私の名はアーデルハイト・フーデマン。昔から何もしなければ凄く良い女と言われる。
しかし、それは嘘だ。
そう絶対に嘘だ。
私が小さいころ、王都ルドミラに勤める父はコーキンオウリョウとかいうことをしたらしい。
そのとき弁護士という職業の母は必ず父を守ってくれると私に約束した。
『それくらいなんとでもなる!』と。
しかし、そうはならなかった。我がフーデマン家は下級貴族としての家柄を失い没落した。
なぜか!?
それは母が弱かったからだ。
無力だったからだ!!
弁護士とはどんな職業か知らないが、きっと剣の腕が足らなかったに違いない!!
それから私は剣術に励んだ。弓も馬術も槍術も……。
私が未来の夫を悪の手から必ず守る為に!!
私は決して母のようにならない!!
そう心に決めていた。
私は15歳になったとき、王立の士官学校に入学した。
勉強がとても苦手だったので、武芸枠というもので入った。
学校の勉強はつまらなかった。
兵法だの兵站だの内政だの、そんな軟弱なことでは愛する夫は決して守れない!!
絶対にだ!!
ある時、剣技の実技試験があった。
「よろしくお願いします!!」
「おう、かかってきたまえ!」
王立士官学校の剣技担当は私が女だと舐めていたに違いない。
一撃目で彼の剣を叩き折り、胴に一撃を浴びせ、怯んだところを投げ飛ばした。
「ま……参った」
「いえ、もう一度! わたくしはもっと強くならねばならないのです!」
しかし、剣術教官はそれ以来、私の相手をしてくれなくなった。
私が弱いから相手にもしたくない、きっとそう思っているのだ。
だから仕方なく、私は士官学校の寮で朝から晩まで剣を振り続けた。
古の剣術家の本も深夜まで読み漁った。
しかしこのころから、殿方からのダンスパーティーなどのお誘いが無くなった。これはとても辛かった。フーデマン家を再興するには婿養子を取らねばならぬのに……。
…… (`・ω・´) これはきっと私が弱いせいだ。
きっともっと強くなれば、殿方からのお誘いが来るはず!!
それから、夏季休暇の間は山にこもりモンスターや熊などと戦い続けた。
「アーデルハイトや、貴方はとてもきれいなのだから、そんなことはしなくていいのだよ」
家に帰ると母は必ずそういう。
……違う!
母上! 貴方が弱いからいけないのです!!
それから士官学校を卒業し、王都の近衛師団の入隊試験を受けた。
結果は不合格。
理由は筆記試験が全然だめだと書いてあった。
違う!! 私が弱かったせいだ!!
剣の腕が足らないのだ!
いつかきっと剣の腕をトコトン磨いて近衛師団に入ってやるぞ!!
それから私は武者修行の旅に出ることにした。
母のように夫を守れない妻には決してならないために (`・ω・´)ノ
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