ノダルの仲間の一人、黒髪のお姉さんミュランがそう宣言すると、俺たちの戦いは始まった。
「さあみんな。全力で戦おう!」
「はい!」
俺は四人に魔力を供給し始める。
そして四人は一気に前線へ。
まずはミュランが、こっちへ向かって突っ込んできた。
「フライには、指一本触れさせないフィッシュ」
ハリーセルが俺との間に入って、交戦。
確かに、俺は四人に力を供給する役割から他の仲間たちの後方にいることが多い。だから俺は戦闘力が低いのだと勘違いされがちで、狙われることは割とある。
しかしミュランはハリーゼルを一瞬でかわし、俺の元へ。
すぐに俺との交戦が始まる。俺はミュランの攻撃を何とかかわしながら対応していく。
一方レシア。
「ノダル。強くなった僕の成果を、見せてやる!」
「戯言を。すぐにその化けの皮、剥いでやるよ!」
そしてノダルはレシアのところに突っ込んでいく。
「さあ、まずはお前からだ!」
ノダルは力任せにレシアに対して猛攻を仕掛ける。
レシアは最初のうちは何とか対応していくが──。
「ふっ。強がっていたくせに、この程度かよぉォォ!」
ノダルの攻撃を受けきれなくなり、大きな攻撃を受けてしまう。
レシアがあっという間にやられてしまった。
あっという間の数的不利。これはきつい戦いになるぞ。
そして俺はレディナ、フリーゼに魔力を供給しながらミュランと交戦。
そこにノダルが突っ込んできたのだ。
「お前を消せば、他の奴らも弱体化する。さあ、散れぇぇぇぇぇッ!」
ノダルの攻撃に俺は何とか対応するが、流石に魔力を供給しながら実力者とやりあうというのはきつい。
そんな時にフリーゼが突っ込んできた。
フリーゼは実力もさることながら、戦いながら周囲に気を配り、穴を埋めることだってできる。
ありがとう。本当に助かったよ。
「私の攻撃、あなたになど止めさせはしません!」
「ほう。お前、この俺の戦術を読むとは。出来るな──」
余裕の表情に、フリーゼはさらに攻勢を詰めようとする。
フリーゼが剣閃をきらめかせ、ノダルに突っ込んでいこうとしたそんな瞬間。
「来いよ。それで俺様を仕留められると思っているならな!」
その時、ノダルの瞳がすっと細くなるのを見て、俺の中に嫌な予感が走る。
「まてフリーゼ、イヤな予感がする!」
「私なら、大丈夫です」
するとノダルをかばうように仲間の一人、中年の人が割って入ってきたのだ。
しかし並の冒険者であればフリーゼの敵ではない。すぐに倒せる実力はある。
「おお、いい位置だな。上出来上出来」
ノダルは落ち着いた表情のまま、自身の手から光弾を発射する。
不気味な、紫の光をした光弾だ。
しかしその目標は俺でもフリーゼでもなかった。
「グハッ──」
背中を撃たれた中年の人がその衝撃で、そのままフリーゼに覆いかぶさるように吹き飛ばされる。
「──ふう、危なかったぜ」
フリーゼは予想もしなかった行動に、もつれるようにして倒れこんでしまい、一瞬だけスキが生まれてしまった。
「さあ、料理の時間ですよ」
ミュランの声がした瞬間、フリーゼは慌てて倒れこんだ冒険者の肉体をどかして後ろを振り向く。
「フリーゼ!!」
「お前の相手は、俺だぁぁぁぁぁ」
俺はフリーゼの元へ向かおうとするが、ノダルによって妨害される。
そしてフリーゼが振り向いた瞬間、そこにいたのはミュラン。今にも槍でフリーゼをくし刺しにしようとしている。
ほとんど対応する時間もない中、フリーゼは後方に体を逃がし、何とか攻撃をかわす。
「おっと、私の一撃を交わしましたか。素晴らしいですね」
ミュラン、一つ一つの攻撃がとても速い。槍の軌道が全く見えないくらいだ。俺ならくし刺しにされていたかもしれない。
フリーゼは目に見えないような突きの連打を必死にかわしていく。
「この強さ、あなたはもしや──」
「おや、流石はフリーゼ。理解しているようですね、流石にあなたをダマすことはできませんでしたか」
「はい。それなら、私がとる行動は一つです」
フリーゼがそうつぶやいた瞬間、今まで突きだけだった攻撃に変化球を付ける。
横殴りの攻撃。フリーゼは意表を突かれたのか、まともに食らってしまう。
「ミュランさん。このままでは、終わらせません」
そう言うと、フリーゼは、そのまま倒れこんでしまう。
フリーゼが一撃でやられてしまった。ノダルだけじゃない、
何と仲間の一人を盾にしたのだ。
俺はレディナに舌なめずりをしていた中年の冒険者。
「仕方ない、そのまま行きます──」
フリーゼは戸惑いを見せるもののそのまま攻撃。
その人物は攻撃を食らいそのまま倒れこんだ。
フリーゼが一撃で、アイツただものじゃない。
しかしまずはノダルだ。こいつをどうにかしないと、他の助けも出来ない。
そのノダルは平然とした表情でいる。仲間を見捨てておいてなんとも思わないのだろうか。
「お前、仮にも仲間なんだぞ。それを盾なんかにしてなんとも思わないのか!」
「あ? こいつメンバーの中で最弱だからな、肉壁になっただけでも役に立った方だと思うぜ。それだけだ」
罪悪感を、全く感じていない。どれだけ俺が訴えても、無駄だというのがわかる。
それなら、何も言うまい。ただこいつを倒すだけだ。
するとノダルはミュランとアイコンタクトをとる。
次の瞬間ノダルが俺の目の前から姿を消してしまう。
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