに筒抜けで、その所為で廊下に四人揃って――しかも燿利はとばっちりで――立たされたのは、今年度一番のある種の思い出である。
次回 Episode005 休日の戦い①
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