~唯一王の成り上がり~ 追放された「加護」使いの英雄碑

主人公フライが大活躍 王道系、成り上がり×追放ストーリーです
静内
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第28話  唯一王 ミュアの本心に気付く

公開日時: 2021年3月23日(火) 21:14
文字数:2,021

 やるしかない。


 まず俺は神経を集中させる。

 術式、発動。

 一つは攻撃を半減させる術式レインボーベール、それからもう一つ、味方達の攻撃を1.5倍に強化させる術式。スターフィールドだ。


 そして俺が術式を発動した瞬間全員が戦闘モードに入った。


 まずはフリーゼが一気に突っ込んでいく。そして次に俺が先頭に立つ。

 彼女一人では対応できない可能性があるからだ。


 ミュアとハリーセルは護衛向きの力なので、必然的に俺が行くことになった。


 久しぶりの接近戦。慣れないがやるしかない。

 ポルセドラが口からはいてくる攻撃をかわしながら、懐まで接近。


 斬撃を放とうとするが、すぐに障壁を張られ防がれる。

 フリーゼも、攻撃を連打するものの、有効打にはならない。


 すると後方から叫び声が聞こえる。


「みんな下がって。私がやる」


 ミュアだった。

 ミュアが精神を集中させる。そして杖が水色に強く光りだした。



 水撃の守護神よ。我に力を──

 アクアブレイク・バーストカノン


 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!


 出現したのは大きな水の塊。


 しかしミュアがその塊を見た瞬間、その大きさに彼女自身が驚き始めた。


「私の力、元に戻ってる。大きさが、全然違う」


 やはり驚いているな。俺といた時のミュアの魔力は、大体あんな形だった。Sランク相当の力といって差し支えないだろう。


 今まで俺抜きで魔力を使っていたからその力が出せなかったんだろう。

 安心しろ、今は俺がついてる。


「フライ。今、私に術式とか使ってる? 私の力、以前の強さに戻ったんだけど」


「ああ、俺の加護入りの術式だ」


「やっぱり、フライのおかげだったんだ。ありがとう」


 そしてハリーセルの方も攻撃を繰りだしてくる。


「さあ、ケリをつけるフィッシュ。頭を冷やすフィッシュ」


 両者が生み出した大きな水の塊は、強大な魔力を伴ってポルセドラに向かっていく。

 ポルセドラは障壁を張るものの、


「この術式、フライのおかげで強化されているフィッシュ。そんなやわなシールド、一瞬でたたき割ってやるフィッシュ」


 ハリーセルの言う通り二人の術式はポルセドラの出した障壁を一瞬で破壊。そのままポルセドラに直撃し、彼の肉体が吹き飛び壁にたたきつけられる。


 そしてポルセドラはそのまま動かなくなってしまった。


「とりあえず、頭を冷やしたか確認しましょう」


「わかった」


 俺とフリーゼが警戒しながらポルセドラに接近。一メートルくらいまで近づいたところで目が合ってしまう。


「グ、グォォォ……」


 目を合わせてわかった。敵意を持っているようなそぶりも、襲ってくるような様子もない。

 敵ではないと認識しているようだ。


 よかった、正気に戻ったみたいだ。


「これなら、大丈夫そうですね──」


「やったーフィッシュ。これで解決フィッシュ」


 二人に安堵の表情がともり始める。

 とりあえずは、戦いは終わった。それから俺は後ろにいるミュアに視線を移す。

 すると……。



 フラッ──。


 ミュアは眩暈がしたようにふらつき始めった後、なんと座り込んでしまう。


「ごめん、もう力が入らないや」


 思えば死ぬかもしれないとう極限状態で彼女は戦っていた。そしてポルセドラを倒したことで完全に緊張の糸が切れてしまったのだろう。


 両足をだらんと伸ばして座り込んでいる。

 表情からも、憔悴しきっているのが理解できる。

 仕方がないので肩を貸す。フリーゼと一緒に、出口まで運ぼう。


「とりあえず、出口まで行こう。肩貸すよ」


「ありがとう、フライ」


「フリーゼ、すまないが手伝ってくれ。俺は右肩を持つ」


 フリーゼは特に表情を変えずにミュアの左肩を持った。

 そして俺たちはゆっくりと歩きだす。


 光射す外の世界へと──。


 最後、障壁があった。おそらくハリーセルが出ていかないようにするための物だ。

 とりあえず、優しい口調で聞いてみる。


「ハリーセル、外に出たい?」


「外の世界、行きたいフィッシュ。想像するだけでワクワクするフィッシュ」


 彼女は満面の笑みで言葉を返した。それなら、答えなんて一つしかない。

 外の世界に、行こう。一緒に!


 するとフリーゼも話しかける。

 上品な微笑で、優しい口調。


「けど、あなたの遺跡にあった景色も、とても綺麗でしたよ。見られなくなっても、よろしいのですか?」


「あんな作り物、見飽きたフィッシュ。外の世界の方が、ずっと広くて行ってみたいフィッシュ」


「そういう前向きなところ、私はとてもうらやましいと思います」


 確かにハリーセルはとても前向きな性格だと思う。

 そういう所を生かしてこれから三人で頑張っていこう。



 それとミュア、本当に俺を首にしたいと思っていたのか?

 確かに見下していたところはあったけど、今のやり取りを見る限り俺を嫌っているようには見えない。

 彼女は、昔から大人しい性格で周囲に流されやすい所があった。


 今度、二人になったら話してみるのもいいかもしれない。


 そして俺たちは外の世界へと出ていった。ハリーセル、ちょっと変なところがあるけれど前向きで明るい性格がとてもいい。



 これから一緒に、協力して頑張っていこう!





 

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