街に帰り、フォッシャと共に眺めのいい丘のベンチに座って、夕焼けを肴(さかな)にソーセージパンを頬張る。
飯がくえるって、ありがてえなチクショウ。はっきり言ってスカスカなただのパンなのに腹にしみやがる。
一応帰ってきてから手当てはしたのだけど、まだ引っかかれた右頬が痛い。
俺は『宿命の魔審官』のカードを夕日にかざす。
「やっぱり、こいつだけは売ろうと思う。いつまでもジャングルで寝泊りするわけにもいかないしな」
「エイトが決めたなら、そうすべきワヌ」
フォッシャが言うにはレアカードらしいが、どれくらいの値段で売れるかと妄想すると、思わず笑みがこぼれる。
「売ったらいくらになるかなあ」
「きっと数百万オペはくだらんワヌ!」
「ついてるぜ……。棚(たな)から牡丹餅(ぼたもち)とはこのことか! これで貧乏暮らしともオサラバだな!」
「せっかくもらったものを売るのは、なんだか申し訳ないワヌね」
「で、でも俺が持ってるより、ちゃんとしたカーダーの人が持ってた方がいいんじゃないかな……!?」
「うん……それもそうワヌね」
「どうしたんだ、もっと喜びなよ! おカネは二人で山分けしよう」
「いいワヌか? 助ける判断をしたのも、がんばったのもエイトワヌよ……」
「いいに決まってるだろ。……俺たちは仲間なんだから」
「なかま……」
「フォッシャが仲間でよかった」
今、はちゃめちゃな状況なのに、なぜか一緒に笑い合える仲間がいる。
頼れる仲間がいてくれるだけで、こんなにも違うものなのか。
フォッシャは、どんなときでも力になってくれる。
それだけじゃない。こいつの前向きな姿が、俺に勇気を与えてくれるんだ。
姿かたちはぜんぜんちがうけど、フォッシャはまるで『暁(あかつき)の冒険者(ぼうけんしゃ)』みたいな魅力がある。
どんな逆境でも跳ね返す強さ。そんな強さに、俺はずっと憧(あこが)れていた。
怪我だらけだけど今日をこうして生き残れた。
俺もすこしはあの頃描いていた自分に、近づけたのかな。
俺にとってのフォッシャみたいに、フォッシャが俺のことを頼れる相棒だって思ってくれてたらいいんだけど。
いや、絶対にそうならなきゃな。この異世界って逆境で、生き抜くためには。
「……そうワヌね! フォッシャがいなかったらエイトはとっくに死んでたワヌ」
「ひでー……。でもまあそうだな」
ゲラゲラと俺たちは笑いあう。
俺は手持ちの4枚のカードを取り出し、じっと絵を見つめる。
「魔法のカード……不思議だな。だけどカードのおかげで、希望の道が開けた気がする」
「このまま突き進めば、フォッシャたちならきっとうまくいくワヌ!」
俺はフォッシャの言葉にうなずいて、夕日に4枚のカードをかざす。
「ああ。俺たちの友情の証(あかし)だ」
カード……不思議な力。
逆境にあっても、この光が俺たちを導いてくれる。今はそう信じたいと、俺は思ったんだ。
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