~唯一王の成り上がり~ 追放された「加護」使いの英雄碑

主人公フライが大活躍 王道系、成り上がり×追放ストーリーです
静内
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第74話 唯一王 とうとうキルコを見つけるが

公開日時: 2021年7月11日(日) 21:44
文字数:2,074

「了解、じゃあ決闘は二週間後でいいな。追ってギルドを通して連絡する。それまで楽しみにしてるぜ、お前をどうしてやるかじっくり考えていてやるよ」


 そう言葉を残してノダルたちは去っていった。


 彼らが視界から消えると俺はレディナに問い詰める。



「レディナ、なんであんな要求をのんだんだよ」


 一日好きなようにしていい。レディナは精霊とは言え外見や体は若い女の子。そんなことを要求したらどんな事をされるかは一目瞭然だ。


 レディナは少しうつむいて、髪をなでた後に言葉を返してきた。


「私だってあいつらにぎゃふんといわせたかったのよ。パーティーにいた時は違法行為を強要されたし。それに、集団戦なら私達に分があるわ。こいつら、一人一人は強いけれど個人プレーに走りがちで味方同士で連携をとったりしないのよ。だからそこをつけば十分勝機があるわ。それに──」


 その瞬間、レシアに視線を向け、言い放った。


「ここまで危機感があれば、レシアだってもっと必死になって力が開花するかもしれないでしょう」




 確かに、本当に追い詰められると力が開花したり、思わぬ実力を出したりする人もいる。レシアだって、そのタイプかもしれない。


 おまけにレディナは元々ノダルたちと一緒にいた。それなら彼らの戦い方や力がわかる。だから有利に戦えるということだ。


「信じているわ。レシア、これで私に逃げ道はない。信じているわよ」


「──わかった。僕、頑張ってみるよ」


 レシアの表情が、どこか強気になり拳を強く握った。その意気だ。俺も応援するから、一緒に頑張ろう。



 すると背後から誰かが話しかけてきた。


「あの……すいません。俺たちなんかのために、こんなことになっちゃって」



 シアンが申し訳なさそうに言葉を返す。さっきまでの会話を聞いて、何かを感じたのだろう。


「あなたたちのやり取りを見て、いかに自分が仲間に対しての認識が甘いかがわかりました。これから、もっと仲間を大切にします、仲間がピンチになっても、絶対に逃げ出したりしません」


 確かブラウナではフリジオ王国とは法律が違い、仲間を置いてきぼりにしても罰せられることはない。

 けれど、仲間を見捨てればパーティーの中にひびが入ってしまう。



「これから、シアンたちも、いろいろな冒険に挑戦すると思う。ピンチになった時、今の気持ちを思い出してほしい。シアンだけじゃなく、ミュアたちも。そして立派なパーティーになってほしい 信じているよ」


「……ありがとうございます」


 シアンも、ミュアたちもしょんぼりしながら頭を下げる。とはいえ彼らに戦う力はなさそう。

 また結成したばかりなのだし、これからに期待しよう。


「フライさん、そろそろ行きましょう」


「そうだったな、フリーゼ」


 ──がこんなところで遊んでいる場合ではない。

 早くキルコのところに行って、彼女を助けないと。


「みんな、早くキルコのところへいこう」


 俺たちがダンジョンの奥へ行こうとすると──。


「私も行かせて──」



 ミュアが彼女の仲間を無視して俺たちの後を追う。そりゃそうだ、子供のころからの親友だもんな。


 仲間たちはその言葉に互いにきょろきょろと顔を合わせる。そして──。


「俺たちも行くよ」


 仲間達もその後を追ってくる。

 その光景を見て俺は感じた。


 彼らなら、この後もうまくやっていけるのではないのかと。

 最初こそ、拙くて連携が取れない。すれ違いがあるかもしれない。


 けれど、こうして仲間を大切にしているうちに、強いパーティーになっていくのだと思う。

 キルコもミュアも、まだ入りたてで未熟な部分はある。


 けれど、これから絶対強くなれる。


 だから絶対、キルコには生き残っていてほしい。

 自然と早足となり、薄暗いダンジョンを歩いていく。



 しばらく歩くと、ダンジョンの奥から音が聞こえる。何かがぶつかり合う音。

 悲鳴のような言葉は、聞こえてこない。



 もう遅かったのか、それとも叫ぶ気力すらないのか──。







「この先に広い間があるの、そこで私達は戦ったわ」


「ありがとうミュア」


 俺達は駆け足になり、その場所へと進む。

 真っ暗で、狭い道。

 キルコ、無事でいてくれよ──。







 数分ほど歩くと、俺達は広い場所へとたどり着く。その中央。


 そしてその場所には倒れこんでいるキルコの姿があった。フリーゼが開口一番に口を開く。


「キルコさん、これは──」


 息はあり、大きな出血があるわけではない。おそらくは生きている。

 最悪の事態は免れた。


 ──がその姿は無残の一言だった。

 服はボロボロにはだけ、太ももや腕が露出し破かれている。


「キルコ、大丈夫? 安心して、助けが来たから」


 ミュアの問いかけにも応じない。視点が定まらず、虚ろで天井を見ている。

 ここでキルコに何が起こったのか、全員が理解した。


「取りあえず、この服、着なさい」


 レディナがキルコから目をそらしながら自身の上着を手渡す。

 あまりのむごい姿に見るのも嫌になる。


「とりあえず、この場を出よう。フリーゼ、俺が右を支えるから、フリーゼは左」


「了解です」


 俺とフリーゼがキルコの肩を貸し立ち上がらせる。

 そして、この場から撤退をしようとしたその時──。


「ウギャァァァァァァァァァァァァァァァ──」

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